[PC087] 教師の競争に対する指導態度に関する研究(3)
キーワード:競争, 指導態度, 教師
【問題と目的】
榎本(1999)は友人に対する感情として「ライバル意識」の存在を指摘し,友人という親密な対人関係であっても相手に対する競争心が存在することを明らかにした。また,競争的な対人関係であっても,ライバル関係のように「主体的に競争する」関係では,肯定的な対人認知が形成されており(太田, 2006),これは「主体的に競争する」ことで関係形成をより促進する可能性を示唆している。このように,必ずしも競争が否定的な対人感情をもたらすとは限らないのである。
現実に競争を求められる状況は多々存在するが,これらの場面で児童・生徒がその競争に対してどのような態度・行動を示すかについては,教師の競争に対する態度や信念の形成を促す働きかけが与える影響が大きいと考えられる。そこで太田(2012, 2013)は,教師の競争に対する指導態度・指導行動について探索的な検討を行い,勝敗にこだわるのではなく,その過程における動機づけや成長について競争を肯定的にとらえる態度の存在を指摘した。さらに,その指導内容は自身の持つ競争に対する態度を基準に決定されている可能性を示唆した。本研究では,教師の競争心が競争に対する指導内容・態度としてどのように取り入れられているのかに注目して探索的に検討を行うことを目的とする.
【方法】
調査対象 小学校・中学校教員 各100名,計200名を対象とした.平均年齢は45.0歳(SD=8.87),平均教員歴は20.8年(SD=9.42)であった.
調査手続き 専門の業者に依頼しWeb調査にて実施した.モニターとして登録している者に対して業者から調査協力依頼のメールが届き,調査実施に同意した者が調査用のWebサイトにアクセスして回答した.ただし,本調査に入る前にスクリーニング項目が設けてあり,1)小学校または中学校の教員,2)勤務形態が教諭または常勤講師,に該当する者のみが本調査のサイトに誘導され,調査対象となった.
調査内容 1)教師自身が持つ,子どもたちに競争をさせることに対する指導方針や態度について,自由記述を求めた.
2)多面的競争心:太田(2010)で作成された多面的競争心尺度(21項目)を使用した.
【結果と考察】
多面的競争心尺度について,太田(2010)に従って下位尺度得点を算出し,クラスタ分析(Ward法)を用いて3群(手段型競争者,目標型競争者,消極的競争者)に分類した.
競争に対する指導方針・態度12種類に分類し,競争心の類型ごとに集計した(Table1).競争の効果に関する言及において,競争を行うことによる動機づけや相互成長に関する記述が多かったため別項目として分類した. また,競争に対する直接的な指導ではなく,学級の環境 づくりに関する記述も多く,すべての分類で最も多くの教師が記述していた.そして,競争の必要性に関する記述のうち,消極的競争者で必要と明言した教師はいなかった.
手段型競争者,目標型競争者の教師は競争に対する直接的な指導や競争の効果に関する記述が多いが,競争に伴う負の感情に対する配慮に関する記述が見られた.すなわち,ただ競争をさせるのでなく,適切な競争が行えるように配慮する姿勢がうかがえる.
※ 本研究は平成23年度科学研究費(若手研究B; 課題番号23730633)の補助を受けて実施された.
榎本(1999)は友人に対する感情として「ライバル意識」の存在を指摘し,友人という親密な対人関係であっても相手に対する競争心が存在することを明らかにした。また,競争的な対人関係であっても,ライバル関係のように「主体的に競争する」関係では,肯定的な対人認知が形成されており(太田, 2006),これは「主体的に競争する」ことで関係形成をより促進する可能性を示唆している。このように,必ずしも競争が否定的な対人感情をもたらすとは限らないのである。
現実に競争を求められる状況は多々存在するが,これらの場面で児童・生徒がその競争に対してどのような態度・行動を示すかについては,教師の競争に対する態度や信念の形成を促す働きかけが与える影響が大きいと考えられる。そこで太田(2012, 2013)は,教師の競争に対する指導態度・指導行動について探索的な検討を行い,勝敗にこだわるのではなく,その過程における動機づけや成長について競争を肯定的にとらえる態度の存在を指摘した。さらに,その指導内容は自身の持つ競争に対する態度を基準に決定されている可能性を示唆した。本研究では,教師の競争心が競争に対する指導内容・態度としてどのように取り入れられているのかに注目して探索的に検討を行うことを目的とする.
【方法】
調査対象 小学校・中学校教員 各100名,計200名を対象とした.平均年齢は45.0歳(SD=8.87),平均教員歴は20.8年(SD=9.42)であった.
調査手続き 専門の業者に依頼しWeb調査にて実施した.モニターとして登録している者に対して業者から調査協力依頼のメールが届き,調査実施に同意した者が調査用のWebサイトにアクセスして回答した.ただし,本調査に入る前にスクリーニング項目が設けてあり,1)小学校または中学校の教員,2)勤務形態が教諭または常勤講師,に該当する者のみが本調査のサイトに誘導され,調査対象となった.
調査内容 1)教師自身が持つ,子どもたちに競争をさせることに対する指導方針や態度について,自由記述を求めた.
2)多面的競争心:太田(2010)で作成された多面的競争心尺度(21項目)を使用した.
【結果と考察】
多面的競争心尺度について,太田(2010)に従って下位尺度得点を算出し,クラスタ分析(Ward法)を用いて3群(手段型競争者,目標型競争者,消極的競争者)に分類した.
競争に対する指導方針・態度12種類に分類し,競争心の類型ごとに集計した(Table1).競争の効果に関する言及において,競争を行うことによる動機づけや相互成長に関する記述が多かったため別項目として分類した. また,競争に対する直接的な指導ではなく,学級の環境 づくりに関する記述も多く,すべての分類で最も多くの教師が記述していた.そして,競争の必要性に関する記述のうち,消極的競争者で必要と明言した教師はいなかった.
手段型競争者,目標型競争者の教師は競争に対する直接的な指導や競争の効果に関する記述が多いが,競争に伴う負の感情に対する配慮に関する記述が見られた.すなわち,ただ競争をさせるのでなく,適切な競争が行えるように配慮する姿勢がうかがえる.
※ 本研究は平成23年度科学研究費(若手研究B; 課題番号23730633)の補助を受けて実施された.