[PC024] モニタリング基準が読解の理解感に及ぼす影響
方向付けしたモニタリング基準と実際のモニタリングは一致するのか
Keywords:モニタリング基準, 理解感, モニタリング
目的
認知的行為の監視をする認知活動をモニタリングといい(中島ら,1999),たとえば文章を読んでいるときに,自分の理解状態を評価することである。また野上(1997)は読解後の理解についての自己評価を理解感と呼んでおり,モニタリングをどのような基準で行ったかにより理解感は大きく影響すると考えられる。そこで本研究では,モニタリング基準の違いが理解感に与える影響を検討する。
方法
参加者:大学生・大学院生 48名(モニタリング基準の方向付け要因4水準による参加者間要因)
課題:①理解感評定(100点満点で評定),②モニタリング評定(部分理解,要旨の把握,既有知識との関連付け7段階評定をどの群もすべて実施),③②のモニタリングを意識した順位づけ,④理解度測定問題(それぞれの文章ごとに,部分理解問題8問,推論問題6問,要約再生問題)
手続き:文章は6種類あった。実験は群別に少人数形式(1~5名)で実施され,参加者は読解中のモニタリングの方向付けを変えた4群(部分理解群,要旨把握群,関連付け群,統制群)にそれぞれ12名ずつ割り振られた。読解中のモニタリング基準の方向づけは,各文章の冒頭で教示により行われた。参加者には各文章を読んでもらい,それぞれの文章の理解の評価を読解順に回答してもらった。さらに理解度測定問題を読解順に解答してもらった。
結果と考察
モニタリング基準の方向付けによる①理解感の影響を検討するため,文章ごとに一要因分散分析を行ったところ,有意差はみられなかった。また,たとえば部分理解群が④理解度測定問題の部分理解問題の点数が高いかを確認するため,文章ごとに一要因分散分析を行った。その結果,いずれの文章,理解度得点においても有意な主効果が見られなかった。
次にモニタリング基準の4群による②モニタリング評定の結果の違いをみるため,一要因分散分析を行ったところ,有意差はみられなかった。さらに,たとえば部分理解群が③モニタリングを意識した順位付けにおいて部分理解を1位に選んでいるかどうかを確認するため,モニタリング基準要因と順位付け要因(参加者内)の二要因分散分析を行った。その結果,モニタリング基準4群の間で有意差は見られなかったが,順位付けによる差が見られ(p<.01),どの群においても要旨把握を1位に選んでいた(図1)。これにより,一般にモニタリング基準は文章の要旨を把握することであることが示された。つまり,要旨把握できたかどうかで内容を理解したかどうかを判断しているのである。これは「読み手はテキストベースの表象と状況モデルの表象の両方を理解の目標にしている」という知見(Dunlosky et al.,2009)とは全く異なる結果になる。
また,理解感が何をもとに生じているかを検討するために,理解感を従属変数,②モニタリング評定の評定値と④理解度測定問題の得点を独立変数として,ステップワイズ法による重回帰分析を行った。②モニタリング評定による理解感の関係をみると説明変数として要旨の把握と部分の理解の2つが挙げられた(β=.416,p<.01,β=.398,p<.01)。④理解度問題の得点においては要約再生問題,推論問題,部分理解問題3つの問題すべてあげられた(β=.301,p<.01,β=.216,p<.01,β=200,p<.01)。
以上のことからも,文章の要旨を把握することで,読み手が文章を理解したと判断していることがわかる。さらに要旨を把握するには部分の理解をする必要があり,部分の理解も判断の基準となりうることがわかる。文章理解の研究においてはより深い理解のためには文章の内容を自分の既有知識と関連させて理解することの重要性が指摘されているが,通常の文章の読みにおいては,このようなモニタリング基準はあまり重視されていないことが示唆された。さらに,教示を受けてもこのようなモニタリング基準での読みが難しいことが示唆された。
認知的行為の監視をする認知活動をモニタリングといい(中島ら,1999),たとえば文章を読んでいるときに,自分の理解状態を評価することである。また野上(1997)は読解後の理解についての自己評価を理解感と呼んでおり,モニタリングをどのような基準で行ったかにより理解感は大きく影響すると考えられる。そこで本研究では,モニタリング基準の違いが理解感に与える影響を検討する。
方法
参加者:大学生・大学院生 48名(モニタリング基準の方向付け要因4水準による参加者間要因)
課題:①理解感評定(100点満点で評定),②モニタリング評定(部分理解,要旨の把握,既有知識との関連付け7段階評定をどの群もすべて実施),③②のモニタリングを意識した順位づけ,④理解度測定問題(それぞれの文章ごとに,部分理解問題8問,推論問題6問,要約再生問題)
手続き:文章は6種類あった。実験は群別に少人数形式(1~5名)で実施され,参加者は読解中のモニタリングの方向付けを変えた4群(部分理解群,要旨把握群,関連付け群,統制群)にそれぞれ12名ずつ割り振られた。読解中のモニタリング基準の方向づけは,各文章の冒頭で教示により行われた。参加者には各文章を読んでもらい,それぞれの文章の理解の評価を読解順に回答してもらった。さらに理解度測定問題を読解順に解答してもらった。
結果と考察
モニタリング基準の方向付けによる①理解感の影響を検討するため,文章ごとに一要因分散分析を行ったところ,有意差はみられなかった。また,たとえば部分理解群が④理解度測定問題の部分理解問題の点数が高いかを確認するため,文章ごとに一要因分散分析を行った。その結果,いずれの文章,理解度得点においても有意な主効果が見られなかった。
次にモニタリング基準の4群による②モニタリング評定の結果の違いをみるため,一要因分散分析を行ったところ,有意差はみられなかった。さらに,たとえば部分理解群が③モニタリングを意識した順位付けにおいて部分理解を1位に選んでいるかどうかを確認するため,モニタリング基準要因と順位付け要因(参加者内)の二要因分散分析を行った。その結果,モニタリング基準4群の間で有意差は見られなかったが,順位付けによる差が見られ(p<.01),どの群においても要旨把握を1位に選んでいた(図1)。これにより,一般にモニタリング基準は文章の要旨を把握することであることが示された。つまり,要旨把握できたかどうかで内容を理解したかどうかを判断しているのである。これは「読み手はテキストベースの表象と状況モデルの表象の両方を理解の目標にしている」という知見(Dunlosky et al.,2009)とは全く異なる結果になる。
また,理解感が何をもとに生じているかを検討するために,理解感を従属変数,②モニタリング評定の評定値と④理解度測定問題の得点を独立変数として,ステップワイズ法による重回帰分析を行った。②モニタリング評定による理解感の関係をみると説明変数として要旨の把握と部分の理解の2つが挙げられた(β=.416,p<.01,β=.398,p<.01)。④理解度問題の得点においては要約再生問題,推論問題,部分理解問題3つの問題すべてあげられた(β=.301,p<.01,β=.216,p<.01,β=200,p<.01)。
以上のことからも,文章の要旨を把握することで,読み手が文章を理解したと判断していることがわかる。さらに要旨を把握するには部分の理解をする必要があり,部分の理解も判断の基準となりうることがわかる。文章理解の研究においてはより深い理解のためには文章の内容を自分の既有知識と関連させて理解することの重要性が指摘されているが,通常の文章の読みにおいては,このようなモニタリング基準はあまり重視されていないことが示唆された。さらに,教示を受けてもこのようなモニタリング基準での読みが難しいことが示唆された。