日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PC

(5階ラウンジ)

2014年11月7日(金) 16:00 〜 18:00 5階ラウンジ (5階)

[PC030] 課題期限直前における先延ばしの際の意識変化

短期反復測定による検討

小浜駿 (神戸学院大学)

キーワード:先延ばし, web測定, 携帯電話

問題と目的
済ませておくべき事柄を行わない現象は先延ばし(procrastination)と呼ばれる。小浜(2010)は,先延ばし前,中,後の意識変化をもとに,先延ばしには3種のプロセスがあることを示した。第一は,否定的感情が先延ばし前,中,後で一貫する「否定的感情プロセス」である。第二は,先延ばし前に状況を楽観視し,先延ばし中は肯定的感情が生じるが,先延ばし後には後悔が生じる「楽観的プロセス」である。第三は,先延ばし前に計画性があり,先延ばし後に気分の切り替えが可能な「計画的プロセス」である。
小浜(2010)は,回顧法によって意識を測定しており,体験時から測定時までに記憶の変容が生じている可能性がある。そのため,記憶の変容が生じにくいように,体験時からの時間的乖離がない時点で小浜(2010)の3プロセスを確証することを本研究の目的とする。

方 法
調査時期 2008年11月,2009年2月から3月,2010年1月から2月に,それぞれ調査を実施した。
調査対象 課題期限7日前,3日前,1日前の3時点すべての測定に回答した79名を調査対象とした(男性22名,女性56名,不明1名。平均年齢20.23±0.94歳)。
調査方法 課題期限7日前,3日前および1日前の18~20時の間に,協力者の携帯電話に回答用webページのURLを記載した調査依頼メールを送り,回答ページにアクセスするまでの一日の体験について回答を求めた。調査完了後,郵送によって謝礼を送付した。
調査内容 まず,「本日,『課題をやらなければならない』と意識しながらも,一時的に課題とは関係のない別の行動をしてしまったということがありましたか」と教示し,先延ばし体験の想起を求めた。体験の想起ができた者に対してのみ,先延ばしにおける意識を尋ねた。先延ばし前,中,後における意識を,小浜(2010)をもとに2項目ずつで測定した。先延ばし前は,「先延ばししようと思ったとき」の意識に関して,課題の辛さ,状況の楽観視,計画性を測定した。先延ばし中は,「先延ばしをしている最中」の意識に関して,懸念・自己嫌悪および肯定的感情を測定した。先延ばし後の意識は,「先延ばしをやめたとき」の意識に関して,後悔・自己嫌悪および気分の切り替えを測定した。

結果と考察
各時点における3種のプロセスについて検討するため,4時点それぞれにおいて先延ばし前の意識を第1水準,先延ばし中の意識を第2水準,先延ばし後の意識を第3水準とした重回帰分析の繰り返しによるパス解析を行った。
パス解析の結果,3点のすべてにおいて,先延ばし前の「課題の辛さ」は先延ばし中の「懸念・自己嫌悪」を媒介して先延ばし後の「後悔・自己嫌悪」を促進しており,「否定的感情プロセス」が3時点で確認された。
先延ばし前の「状況の楽観視」は,課題期限3日前および1日前において,先延ばし中の「肯定的感情」を促進しており,「楽観的プロセス」は状況の楽観視が肯定的感情を促進する側面のみが確認された。
課題期限7日前および1日前において,先延ばし前の「計画性」は先延ばし後の「後悔・自己嫌悪」を抑制し,「気分の切り替え」を促進していた。課題期限3日前には,「計画性」は有意な影響を及ぼさなかった。「計画的プロセス」は課題期限7日前および課題期限1日前においてのみ確認された。