[PC017] テスト不安と自己効力感が学習行動に与える影響
キーワード:テスト不安, 自己効力感, 先延ばし
問題と目的
学業テストや知能テストなどの評価を含む課題に対して生じる不安をテスト不安という。一般に,テスト不安は学習行動を妨げる方向への動機づけとして働くと考えられている。一方, 不安動因説にしたがえば, 不安が学習行動を促進する方向への動機づけとして働きうると考えられる。学習行動への動機づけられやすさにより,不安が学習行動を妨げる方向,促進する方向のいずれにも作用しうるのではないか。本研究では,不安と交互作用すると考えられる要因として自己効力感を取り上げた。また,学習行動の促進・妨害の指標として,特に試験勉強における先延ばし傾向を取り上げた。すなわち本研究の目的は,テスト不安と自己効力感が試験勉強の先延ばし行動に,どのように影響を及ぼすかを調べることであった。
方法
調査対象者 中学校1-3年生490名であった。
調査時期および調査方法 一斉調査による質問紙調査を行った。調査は2回に分けて実施した。第1回調査は定期試験の約2週間前に実施した。質問紙は2つの尺度から構成されていた。(1) テスト不安尺度。TAS邦訳版を用いた。16項目5件法。(2) 学業的自己効力感尺度 (大内,2004) の一部修正版。13項目5件法。第2回調査は定期試験終了直後に実施した。当該の定期試験を想定した学業的延引尺度 (龍・小川内・橋元, 2006, 10項目5件法) に回答してもらった。
結果と考察
学年・性ごとの平均値に基づいて,それぞれ,参加者を,テスト不安の高群と低群,自己効力感の高群と低群に分けた。さらにその組み合わせによって,4群に分類した。4群の学業的延引尺度の平均得点を学年・性別に示す (Table 1)。まず,学年・性を分けず,群間に違いがあるか1要因分散分析を行ったところ,群の主効果が有意であった。多重比較の結果,自己効力感の高い2群のほうが低い2群より先延ばし傾向が小さかった。すなわち一貫して,自己効力感の高い群は先延ばし傾向が小さいという結果であった。
次に,学年・性別に同様の分析を行った結果,どの学年・性別で分析した場合も共通していたのは,自己効力感の高い群についての結果であった。女子においても男子においても,そしてどの学年でも,自己効力感の高い者の場合は,テスト不安の高低によって先延ばし傾向に有意差はみられなかった。テスト不安が低く自己効力感の高い群において,一貫して最も先延ばし傾向が小さかった。次に先延ばし傾向が小さかったのは,テスト不安が高く自己効力感の高い群であった。
しかし,自己効力感が低い2群については,いずれも先延ばし傾向が大きかったものの,女子と男子で,テスト不安と先延ばし傾向の関連が異なっていた。女子の場合,最も先延ばし傾向が強いのは,テスト不安が低く自己効力感の低い群であった。特に3年生女子の場合,テスト不安が高く自己効力感が低い群は,テスト不安が高く自己効力感の高い群と,先延ばし傾向において有意差がみられなかった。一方,男子の場合,最も先延ばし傾向が強いのは,テスト不安が高く自己効力感が低い群であった。特に3年生男子の場合,テスト不安が低く自己効力感が低い群は,テスト不安が高く自己効力感の高い群と,先延ばし傾向において有意差がみられなかった。他の学年では統計的にはこのような結果は得られなかったが,この傾向は一貫していた。すなわち自己効力感の低い者のうち,女子の場合はテスト不安が低い者が先延ばしをしやすく,男子の場合はテスト不安が高い者が先延ばしをしやすい傾向があった。
すなわち,テスト不安が影響を及ぼす可能性を考えると,男子については,どちらかと言えばテスト不安が高いほうが先延ばしをしやすいという傾向があると考えられる。すなわち,テスト不安が高いために,その不安を低減する方略として,学習行動を一時的に延期したり回避したりする行動が増加すると考えられる。しかし女子については逆に,テスト不安が高い者は,その不安を低減するために,学習行動をとりやすいという可能性があることが示唆された。
