[PC077] ほめられた経験が自尊感情に及ぼす効果
キーワード:ほめ言葉, ほめの対象, 自尊感情
養育者からほめられた経験が自尊感情にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的とする。実際にどのようなほめ言葉をかけられたか,どのような対象についてほめられたか,という具体的なほめられた経験を問題にし,有効なほめ方を探索する。
方 法
調査対象者 埼玉県内の私立A女子大学の学生105名と東京都内の私立B大学の学生175名の計280名(男性49名,女性231名)。平均年齢19.4歳(SD=1.3)。
質問紙の内容 調査対象者に小学校時代を想起してもらった上で以下の質問に回答を求めた。(1)もっともよく面倒を見てもらった養育者:父親,母親,父母同程度,祖父,祖母,その他の6つの選択肢から選択を求めた。(2)ほめられ認知:養育者から「よくほめられたか」について7件法で回答を求めた。(3)ほめ言葉項目:名取・三輪(2008)を参考に作成した「よくできたね」,「すごいね」,「やさしいね」など20項目のほめ言葉を「どのくらいよくいわれたか」について6件法で回答を求めた。(4)ほめの対象:「勉強・学業」,「人柄・性格」など15種類の対象を「どれくらいよくほめられたか」について6件法で回答を求めた。(5)自尊感情の測定にはRosenberg (1965)による自尊感情尺度(山本・松井・山成,1982訳)を使用した。
結果と考察
ほめ言葉項目 20のほめ言葉項目について,因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った。1項目を除外した19項目から固有値1.0を基準に「1高評価」(「可愛いね」,「良い子だね」,「賢いね」など7項目),「2肯定的感情伝達」(「おめでとう」,「ありがとう,助かったよ」など5項目),「3承認付与」(「よくできたね」,「上手だね」など5項目),「4報酬付与」(「頑張ったからおこづかいをあげるよ」,「ごほうびをあげるね」の2項目)の4因子を抽出した。各因子に含まれる項目の平均評定値を算出し尺度得点とした(α係数は順にα=.83,.78,.85,.67)。
ほめの対象項目 15のほめ対象項目について,因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行い,固有値1.0を基準に「1向社会的行動」(「礼儀・思いやり(挨拶など)」,「人柄・性格(正直・真面目など)など6項目」,「2課題遂行と努力」(「課題達成」,「努力・がんばったこと」,など6項目,「3内発的行動」(「趣味」,「遊び・ゲーム」,「才能」の3項目)の3因子を抽出した。因子負荷量が.35を下回る項目を除いた各因子に含まれる項目の平均評定値を算出し尺度得点とした(α係数は順にα=.82,.76,.73)。
ほめ言葉が自尊感情に及ぼす効果 ほめ言葉の4因子を説明変数,自尊感情を目的変数としてステップワイズ法による重回帰分析を行った。「高評価」が自尊感情に対して有意な正の影響を及ぼしていた(表1)。高評価を伝えるほめ言葉をよくかけられていた者ほど自尊感情が高いことが示された。
ほめの対象が自尊感情に及ぼす効果 ほめの対象の3因子を説明変数,自尊感情を目的変数として同様の重回帰分析を行った結果,「向社会的行動」が自尊感情に対して有意な正の影響を及ぼしていた(表2)。社会的に望ましい行動や振る舞いをほめられた経験の多い者ほど自尊感情が高いことが示された。同様の重回帰分析を調査対象者の大学ごとに実施したところ,ほめの対象について,B大学では全体の結果と同様に向社会的行動が自尊感情に有意な影響を及ぼしていたが,A大学においては内発的行動から有意な正の影響がみられた。自尊感情の醸成につながるほめの対象は一様ではない可能性が示唆された。
方 法
調査対象者 埼玉県内の私立A女子大学の学生105名と東京都内の私立B大学の学生175名の計280名(男性49名,女性231名)。平均年齢19.4歳(SD=1.3)。
質問紙の内容 調査対象者に小学校時代を想起してもらった上で以下の質問に回答を求めた。(1)もっともよく面倒を見てもらった養育者:父親,母親,父母同程度,祖父,祖母,その他の6つの選択肢から選択を求めた。(2)ほめられ認知:養育者から「よくほめられたか」について7件法で回答を求めた。(3)ほめ言葉項目:名取・三輪(2008)を参考に作成した「よくできたね」,「すごいね」,「やさしいね」など20項目のほめ言葉を「どのくらいよくいわれたか」について6件法で回答を求めた。(4)ほめの対象:「勉強・学業」,「人柄・性格」など15種類の対象を「どれくらいよくほめられたか」について6件法で回答を求めた。(5)自尊感情の測定にはRosenberg (1965)による自尊感情尺度(山本・松井・山成,1982訳)を使用した。
結果と考察
ほめ言葉項目 20のほめ言葉項目について,因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った。1項目を除外した19項目から固有値1.0を基準に「1高評価」(「可愛いね」,「良い子だね」,「賢いね」など7項目),「2肯定的感情伝達」(「おめでとう」,「ありがとう,助かったよ」など5項目),「3承認付与」(「よくできたね」,「上手だね」など5項目),「4報酬付与」(「頑張ったからおこづかいをあげるよ」,「ごほうびをあげるね」の2項目)の4因子を抽出した。各因子に含まれる項目の平均評定値を算出し尺度得点とした(α係数は順にα=.83,.78,.85,.67)。
ほめの対象項目 15のほめ対象項目について,因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行い,固有値1.0を基準に「1向社会的行動」(「礼儀・思いやり(挨拶など)」,「人柄・性格(正直・真面目など)など6項目」,「2課題遂行と努力」(「課題達成」,「努力・がんばったこと」,など6項目,「3内発的行動」(「趣味」,「遊び・ゲーム」,「才能」の3項目)の3因子を抽出した。因子負荷量が.35を下回る項目を除いた各因子に含まれる項目の平均評定値を算出し尺度得点とした(α係数は順にα=.82,.76,.73)。
ほめ言葉が自尊感情に及ぼす効果 ほめ言葉の4因子を説明変数,自尊感情を目的変数としてステップワイズ法による重回帰分析を行った。「高評価」が自尊感情に対して有意な正の影響を及ぼしていた(表1)。高評価を伝えるほめ言葉をよくかけられていた者ほど自尊感情が高いことが示された。
ほめの対象が自尊感情に及ぼす効果 ほめの対象の3因子を説明変数,自尊感情を目的変数として同様の重回帰分析を行った結果,「向社会的行動」が自尊感情に対して有意な正の影響を及ぼしていた(表2)。社会的に望ましい行動や振る舞いをほめられた経験の多い者ほど自尊感情が高いことが示された。同様の重回帰分析を調査対象者の大学ごとに実施したところ,ほめの対象について,B大学では全体の結果と同様に向社会的行動が自尊感情に有意な影響を及ぼしていたが,A大学においては内発的行動から有意な正の影響がみられた。自尊感情の醸成につながるほめの対象は一様ではない可能性が示唆された。