日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PC

(501)

2014年11月7日(金) 16:00 〜 18:00 501 (5階)

[PC076] 親の自己愛傾向が子育て葛藤に及ぼす影響について

中学生の父母の自己愛傾向が子育て葛藤に及ぼす影響について

太田仁1, 阿部晋吾1 (梅花女子大学)

キーワード:中学生の父母, 自己愛, 子育て葛藤

【問 題】
夫婦関係は、個々に発達変化する側面と家族集団における役割期待により規定される二つの側面により形成される。子どもが中学生にあたる親の中年期は個人としてのアイデンティティの再構築の時期であり、家族の発達課題としては、子どもに対する愛着と自立の葛藤調整がある(Satroch,2003)。中年期の夫婦関係においては、夫婦関係満足度等において夫婦間ギャップが大きくなる(菅原ら,1997)など中年期の夫婦の研究では、個人と家族の発達段階ならびに夫婦関係の3側面からのアプローチがなされてきた。近年の夫婦においは、家族集団規範等に優先して行動や態度の選考基準を個人の価値におく個人化傾向(篠崎,1991)が指摘されており個々の発達の側面における個人の指向性も重要な要因といえよう。本研究では、個人の指向性を示す指標として自己愛をとりあげ夫婦各々の自己愛が子育て葛藤にどのように影響を与えるかについて検討する。

【方 法】
対象者と調査方法;三重県A中学校の全校生徒572名の両親を対象とした。担任教員から生徒を通じて両親に質問紙を配布し約2週間後に回収した。夫婦ペアでの回収数は288であった(回収率50.35%)。
質問項目;年齢、婚姻期間、子どもの数、子ども関連の時間、仕事関連の時間、自分の時間について尋ねる項目各1項目・中学生の親の子育葛藤:小武内(2011)のしつけの悩み・葛藤尺度の一部を抜粋し因子分析の結果得た4因子を下位尺度として使用した(15項目、5件法。夫:「家庭教育不安6項目 α=.83」「両価性葛藤3項目 α=.82 」「対応の硬直3項目 α=.76」「指針の不一致3項目 α=.71」、妻: 家庭教育不安6項目 α=.80」「両価性葛藤3項目 α=.84 」「対応の硬直3項目 α=.76」「指針の不一致3項目 α=.73」)。
・自己愛傾向: 小塩(1998)の自己愛人格目録短縮版の一部を抜粋して使用した(9項目を因子分析した結果得られた3因子を下位釈度として使用した、5件法。夫: 「優越有能 α=.90」「注目賞賛 α=.88」「自己主張 α=.78」、妻: 「優越有能 α=.90」「注目賞賛 α=.84」「自己主張 α=.78」)。
【結果と考察】
夫婦間の子育て葛藤認知と関連要因の差をt検定により検討した結果(Table1) 『家庭教育不安(自分の家庭での善さが世間一般の善さとずれていないか、迷うことがある)』、『両価性葛藤(子どもの反抗を成長段階と思いたいが、可愛さと憎らしさの葛藤に苦しむ)』、『対応の硬直「(「柔軟に」と思いつつ、どうしても自分にも子どもにも「完璧」を要求してしまう)』、『指針の不一致(夫婦間でしつけ観が一致せずに苦労する)』、夫婦関係の満足度の得点において夫よりも妻の方が高かった。この結果は、これまでの夫婦間評価ギャップの研究結果と一致する(菅原ら,1997)。次に、夫・妻の各自己愛、関係満足を独立変数、子育て葛藤の各下位尺度得点を従属変数として重回帰分析を行った。その結果、夫婦の自己傾向について優越有能感は『家庭教育不安』・『両価性葛藤』の一抑制要因となっていた。注目・賞賛は夫においては『対応硬直』と『両価性葛藤』、妻では、『家庭教育不安』と『両価性葛藤』の誘因となっていた。夫婦関係の満足度は、夫婦双方の『指針の不一致』の抑制要因となっており、夫においては、『両価性の葛藤』の抑制要因にもなっていた。しかし、妻においては『対応硬直』の誘因となっていた。