学業テストや知能テストなどの評価を含む課題に対して生じる不安をテスト不安という。一般に,テスト不安は学習行動を妨げる方向への動機づけとして働くと考えられている。一方, 不安動因説にしたがえば, 不安が学習行動を促進する方向への動機づけとして働きうると考えられる。学習行動への動機づけられやすさにより,不安が学習行動を妨げる方向,促進する方向のいずれにも作用しうるのではないか。本研究では,不安と交互作用すると考えられる要因として自己効力感を取り上げた。また,学習行動の促進・妨害の指標として,特に試験勉強における先延ばし傾向を取り上げた。すなわち本研究の目的は,テスト不安と自己効力感が試験勉強の先延ばし行動に,どのように影響を及ぼすかを調べることであった。
方法
調査対象者 中学校1-3年生490名であった。
調査時期および調査方法 一斉調査による質問紙調査を行った。調査は2回に分けて実施した。第1回調査は定期試験の約2週間前に実施した。質問紙は2つの尺度から構成されていた。(1) テスト不安尺度。TAS邦訳版を用いた。16項目5件法。(2) 学業的自己効力感尺度 (大内,2004) の一部修正版。13項目5件法。第2回調査は定期試験終了直後に実施した。当該の定期試験を想定した学業的延引尺度 (龍・小川内・橋元, 2006, 10項目5件法) に回答してもらった。
結果と考察
学年・性ごとの平均値に基づいて,それぞれ,参加者を,テスト不安の高群と低群,自己効力感の高群と低群に分けた。さらにその組み合わせによって,4群に分類した。4群の学業的延引尺度の平均得点を学年・性別に示す (Table 1)。まず,学年・性を分けず,群間に違いがあるか1要因分散分析を行ったところ,群の主効果が有意であった。多重比較の結果,自己効力感の高い2群のほうが低い2群より先延ばし傾向が小さかった。すなわち一貫して,自己効力感の高い群は先延ばし傾向が小さいという結果であった。
次に,学年・性別に同様の分析を行った結果,どの学年・性別で分析した場合も共通していたのは,自己効力感の高い群についての結果であった。女子においても男子においても,そしてどの学年でも,自己効力感の高い者の場合は,テスト不安の高低によって先延ばし傾向に有意差はみられなかった。テスト不安が低く自己効力感の高い群において,一貫して最も先延ばし傾向が小さかった。次に先延ばし傾向が小さかったのは,テスト不安が高く自己効力感の高い群であった。
しかし,自己効力感が低い2群については,いずれも先延ばし傾向が大きかったものの,女子と男子で,テスト不安と先延ばし傾向の関連が異なっていた。女子の場合,最も先延ばし傾向が強いのは,テスト不安が低く自己効力感の低い群であった。特に3年生女子の場合,テスト不安が高く自己効力感が低い群は,テスト不安が高く自己効力感の高い群と,先延ばし傾向において有意差がみられなかった。一方,男子の場合,最も先延ばし傾向が強いのは,テスト不安が高く自己効力感が低い群であった。特に3年生男子の場合,テスト不安が低く自己効力感が低い群は,テスト不安が高く自己効力感の高い群と,先延ばし傾向において有意差がみられなかった。他の学年では統計的にはこのような結果は得られなかったが,この傾向は一貫していた。すなわち自己効力感の低い者のうち,女子の場合はテスト不安が低い者が先延ばしをしやすく,男子の場合はテスト不安が高い者が先延ばしをしやすい傾向があった。
すなわち,テスト不安が影響を及ぼす可能性を考えると,男子については,どちらかと言えばテスト不安が高いほうが先延ばしをしやすいという傾向があると考えられる。すなわち,テスト不安が高いために,その不安を低減する方略として,学習行動を一時的に延期したり回避したりする行動が増加すると考えられる。しかし女子については逆に,テスト不安が高い者は,その不安を低減するために,学習行動をとりやすいという可能性があることが示唆された。