[PC055] 現役教師および教育実習経験者における学ぶ動機の比較
教科指導に着目して
キーワード:動機づけ, 教師, 教育実習経験者
目 的
これまでの学ぶ動機に関する研究は,主に子どもを対象に検討されてきた。例えば,西村・櫻井(2013)では小中学生の動機づけを比較し,学年が上がるにつれ自律的動機づけは低くなり,統制的動機づけが高くなることなどを示した。このように子どもに関する研究は蓄積されているが,一方で教師の学ぶ動機に関して検討した研究は少ない。教育基本法第9条に“法律に定める学校の教員は,自己の崇高な使命を深く自覚し,絶えず研修と修養に励み,その職責の執行に努めなければならない”と述べられているように,教師も子どもと同様に,学び続けなければいけない職業である。動機づけの違いによって教師の質が変わってくることなどが考えられ,教師の動機づけの構造を検討することは,教育実践上意義のあることだと考えられる。本研究では,教師が毎日行う業務である教科指導に着目し,教育実習経験者と現役教師の学ぶ動機を比較することを目的とする。
方 法
対象者 現役教師は東海地方および関東地方の小学校5校,中学校5校,高等学校3校と,関東地方で開催された教員研修に参加した現役教師に実施をした。有効回答数は計238名(小学校76名,中学校98名,高等学校64名)であった。教育実習経験者は関東地方の大学に所属する学生に実施した。有効回答数は356名であった。
手続き 教員に関しては2013年11月~2014年2月に,各学校責任者に依頼または研修にて各教員への質問紙の配布,回収を行った。教育実習経験者に関しては2013年10月に,講義内において質問紙の配布,回収を行った。
調査内容 教師の学ぶ動機尺度:三和・外山(2014)のものを使用した。教師が教科指導について学んでいる動機について尋ねるものであり“内発的動機づけ”“子ども志向”“比較・承認志向”“自己志向”“義務感”“無動機”の6つの下位尺度で構成される。30項目4件法。
結 果 と 考 察
現役教師を経験年数ごとに1-10年目を若手群,11-20年目を中堅群,21年目以降をベテラン群に,教育実習経験者を教師志望度ごとに教師が第一志望を志望度高群,教師は選択肢の1つを志望度中群,教師は考えていないを志望度低群に群分けを行い,学ぶ動機を従属変数とした分散分析を行った。その結果,全ての下位尺度において有意差が見られたので,多重比較(Tukey法)を行った。
5%水準で有意になったものをみていくと,内発的動機づけについては,志望度低群が他の群よりも低かった。子ども志向については,志望度低群が若手群,中堅群,ベテラン群,志望度高群より低かった。承認・比較志向については,志望度高群,志望度中群,志望度低群が中堅群およびベテラン群よりも高く,志望度高群が若手群よりも高かった。義務感については,中堅群が志望度高群,志望度中群,志望度低群よりも高く,若手群が志望度中群よりも高かった。自己志向については,志望度高群が志望度中群,志望度低群よりも高かった。無動機については志望度低群が若手群,中堅群,ベテラン群よりも高かった(Table1)。
以上の結果より,現役教師間の経験年数による差は見られなかったが,現役教師と実習経験者との間および実習経験者間の志望度による差が見られた。教師の学ぶ動機は,特に学生から教師という立場になる過程で変化すると考えられる。今後はその変化の詳細や,動機づけの違いが教師に与える影響なども含めて検討する必要がある。
これまでの学ぶ動機に関する研究は,主に子どもを対象に検討されてきた。例えば,西村・櫻井(2013)では小中学生の動機づけを比較し,学年が上がるにつれ自律的動機づけは低くなり,統制的動機づけが高くなることなどを示した。このように子どもに関する研究は蓄積されているが,一方で教師の学ぶ動機に関して検討した研究は少ない。教育基本法第9条に“法律に定める学校の教員は,自己の崇高な使命を深く自覚し,絶えず研修と修養に励み,その職責の執行に努めなければならない”と述べられているように,教師も子どもと同様に,学び続けなければいけない職業である。動機づけの違いによって教師の質が変わってくることなどが考えられ,教師の動機づけの構造を検討することは,教育実践上意義のあることだと考えられる。本研究では,教師が毎日行う業務である教科指導に着目し,教育実習経験者と現役教師の学ぶ動機を比較することを目的とする。
方 法
対象者 現役教師は東海地方および関東地方の小学校5校,中学校5校,高等学校3校と,関東地方で開催された教員研修に参加した現役教師に実施をした。有効回答数は計238名(小学校76名,中学校98名,高等学校64名)であった。教育実習経験者は関東地方の大学に所属する学生に実施した。有効回答数は356名であった。
手続き 教員に関しては2013年11月~2014年2月に,各学校責任者に依頼または研修にて各教員への質問紙の配布,回収を行った。教育実習経験者に関しては2013年10月に,講義内において質問紙の配布,回収を行った。
調査内容 教師の学ぶ動機尺度:三和・外山(2014)のものを使用した。教師が教科指導について学んでいる動機について尋ねるものであり“内発的動機づけ”“子ども志向”“比較・承認志向”“自己志向”“義務感”“無動機”の6つの下位尺度で構成される。30項目4件法。
結 果 と 考 察
現役教師を経験年数ごとに1-10年目を若手群,11-20年目を中堅群,21年目以降をベテラン群に,教育実習経験者を教師志望度ごとに教師が第一志望を志望度高群,教師は選択肢の1つを志望度中群,教師は考えていないを志望度低群に群分けを行い,学ぶ動機を従属変数とした分散分析を行った。その結果,全ての下位尺度において有意差が見られたので,多重比較(Tukey法)を行った。
5%水準で有意になったものをみていくと,内発的動機づけについては,志望度低群が他の群よりも低かった。子ども志向については,志望度低群が若手群,中堅群,ベテラン群,志望度高群より低かった。承認・比較志向については,志望度高群,志望度中群,志望度低群が中堅群およびベテラン群よりも高く,志望度高群が若手群よりも高かった。義務感については,中堅群が志望度高群,志望度中群,志望度低群よりも高く,若手群が志望度中群よりも高かった。自己志向については,志望度高群が志望度中群,志望度低群よりも高かった。無動機については志望度低群が若手群,中堅群,ベテラン群よりも高かった(Table1)。
以上の結果より,現役教師間の経験年数による差は見られなかったが,現役教師と実習経験者との間および実習経験者間の志望度による差が見られた。教師の学ぶ動機は,特に学生から教師という立場になる過程で変化すると考えられる。今後はその変化の詳細や,動機づけの違いが教師に与える影響なども含めて検討する必要がある。