日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PD

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PD013] いじり・からかい・いじめの差異について(2)

行動的特徴に関する分析

吉澤英里1, 望月正哉2, 澤海崇文3, 瀧澤純4 (1.環太平洋大学, 2.日本大学, 3.東京大学大学院, 4.ノースアジア大学)

キーワード:いじり, からかい, いじめ

目 的
近年,「いじり」という対人コミュニケーション行動が報告されている(向井,2010)。「いじり」の類似概念として「からかい」があるが,両者の相違については明らかになっておらず,「いじめ」にも「からかい」に含まれる内容が見られている(Cheng et al., 2011)。そこで吉澤他(2013)では自由記述調査により,いじり,からかい,いじめの各概念への探索的検討が行われ,肯定的側面と否定的側面の両方を同時に捉えることで「いじり」と他概念を区別している可能性が示唆された。
本研究では,いじり,からかい,いじめの特徴的評価について質問紙調査を行うことで定量的な比較検討をした。からかい研究において,遂行者と被遂行者の間に認知的評価のズレが有るという指摘から(e.g., Kruger et al., 2006),立場による違いも検討した。なお,調査では感情的特徴についても検討したが,本研究では一般的特徴についてのみ報告する。
方 法
実験参加者と実験計画 東京都にある私立A大学と神奈川県にある私立B大学の学生312名(女性204名,男性106名,性別未記入2名,平均20.02歳,18―30歳)が実験に参加した。実験では,いじり,からかい,いじめの各行動(行動の種類)に関する特徴について評価を求めた(参加者内計画)。また,立場については参加者間計画とし,する側,される側,第三者の3種類のうちいずれかの立場を想像させてから回答させた。
質問紙 いじり,からかい,いじめの各行動の特徴を尋ねる項目を作成した。具体的には,吉澤他(2013)で収集した各行動の特徴を示した自由記述から抽出された語をもとに,いじりの一般的特徴と感情的特徴を尋ねる34項目を作成した。からかい,いじめについても同様の項目を作成したが,行動の種類にあわせた表現(e.g.,“からかう側は,からかわれる側に悪意をもっている”)に変更した。以上の各項目について7件法(非常にあてはまらない―非常にあてはまる)で回答させた。各行動を尋ねる順序はカウンターバランスをとった。
手続き 実験は2013年12月と2014年1月に実施した。各条件の質問紙の冊子をランダムに配布し,配布が終わった時点で回答に関する説明を行い,回答の提出をもって実験への参加を示す旨を教示した。回答は各自のペースに任せ,15分から30分を要した。
結果と考察
項目ごとに想像する立場(する側・される側・第三者)×行動の種類(いじり・からかい・いじめ)の分散分析を行った。その結果,「長期的に行われる(Q18)」で交互作用が,「する側は,される側に悪意を持っている(Q5)」,「周囲の人は,される側への悪意を持っている(Q6)」,「する側は,される側をバカにしている(Q7)」「周囲の人は,される側をバカにしている(Q8)」,「短期的に行われる(Q19)」,「好意を持って行われる(Q23)」で行動の種類の主効果が,Q19で立場の主効果がみられた(Table 1)。結果から,される側に悪意を持つ程度,される側をバカにする程度,好意を持って行われる程度については想像する立場にかかわらず,行動の種類によって特徴的評価が異なることが示唆された。一方,行われる期間については想定する立場によって特徴的評価に違いがみられた。
Table 1 立場×行動の種類の分散分析結果

引用文献
Cheng, Y.-Y., Chen, L.-M., Ho, H.-C., & Cheng, C.-L. (2011). Definitions of school bullying in Taiwan: A comparison of multiple perspectives. School Psychology International, 32, 227-243.
Kruger, J., Gordon, C. L., & Kuban, J. (2006). Intentions in teasing: When “just kidding” just isn’t good enough. Journal of Personality and Social Psychology, 90, 412?425.
向井学 (2010). 「いじめの社会理論」の射程と変容するコミュニケーション KG/GP 社会学批評, No.3, 3-10.
吉澤英里・瀧澤純・望月正哉・澤海崇文 (2013). いじり・からかい・いじめの差異について―自由記述データの分析に基づく考察― 日本教育心理学会第55回総会発表論文集 178.