The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC

(501)

Fri. Nov 7, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 501 (5階)

[PC091] SNSへの態度と批判的思考態度および熟慮性との関係性

平山るみ1, 楠見孝2 (1.大阪音楽大学短期大学部, 2.京都大学)

Keywords:批判的思考, 熟慮性 , SNS

目的
本研究では,SNSへの態度と批判的思考態度および熟慮性の関係性を検討する。
批判的思考(critical thinking)とは,主観にとらわれず物事を客観的かつ多面的・多角的に捉え,規準に基づいて判断する思考である。批判的思考は,メディアリテラシーに関わるといわれている(e.g., 楠見,2011)。メディアには,さまざまな形態が存在するが,近年急速に普及しているもののなかに,インターネットを利用したFacebookやTwitterなどのソーシャルネットワーキングサービス(social networking service;以下,SNS)がある。SNSとは,社会的ネットワークを構築するサービスである。近年の普及に伴い,不適切な投稿や依存などの問題が報告されている。批判的思考は,メディアの情報を読み解くときのみではなく,メディアへの情報発信時や活用においても関わることが考えられる。
方法
参加者 参加者は,私立A音楽大学生56名(男性10名,女性45名,無回答1名,平均年齢19.8歳),私立B大学生109名(男性64名,女性37名,無回答8名,平均年齢20.3歳)であった。このうち,回答に欠損値等の不備があった21名は,分析より除外した。
材料 (1)批判的思考態度尺度 (平山・楠見,2004)の改訂版 「論理的思考の自覚」,「探究心」,「客観性」,「証拠の重視」の4因子各3項目の,合計12項目で構成された。(2)認知的熟慮性-衝動性尺度(滝聞・坂元,1991) ある判断をするのに,より多くの情報を収集し,じっくり考えて慎重に結論を下す人,ある程度の情報で早急に結論を下す人の違いを認知的熟慮性-衝動性として認知傾向を測定するものであり,10項目で構成された。(3) SNS行動尺度 藤・吉田(2009)の作成したインターネット上の行動の具体的内容を分析するインターネット行動尺度の短縮版を使用した。本研究では,インターネットの中でもSNSでの行動に限定して測定するために,質問項目中の「インターネット」という表記を,すべて「SNS」と修正して用いた。「自己表出」(自己演出,自己開示,自己客観視),「他者との関係」(所属感獲得,対人関係拡張,攻撃的言動),「現実とのバランス」(没入関与,依存的関与,非日常的関与)の3つの側面を測定する30項目で構成された。(1)~(3)の各尺度の項目について,「1:あてはまらない」から「5:あてはまる」の5段階で評定させた。
手続き 講義中に質問紙を配布し,参加者ペースで実施した。調査時期は,2013年9月であった。
結果と考察
まず,各尺度の因子ごとに得点を算出し,大学間差を検討してみたところ,いずれの因子にも有意差は見られなかった。したがって,以降は両者を合わせて分析を行う。SNS行動尺度では,対人関係拡張得点が高く,学生はSNSの機能を理解していると考えられる(表1)。
次に,批判的思考態度尺度および熟慮性尺度とSNS態度尺度との相関を算出した(表2)。その結果,批判的思考態度の「探究心」「客観性」は「対人関係拡張」と,「客観性」および熟慮性は「自己客観視」,熟慮性は「所属感獲得」との間に正の相関がみられた。また,「客観性」「証拠の重視」は,「依存的関与」と負の相関がみられた。批判的思考態度や熟慮性が高いものは,SNSのポジティブな面への態度が高く,依存といったネガティブな面への態度は低いことが示された。
表2 批判的思考態度および熟慮性とSNS態度との相関係数 (N=144)
註:本研究は,科学研究費(代表:楠見孝京都大学教授)の補助を受けて行われた。