[PC016] テスト形式が記憶のテスト効果に及ぼす影響
再生と再認を組み合わせた検討
キーワード:テスト効果, 記憶, テスト形式
問 題 と 目 的
Roediger & Karpicke(2006)は,ある項目を学習した後に行った学習/テスト段階において,学習を繰り返す試行とテストを繰り返す試行を実施した。その結果,学習/テスト段階後の直後テストでは,繰り返し学習された項目は良く再生された。一方で直後テストから1週間後に行った遅延テストでは,繰り返しテストされた項目が良く再生された。項目の再生に対して繰り返し学習することと項目の繰り返しテストすることがテストをする時期によって異なって影響する現象はテスト効果と呼ばれている(Carpenter & DeLosh, 2006 ; Roediger & Karpicke, 2006;)。
本研究では学習段階後に繰り返し行われるテストの形式を組み合わせることで,テスト形式の組み合わせが長期的な保持に促進効果を与えるかを検討する。
方 法
実験参加者 都内の大学に通う大学生および大学院生48名が実験に参加した。
実験デザイン テスト形式(再生-再生,再生-再認,再認-再生,再認-再認,学習-学習)×保持期間(直後,遅延)とする2要因混合計画とした。従属変数は直後テストと遅延テストでの再生率および忘却量(直後テストと遅延テストの記憶成績の差)。
実験刺激 本研究で使用した刺激は千原・辻村(1985)の清音カタカナ3文字名詞(e.g., キカイ,レタス)のうち熟知価が高いもの(3.50~4.75)を200項目抜粋し,40項目からなる刺激リストを5つ作成した。項目のリストへの割り振りはリスト間に熟知性やカテゴリの偏りがないようにした。
手続き 学習段階では40項目を使用し,実験参加者に呈示される項目について後でテストを行うために呈示される単語をできるだけたくさん覚えるように求めた。学習/テスト段階は群によって異なる方法で実施された。再生-再生群および再認-再認群の実験参加者は再生テスト,もしくは再認テストを2回連続して取り組んだ。再生テストでは学習段階で呈示された単語をできるだけたくさん思い出してもらい,記録用紙に記入を求めた。再認テストではテスト用紙に印刷された単語から学習段階で呈示された単語に○をつけるよう求めた。再生-再認群および再認-再生群は再生テストと再認テストに1回ずつ取り組んだ。5分間の挿入課題の後に直後テストを実施した。直後テストにおいて実験参加者は自由再生テストに取り組んだ。テスト終了後実験参加者に1週間後に別の調査を行うため,もう一度実験室にくるように求めた。遅延テストは直後テストから1週間後に実施した。遅延テストとして自由再生テストを行った。実験参加者には1週間前に行った実験の初めにパソコンで呈示された単語をできるだけたくさん思い出し,記録用紙に記入するように求めた。遅延テスト終了後,今回実験についてのデブリーフィングを行い,実験を終了した。
結 果
実験参加に同意した48名のうち実験実施に不備があった6名を除いた42名を用いて直後,遅延テストの再生率をFig.1に示す。
再生率に対して2要因分散分析を行ったところ,交互作用が有意になり,下位検定を行ったところ,いずれのテスト形式でも直後テストから遅延テストにかけて再生率が低下した。また,直後テストにおけるテスト形式要因の単純主効果が有意になったので,LSD法を用いて多重比較を行ったところ,学習-学習条件は再認-再生条件よりも高い記憶成績になった。しかし,遅延テストでは単純主効果は有意にならなかった。
忘却量に対して1要因分散分析を行ったところ,テスト形式の主効果が有意になった(F(4,41)=3.15, p<.05)。LSD法を用いて多重比較を行ったところ,再生-再生条件は再認-再認,再生-再認,学習-学習条件よりも忘却量が少なかった。また,再認-再生条件と再生-再認条件間に有意傾向が見られた。
考 察
本研究の結果から学習/テスト段階における2回目のテスト形式が再生率および忘却量に影響している可能性がある。そのため直後,遅延テスト時に再認テストを用いて比較することで,テスト形式の一致からの解釈が可能となると言える。
