日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PD

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PD011] インターネットを介した出会いを求める心理的過程

出会いに対する態度に着目して

藤桂1, 西村多久磨2, 村上達也1 (1.筑波大学, 2.東京大学大学院・日本学術振興会)

キーワード:インターネット, 出会い, 孤独感

問題と目的
青少年における情報通信機器の普及は著しく,高校生のスマートフォン所有率は今や84.5%にものぼる(情報通信政策研究所,2014)。またその多くは,LINEやTwitter,FacebookなどのSNSを用い,広く交流している(総務省,2014)。しかし一方で,コミュニティサイトでの交流に起因する犯罪被害の増加も指摘され(警察庁,2014),ネットを介して面識のない者同士が出会うことによるトラブルが問題視されている。
この問題に対しNishimura, Murakami, & Fuji(2014)は,ネットを介した出会いに対する態度について検討し,“危険性”“仮想性”“利便性”“規範性”という4つの認知的側面と,“出会いへの興味”という感情的側面を見出した。また,実際に出会った経験のある者は“出会いへの興味”が高いこと,出会ったことのない者は“危険性”“規範性”が高いことを示した。すなわち,ネットを介した出会い行動は,それに対する態度によって規定されていることを明らかにした。そして,出会いによるトラブルや被害を未然に防止する上で,これらの態度へのアプローチが重要であることを示唆している。本研究では第一に,この結果に基づきさらに検討を深め,どのような心理的過程を経て青少年が出会い行動に至るかを分析する。
また花井・小口(2005)は,青少年の出会い系サイト利用の背景には,現実生活における孤独感が介在している可能性を指摘している。そこで本研究では第二に,ネットを介した出会いを求める心理の背景要因として,現実生活における対人関係にも着目し,どのような影響を及ぼしているかを併せて検討する。
方 法
調査対象 Web調査会社ネオ・マーケティングが保有する高校生・大学生モニターを対象にWeb調査を行い,高校生400名(男性200名,女性200名;平均17.02歳),大学生400名(男性200名,女性200名;平均21.28歳)の回答を得た(2014年1月)。
質問紙の構成 (1)インターネットを介した出会い経験の有無,(2)出会う前に使用していたインターネット上のサービス(複数回答可),(3)インターネットを介した出会いに対する態度を測定する項目(Nishimura et al., 2014;15項目,4件法),(4)インターネット上でのコミュニケーション内容,(5)インターネットを介した出会い行動(例:ネットを介して知り合った相手と1対1で遊んだ,恋愛関係になったなど),(6)現実生活における孤独感(Hughes et al., 2004;3項目, 5件法)および対人ストレス(橋本,1997;24項目,5件法)など。
結果と考察
まず,インターネットを介した出会い行動の経験率を確認したところ,高校生では11.5%が,大学生では13.0%が経験していることが示された。
続いて“現実生活の対人関係→インターネットを介した出会いに対する態度(認知・感情)→出会い行動”というモデルを想定し,共分散構造分析により検討した。その結果(Fig. 1),現実生活における孤独感および対人ストレスは,出会いに対する危険性の認知を抑制し,同時に仮想性や利便性の認知を促進しつつ出会いへの興味を増大させ,最終的に出会い行動を促進していた。一方,規範性の認知は,出会いへの興味および出会い行動を抑制することも示された。