[PD005] キャリア発達・教育に関する研究(15)
大学生の進路選択における保護者の関わり
Keywords:大学生, 進路選択, 保護者
【問題と目的】
キャリア選択およびその決定は,大学生にとって避けて通ることができない自立へ向けた課題である。しかしながら十数年にわたりキャリア支援の現場にいる筆者は,近年その選択や決定に保護者が少なからぬ影響を与えていると感じている。
本稿では、キャリアの選択にあたり、大学生が自らの生き方や進路選択に対して保護者はどのように関わっていると認知しているのか,それが職業的なアイデンティティの確立とどのように関わるのか,また就職活動そのものに対して保護者がどのように関わっていると認知しているのかについて検討を試みた。進路選択が目前の3年生と選択の最中ないし終了した4年生が対象である。
【方法】
1.対象:T大166名(3年86名,4年80名)
2.調査時期:2013年11月
3.調査内容および測度
1)職業的アイデンティティの様相を明らかにするために下山(1986)および鹿内(2005)を参考に作成した職業未決定 尺度28項目
2)学生自身の生き方や仕事に対する保護者の関わりに関する項目。鹿内(2004)を参考に作成。父親・母親各15項目。 3)就職活動に対する保護者の関わりに関する18項目,以上61項目を「とてもあてはまる」~「全くあてはまら
ない」の4件法で実施。
【結果と考察】
1.職業的アイデンティティ(職業未決定度)
未決定尺度について因子分析を実施した(主因子解,バリマックス回転)結果,「方向性不確定因子」(11項目),「模索因子」(8項目),「先延ばし因子」(5項目)の3因子を抽出した。因子得点を算出し、学年別に検討したところ、「方向性不確定」「模索」の各因子では3年>4年,「先延ばし」因子では3年<4年であった。総じて就職活動に取り組む前の3年生の未決定度が高かった。また4年のみ,「内定後活動終了」「内定後活動継続」「未内定」の3群間における職業未決定度との関連を検討したところ,「未内定」群の職業未決定度が3因子のいずれにおいても有意に高かった。なお職
業未決定度に関して性差は見られなかった。
2.保護者の態度とその認知
父親・母親いずれも,「職業人社会人としてのモデル」機能と,「学生の人生や進路選択へ修正を求める」機能をもつことが明らかとなった。
3.就職活動中の保護者と学生本人との関わり
就職活動中の保護者の関わりついては因子分析(主因子解,バリマックス回転)の結果,「就職活動に対する干渉」と「支援・助言」の2因子を抽出した。因子別に学年間の相違を検討したところ,干渉因子では学年間で有意差はなかったが, 支援因子に関しては、3年>4年であり,これから就職活動に取り組む3年生は保護者の支援を期待していることが推測され る。性差は見られなかった。
4.職業未決定度と保護者との関わり認知
父親との関連は見られず,「方向性不確定」「模索」「先延ばし」傾向が高い学生ほど、母親との関係を「不満や干渉が 多い」と認知している。
5.職業未決定度と就職活動中の保護者の関わり
この要因には学年間に相違が存在した。
キャリア選択およびその決定は,大学生にとって避けて通ることができない自立へ向けた課題である。しかしながら十数年にわたりキャリア支援の現場にいる筆者は,近年その選択や決定に保護者が少なからぬ影響を与えていると感じている。
本稿では、キャリアの選択にあたり、大学生が自らの生き方や進路選択に対して保護者はどのように関わっていると認知しているのか,それが職業的なアイデンティティの確立とどのように関わるのか,また就職活動そのものに対して保護者がどのように関わっていると認知しているのかについて検討を試みた。進路選択が目前の3年生と選択の最中ないし終了した4年生が対象である。
【方法】
1.対象:T大166名(3年86名,4年80名)
2.調査時期:2013年11月
3.調査内容および測度
1)職業的アイデンティティの様相を明らかにするために下山(1986)および鹿内(2005)を参考に作成した職業未決定 尺度28項目
2)学生自身の生き方や仕事に対する保護者の関わりに関する項目。鹿内(2004)を参考に作成。父親・母親各15項目。 3)就職活動に対する保護者の関わりに関する18項目,以上61項目を「とてもあてはまる」~「全くあてはまら
ない」の4件法で実施。
【結果と考察】
1.職業的アイデンティティ(職業未決定度)
未決定尺度について因子分析を実施した(主因子解,バリマックス回転)結果,「方向性不確定因子」(11項目),「模索因子」(8項目),「先延ばし因子」(5項目)の3因子を抽出した。因子得点を算出し、学年別に検討したところ、「方向性不確定」「模索」の各因子では3年>4年,「先延ばし」因子では3年<4年であった。総じて就職活動に取り組む前の3年生の未決定度が高かった。また4年のみ,「内定後活動終了」「内定後活動継続」「未内定」の3群間における職業未決定度との関連を検討したところ,「未内定」群の職業未決定度が3因子のいずれにおいても有意に高かった。なお職
業未決定度に関して性差は見られなかった。
2.保護者の態度とその認知
父親・母親いずれも,「職業人社会人としてのモデル」機能と,「学生の人生や進路選択へ修正を求める」機能をもつことが明らかとなった。
3.就職活動中の保護者と学生本人との関わり
就職活動中の保護者の関わりついては因子分析(主因子解,バリマックス回転)の結果,「就職活動に対する干渉」と「支援・助言」の2因子を抽出した。因子別に学年間の相違を検討したところ,干渉因子では学年間で有意差はなかったが, 支援因子に関しては、3年>4年であり,これから就職活動に取り組む3年生は保護者の支援を期待していることが推測され る。性差は見られなかった。
4.職業未決定度と保護者との関わり認知
父親との関連は見られず,「方向性不確定」「模索」「先延ばし」傾向が高い学生ほど、母親との関係を「不満や干渉が 多い」と認知している。
5.職業未決定度と就職活動中の保護者の関わり
この要因には学年間に相違が存在した。