Roediger & Karpicke(2006)は,ある項目を学習した後に行った学習/テスト段階において,学習を繰り返す試行とテストを繰り返す試行を実施した。その結果,学習/テスト段階後の直後テストでは,繰り返し学習された項目は良く再生された。一方で直後テストから1週間後に行った遅延テストでは,繰り返しテストされた項目が良く再生された。項目の再生に対して繰り返し学習することと項目の繰り返しテストすることがテストをする時期によって異なって影響する現象はテスト効果と呼ばれている(Carpenter & DeLosh, 2006 ; Roediger & Karpicke, 2006;)。
本研究では学習段階後に繰り返し行われるテストの形式を組み合わせることで,テスト形式の組み合わせが長期的な保持に促進効果を与えるかを検討する。
方 法
実験参加者 都内の大学に通う大学生および大学院生48名が実験に参加した。
実験デザイン テスト形式(再生-再生,再生-再認,再認-再生,再認-再認,学習-学習)×保持期間(直後,遅延)とする2要因混合計画とした。従属変数は直後テストと遅延テストでの再生率および忘却量(直後テストと遅延テストの記憶成績の差)。
実験刺激 本研究で使用した刺激は千原・辻村(1985)の清音カタカナ3文字名詞(e.g., キカイ,レタス)のうち熟知価が高いもの(3.50~4.75)を200項目抜粋し,40項目からなる刺激リストを5つ作成した。項目のリストへの割り振りはリスト間に熟知性やカテゴリの偏りがないようにした。
手続き 学習段階では40項目を使用し,実験参加者に呈示される項目について後でテストを行うために呈示される単語をできるだけたくさん覚えるように求めた。学習/テスト段階は群によって異なる方法で実施された。再生-再生群および再認-再認群の実験参加者は再生テスト,もしくは再認テストを2回連続して取り組んだ。再生テストでは学習段階で呈示された単語をできるだけたくさん思い出してもらい,記録用紙に記入を求めた。再認テストではテスト用紙に印刷された単語から学習段階で呈示された単語に○をつけるよう求めた。再生-再認群および再認-再生群は再生テストと再認テストに1回ずつ取り組んだ。5分間の挿入課題の後に直後テストを実施した。直後テストにおいて実験参加者は自由再生テストに取り組んだ。テスト終了後実験参加者に1週間後に別の調査を行うため,もう一度実験室にくるように求めた。遅延テストは直後テストから1週間後に実施した。遅延テストとして自由再生テストを行った。実験参加者には1週間前に行った実験の初めにパソコンで呈示された単語をできるだけたくさん思い出し,記録用紙に記入するように求めた。遅延テスト終了後,今回実験についてのデブリーフィングを行い,実験を終了した。
結 果
実験参加に同意した48名のうち実験実施に不備があった6名を除いた42名を用いて直後,遅延テストの再生率をFig.1に示す。
再生率に対して2要因分散分析を行ったところ,交互作用が有意になり,下位検定を行ったところ,いずれのテスト形式でも直後テストから遅延テストにかけて再生率が低下した。また,直後テストにおけるテスト形式要因の単純主効果が有意になったので,LSD法を用いて多重比較を行ったところ,学習-学習条件は再認-再生条件よりも高い記憶成績になった。しかし,遅延テストでは単純主効果は有意にならなかった。
忘却量に対して1要因分散分析を行ったところ,テスト形式の主効果が有意になった(F(4,41)=3.15, p<.05)。LSD法を用いて多重比較を行ったところ,再生-再生条件は再認-再認,再生-再認,学習-学習条件よりも忘却量が少なかった。また,再認-再生条件と再生-再認条件間に有意傾向が見られた。
考 察
本研究の結果から学習/テスト段階における2回目のテスト形式が再生率および忘却量に影響している可能性がある。そのため直後,遅延テスト時に再認テストを用いて比較することで,テスト形式の一致からの解釈が可能となると言える。