The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PC023] モチベーション向上のための教室環境づくり

色彩照明による検討

今野紀子1, 土肥紳一1, 宮川治1 (東京電機大学)

Keywords:モチベーション, 色彩照明, 教室環境

1.目的
モチベーションの向上はアウトカム指標としても注目されている.筆者らは,学習者の学習意欲(モチベーション)に着目し,モチベーションを高める教育を目指した教育システム=SIEM(ジーム:School of Information Environment Method)を構築した. SIEMは情報教育分野(プログラミング入門教育),ならびに英語教育,数学基礎教育に関して現在対応システムが完成し,教育現場で継続的に利用されている.こうした教育方法の改善に加え,モチベーションを向上させるための教室空間についても研究している.2013年度は,香りを用いてモチベーションを向上させる教室環境づくりについて,PC教室の試みを報告した.今回は,色彩照明を用いてモチベーションを向上させる教室環境づくりを検討する.近年はサーカディアンリズムを導入した光環境の構築が注目されており,実用化も進められている.本研究では,学習環境に最適な照明色を同定すべく,まずは短時間の色彩照明呈示が気分に与える影響について報告する.
2.方法
(1)対象:2013年11月上旬,大学生84名(男性68名,女性16名[平均年齢20.6±1.3歳])を対象者とした.
(2)色彩照明:光色は紫・黄・青・桃・赤・緑・橙の7色とし,各光色の照度・色度(3回計測した平均値)をTable1に示す. Fig.1に各光色のxy座標を記載した色度図を示す.照度・色度は色彩照度計(KONICA MINOLTA CL-200A)により測定した.
(3)呈示方法:間接照明による教室環境づくりを想定し,プロジェクタ(Panasonic PT-D5700 XGA6000)2台を用いて,壁面のスクリーン(120インチと100インチスクリーンを並列設置)にノートPCで調光した色光を投影した.照明の呈示時間は色順応を考慮し各1分間とし,インターバルを各5分間おいた.
(4)評価指標:一時的気分尺度(徳田,2011)1)の6下位尺度中,学習環境に関係する緊張・混乱・疲労・活気の4下位尺度を使用した.各質問項目をTable2に示す.それぞれ3項目で構成され,各質問項目についてVisual Analog Scale(0-100%)により評価し,3項目の平均値を緊張・混乱・疲労・活気の各得点とした.
3.結果と考察
各光色の気分変化結果をTable 3に示す.Scheffe多重比較検定の結果,緊張では,緊張度高群(黄・赤)と緊張度中群(橙・紫),緊張度低群(桃・青・緑)に,混乱では,混乱度高群(赤・紫)と混乱度低群(黄・青・桃・橙・緑)に,疲労では疲労度高群(赤・紫・青)と疲労度低群(黄・桃・緑・橙)に,活気では,活気度高群(黄・橙)と活気度中群(桃・赤・緑),活気度低群(紫・青)に分類され,各下位尺度の群間には,それぞれ1%水準の有意差が認められた.
自由記述では「照明の光色により自分の気持ちが変化することがはっきりわかった」「寒色はあまりやる気がおきない.暖色はやる気がおき,陽気な気分になった.自分の好きな色だと活力が満ちる気がした」という意見があった.モチベーション向上のための学習環境には混乱や疲労が少なく,活気が高まり,適度な緊張感が保たれる環境が望ましいといえる.その観点からは,混乱度と疲労度が低群でかつ活気度高群,緊張度中群である橙色の光色が有用である可能性が示唆された.今後は,照度の影響や実際の授業場面を想定した検証を行う必要がある.
参考文献:
1)徳田完二:一時的気分尺度(TMS)の妥当性,立命館人間科学研究 22, pp.1-6(2011)
追記:本研究は,科学研究費補助金(基盤研究(C) 課題番号24501214),東京電機大学総合研究所一般研究(Q12J-02)として行なっているものである.