The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PC059] 他者との相互作用場面における学習者の目標設定と関連要因

学習動機と学習観に着目した検討

篠ヶ谷圭太 (日本大学)

Keywords:目標設定, 学習動機, 学習観

目 的
言語力や表現力の育成のため,学校教育現場では以前にも増して,複数の学習者が相互作用を行う活動が授業の中に取り入れられている。自己調整学習(self-regulated learning)研究では,学習者の動機づけや信念によって学習時の目標が規定され,それが学習方略の選択に影響を及ぼすことが指摘されている(e.g., Muis, 2007)。他者との相互作用場面での個々の発話を,学習者が選択する一種の「方略」と捉えるならば,相互作用に際して学習者が設定する目標は,学習者の発話を規定する重要な変数になりうる。そこで本研究では,相互作用場面において学習者が設定する目標の因子構造,さらには,学習動機や学習観と目標設定の関連について検討を行った。
方 法
対象 埼玉県の公立高校1年生計796名。
学習動機 内容関与動機(e.g., 内容がおもしろいから)と内容分離動機(e.g., 先生や親にほめられたいから)について,各5項目を使用して測定した。
学習観 認知主義的学習観(e.g., なぜそのように解けるのかを理解することが大切だ),非認知主義的学習観(e.g., 答えさえ合っていればその問題は分かったと言える)について,各4項目を使用した。
互作用場面での目標設定 他者と相互作用を行う際にどんなことに注意しているかについて,23項目(e.g., 自分の中ではわかっていることを相手にも分かるようにすること)を使用して測定を行った。回答はすべて1(まったくあてはまらない)から5(とてもよくあてはまる)の5件法で求めた。
結 果
相互作用場面での目標設定について確認的因子分析を行ったところ,「自己の理解」,「自他の共通理解」,「自己の理解のモニタリング」,「他者の理解のモニタリング」の4因子を想定したモデルが高い適合度を示したため(GFI = .927, AGFI = .903, CFI = .910, RMSEA = .061),本研究ではこのモデルに基づいて下位尺度得点の算出を行った。
次に,学習動機(内容関与動機,内容分離動機)と学習観(認知主義的学習観,非認知主義的学習観)を独立変数とし,重回帰分析を用いて各目標得点の予測を行ったところ,内容関与動機や認知主義的信念がすべての目標と有意な正の関連を示すことが明らかとなった(Table 1)。
考 察
本研究の結果,他者との相互作用場面において学習者が設定する目標には,自己の理解に関する目標だけでなく,他者の理解まで視野に入れた目標も存在することが示された。また,学習内容に価値を見出している学習者や,学習において深い理解を重視する学習者ほど,相互作用時に他者の理解状態まで意識しながら活動に取り組んでいることが示された。本研究では相互作用中の発話は測定していないため,目標設定と発話の関連について明らかにされていない。今後は,動機づけや信念以外の様々な要因(学習者の知識状態や課題内容)が相互作用場面での学習者の目標設定および実際の発話に与える影響について,より詳細に検討していく必要があるだろう。