[PC071] 大学生の集団活動における役割体験と社会人基礎力の関連
キーワード:役割体験, 社会人基礎力
【問題と目的】
近年,職場では指示待ち人間やマニュアル依存の若者が多いことが問題視されており(諏訪,2013)学校現場では社会人として基礎的な力である「社会人基礎力(経済産業省,2006)」の育成・評価の必要性が求められている(経済産業省,2006)。
指示待ちやマニュアル依存の若者の原因の1つとしては,大学生におけるリーダーシップ体験の欠如が考えられる。リーダーシップは,他者からの信頼・役割期待と,自己期待の充足を基盤として,リーダーとしての自信がつくことにより,役割行動として確実に発揮できるようになる(池田・古川,2006)。そのため,集団活動においてリーダーシップを体験した学生は,そうでない学生に比べて自己の能力に対する自信(自己評価)が高まる可能性が予想され,社会人基礎力に影響を与える変数であることが推測される。
社会人基礎力育成の取り組みにおいては,様々な「活動」への積極的参加(経済産業省,2006)が求められている。先行研究においても正課外活動と社会人基礎力との関連研究(秋元,2012;北島・細田・星,2012ほか)がみられるが,学生の役割体験を考慮した先行研究はいまだない。
そこで本研究では,大学生の役割体験に注目し,集団活動における社会人基礎力の自己評価を調べることを目的とした。
【方法】
調査対象 私立A大学,大学3,4年生219名,男子118名,女子101名)。
調査時期と手続き 2013年7月上旬~8月上旬
使用尺度 ①北島・細田・星(2011)の「社会人基礎力尺度」36項目に加えて,本研究者と心理学を専攻する大学教員1名および大学院生3名により検討した6項目を含めた42項目を用いた。評定は,「6.非常にあてはまる」~「1.全くあてはまらない」の6件法である。本研究における因子分析の結果,「情報理解発信力」「受容的態度」「主体性」「論理的思考力」「創造力」「規律性」の6因子に分かれた。
②大学で所属している重要な集団を選び,その中での自分の役割について尋ねる項目を用いた。評定は「1.リーダー」「2.サブリーダー」「3.それ以外の役割」「4.役付きなし」で,あてはまるものに丸を付けるよう提示した。
【結果と考察】
役割体験ごとの社会人基礎力の能力要素,および総得点を検討するために1要因分散分析を行った(Table 1)。その結果有意な差がみられたため,Tukeyの多重比較を行ったところ,「情報理解発信力」において,「4.役付きなし」の学生よりも「1.リーダー」や「2.サブリーダー」を経験した学生の方が得点が有意に高く,「3.それ以外の役割」の者よりも「1.リーダー」を経験した学生の方が得点が有意に高いという結果になった。また,「主体性」においては「4.役付きなし」の学生よりも「1.リーダー」を経験した学生の方が有意に得点が高く,「社会人基礎力」においては,「4.役付きなし」の者より「1.リーダー」,「2.サブリーダー」を経験した学生の方が有意に高い,という結果になった。これらの結果から,リーダー,サブリーダーを経験した学生はしない学生に比べて「社会人基礎力」をより肯定的に自己評価しており,リーダーを経験した学生は「主体性」や「情報理解発信力」を,サブリーダーを経験した学生は「情報理解発信力」を,それぞれの役割期待に応じて肯定的に自己評価することが明らかとなった。
近年,職場では指示待ち人間やマニュアル依存の若者が多いことが問題視されており(諏訪,2013)学校現場では社会人として基礎的な力である「社会人基礎力(経済産業省,2006)」の育成・評価の必要性が求められている(経済産業省,2006)。
指示待ちやマニュアル依存の若者の原因の1つとしては,大学生におけるリーダーシップ体験の欠如が考えられる。リーダーシップは,他者からの信頼・役割期待と,自己期待の充足を基盤として,リーダーとしての自信がつくことにより,役割行動として確実に発揮できるようになる(池田・古川,2006)。そのため,集団活動においてリーダーシップを体験した学生は,そうでない学生に比べて自己の能力に対する自信(自己評価)が高まる可能性が予想され,社会人基礎力に影響を与える変数であることが推測される。
社会人基礎力育成の取り組みにおいては,様々な「活動」への積極的参加(経済産業省,2006)が求められている。先行研究においても正課外活動と社会人基礎力との関連研究(秋元,2012;北島・細田・星,2012ほか)がみられるが,学生の役割体験を考慮した先行研究はいまだない。
そこで本研究では,大学生の役割体験に注目し,集団活動における社会人基礎力の自己評価を調べることを目的とした。
【方法】
調査対象 私立A大学,大学3,4年生219名,男子118名,女子101名)。
調査時期と手続き 2013年7月上旬~8月上旬
使用尺度 ①北島・細田・星(2011)の「社会人基礎力尺度」36項目に加えて,本研究者と心理学を専攻する大学教員1名および大学院生3名により検討した6項目を含めた42項目を用いた。評定は,「6.非常にあてはまる」~「1.全くあてはまらない」の6件法である。本研究における因子分析の結果,「情報理解発信力」「受容的態度」「主体性」「論理的思考力」「創造力」「規律性」の6因子に分かれた。
②大学で所属している重要な集団を選び,その中での自分の役割について尋ねる項目を用いた。評定は「1.リーダー」「2.サブリーダー」「3.それ以外の役割」「4.役付きなし」で,あてはまるものに丸を付けるよう提示した。
【結果と考察】
役割体験ごとの社会人基礎力の能力要素,および総得点を検討するために1要因分散分析を行った(Table 1)。その結果有意な差がみられたため,Tukeyの多重比較を行ったところ,「情報理解発信力」において,「4.役付きなし」の学生よりも「1.リーダー」や「2.サブリーダー」を経験した学生の方が得点が有意に高く,「3.それ以外の役割」の者よりも「1.リーダー」を経験した学生の方が得点が有意に高いという結果になった。また,「主体性」においては「4.役付きなし」の学生よりも「1.リーダー」を経験した学生の方が有意に得点が高く,「社会人基礎力」においては,「4.役付きなし」の者より「1.リーダー」,「2.サブリーダー」を経験した学生の方が有意に高い,という結果になった。これらの結果から,リーダー,サブリーダーを経験した学生はしない学生に比べて「社会人基礎力」をより肯定的に自己評価しており,リーダーを経験した学生は「主体性」や「情報理解発信力」を,サブリーダーを経験した学生は「情報理解発信力」を,それぞれの役割期待に応じて肯定的に自己評価することが明らかとなった。