[PC063] 女子大学生はどんなときに援助方法がわからないと感じるのか?
自由記述法による検討
キーワード:大学生, 援助, コミュニケーション
問題
大学生のコミュニケーション能力の低下が指摘されて久しい。「ゆとり世代」と呼ばれ,効率性を重視するといわれる現代青年らは,ともすると「クール(冷たい)」「ドライ」と言われたり,自己中心的で利己的であると表現されたりしている。
困っている他者に対して援助行動が行われない,向社会的なふるまいがみられにくいといった指摘もあるが,これには,利己的な理由で行動されていない場合と,「あえて」行動しない場合,そして,「どう行動したらいいかわからない」場合があると考えられる。真下ら(2013)が行った,困窮者に対する言葉かけ収集の調査においても,対象者の一部は無回答または「無言でいる」と回答することが示されている。これは,大学生が困窮者に対して,どのように声をければよいのか,また,どのようにふるまえばよいのかに迷いを感じていることの表れともとらえられる。
そこで,本研究では,日常生活において,困っている人に気づいているものの,「何と声をかけたらいいかわからない」「助け方がわからない」場面はどのような場面なのかについて,予備的に検討することを目的とした。
方法
調査協力者 近畿圏内の大学,幼児教育系の学科に在籍する女子大学生41名(平均年齢19.08歳,SD=0.27)。なお,本研究において女子学生に限定したのは,向社会的行動生起および気づきに性差がみられるとの知見に基づく。
手続き 自由記述法による質問紙を集団実施した。倫理的配慮などについては表紙に明記し,内容に同意したもののみ回答に移るよう口頭で指示した。
教示文 「高校時代から今日まで,「困っている人がいたけれど,“どう手伝ったらいいか,わからない”“何と声を書けたらいいのか,わからない”という経験は,ありませんでしたか?下の空欄に,できるだけ具体的に書いてみましょう。」
回答欄 90mm×155mmの長方形の中に,五つの黒丸を示し,箇条書き形式で回答できるように回答欄を作成した。
結果と考察
分析対象 記入のあった36名の回答のうち,教示内容と合致し,意味が判別できる59件を分析対象とした。
分類 KJ法に類似した手法を用い,分析対象となった回答の分類を行った。その結果,回答は5つのカテゴリーに分類された(Figure 1)。具体的には,「電車の席を譲りたいけど譲れない」といった公共場面に関する回答が最も多く(20件),「公共」と命名した。続いて,「友だちが彼氏と別れたときにどう声をかけたらいいかわからない」といった「友人」(19件),「そもそも手を出していいのかわからない」といった困窮事象全般に対する対応に関する「全般」(11件)と続いた。場面言敵的なものとして,「部活で悔し泣きする友人に,何と言えばいいかわからなかった」などといった「部活」(6件),「幼稚園実習で,子どもをどこまで手伝っていいのかわからない」などの「実習」(2件)であった。
具体的な回答内容を見ていくと,「わからない」理由として,自身の能力不足,相手の要求の予測不可能,役割の違いなどがあげられた。困窮者に対する配慮ゆえに援助方法がわからないという事象が生じている可能性が考えられ,一様に「助けない」ことが「クール」とは断言できないことが示唆された。
大学生のコミュニケーション能力の低下が指摘されて久しい。「ゆとり世代」と呼ばれ,効率性を重視するといわれる現代青年らは,ともすると「クール(冷たい)」「ドライ」と言われたり,自己中心的で利己的であると表現されたりしている。
困っている他者に対して援助行動が行われない,向社会的なふるまいがみられにくいといった指摘もあるが,これには,利己的な理由で行動されていない場合と,「あえて」行動しない場合,そして,「どう行動したらいいかわからない」場合があると考えられる。真下ら(2013)が行った,困窮者に対する言葉かけ収集の調査においても,対象者の一部は無回答または「無言でいる」と回答することが示されている。これは,大学生が困窮者に対して,どのように声をければよいのか,また,どのようにふるまえばよいのかに迷いを感じていることの表れともとらえられる。
そこで,本研究では,日常生活において,困っている人に気づいているものの,「何と声をかけたらいいかわからない」「助け方がわからない」場面はどのような場面なのかについて,予備的に検討することを目的とした。
方法
調査協力者 近畿圏内の大学,幼児教育系の学科に在籍する女子大学生41名(平均年齢19.08歳,SD=0.27)。なお,本研究において女子学生に限定したのは,向社会的行動生起および気づきに性差がみられるとの知見に基づく。
手続き 自由記述法による質問紙を集団実施した。倫理的配慮などについては表紙に明記し,内容に同意したもののみ回答に移るよう口頭で指示した。
教示文 「高校時代から今日まで,「困っている人がいたけれど,“どう手伝ったらいいか,わからない”“何と声を書けたらいいのか,わからない”という経験は,ありませんでしたか?下の空欄に,できるだけ具体的に書いてみましょう。」
回答欄 90mm×155mmの長方形の中に,五つの黒丸を示し,箇条書き形式で回答できるように回答欄を作成した。
結果と考察
分析対象 記入のあった36名の回答のうち,教示内容と合致し,意味が判別できる59件を分析対象とした。
分類 KJ法に類似した手法を用い,分析対象となった回答の分類を行った。その結果,回答は5つのカテゴリーに分類された(Figure 1)。具体的には,「電車の席を譲りたいけど譲れない」といった公共場面に関する回答が最も多く(20件),「公共」と命名した。続いて,「友だちが彼氏と別れたときにどう声をかけたらいいかわからない」といった「友人」(19件),「そもそも手を出していいのかわからない」といった困窮事象全般に対する対応に関する「全般」(11件)と続いた。場面言敵的なものとして,「部活で悔し泣きする友人に,何と言えばいいかわからなかった」などといった「部活」(6件),「幼稚園実習で,子どもをどこまで手伝っていいのかわからない」などの「実習」(2件)であった。
具体的な回答内容を見ていくと,「わからない」理由として,自身の能力不足,相手の要求の予測不可能,役割の違いなどがあげられた。困窮者に対する配慮ゆえに援助方法がわからないという事象が生じている可能性が考えられ,一様に「助けない」ことが「クール」とは断言できないことが示唆された。