[PD014] 大学生の就職活動に対する非機能的認知の探索的検討
大学生の就職活動非機能的認知の尺度開発
キーワード:大学生, 就職活動, 非機能的認知
目 的
昨今の日本経済の低迷や産業構造の変化に伴い、大学生の就職環境は依然として過酷であり、それとともに就職活動(以下、就活とする)ストレスによる精神的健康への悪影響が指摘されている(北見・茂木・森,2009;松田・新井・佐藤,2010)が,その解決あるいは予防について検討する研究は多くない。本研究では,自己分析やエントリーシート作成、会社訪問といった様々な課題に取り組む就活過程で自己疑念や他者認知の偏り、現実認知の歪みが生じ、それらの要因が非機能的に変化することでストレスが増幅し,就活を阻害するのではないかと予想した。こうした認知傾向を「就職活動非機能的認知」と命名し,大学生の就職活動における非機能的認知尺度の作成を試みた。
方 法
予備調査 就職活動経験者15名へのメール調査および就職支援者11名への半構造化面接を通して得られた内容を心理学研究者ともにカテゴリー分類を行い,内容の重複や概念の曖昧な項目を除いた30項目を設定した。
調査1 2012年12月に関東,北陸,中国地方在住の大学生・大学院生および既卒者641名を対象に,属性と6尺度(就職活動非機能的認知,情報活用力,意欲的活動性,就職活動思考制御困難性,積極的困難受容,ストレス反応)について授業時間に一斉法での質問紙調査を行った。
調査2 調査1で得られた就職活動非機能的認知21項目を使用し,2013年7月に就活中の大学生(大学4年生および大学院2年生100名)と,既卒生(30歳以下)を対象に属性と6尺度(就職活動非機能的認知,情報活用力,意欲的活動性,就職活動思考制御困難性,積極的困難受容,ストレス反応)で構成されたWeb調査を行い,18日後に就職活動非機能的認知尺度のみ再調査した。
結 果
探索的因子分析 調査1の因子分析(主因子法,プロマックス回転)の結果,3因子21項目が抽出された。第1因子「他者への過剰期待」は9項目でα=.85, 第2因子「就活へのとらわれ」は8項目でα=.74,第3因子「根拠のない成功期待」は4項目でα=.75となった。因子間相関は,弱い相関が見られた(Table1参照)。
信頼性の検討 調査2の結果,1回目のWeb調査の信頼性係数は,α=.91~.81,2回目の再調査の信頼性係数は,α=.93~.86であり,十分な信頼性が得られた。
考 察
大学生の就活に対する非機能的認知の内容は,a)厳しい就活に向かう自分自身に対して,家族や友人など身近な周囲の援助者はもっと共感し,協力,配慮してくれるべきであるという,周囲に対する過剰な期待感,b)就活においては,内定を勝ち取るためには,企業や採用担当者の気に入るようなパフォーマンスを実現することが重要であり,そのためには就活に対して常に前向きでいなければならないという,就活に対するとらわれ感情,c)必ず自分を気に入ってくれる企業が存在し,内定を勝ち取ったあとも自分に合った仕事に就けるはずであるという就活の結果に対する根拠のない強い期待感情(幻想)の3つで構成されていた。尺度の信頼性は確認できたが,さらに妥当性の検討も必要である。また,今後,就職活動非機能的認知の増大する条件,増大する者の特性との関連,ストレス反応への影響過程など,さらに検討する必要がある。
昨今の日本経済の低迷や産業構造の変化に伴い、大学生の就職環境は依然として過酷であり、それとともに就職活動(以下、就活とする)ストレスによる精神的健康への悪影響が指摘されている(北見・茂木・森,2009;松田・新井・佐藤,2010)が,その解決あるいは予防について検討する研究は多くない。本研究では,自己分析やエントリーシート作成、会社訪問といった様々な課題に取り組む就活過程で自己疑念や他者認知の偏り、現実認知の歪みが生じ、それらの要因が非機能的に変化することでストレスが増幅し,就活を阻害するのではないかと予想した。こうした認知傾向を「就職活動非機能的認知」と命名し,大学生の就職活動における非機能的認知尺度の作成を試みた。
方 法
予備調査 就職活動経験者15名へのメール調査および就職支援者11名への半構造化面接を通して得られた内容を心理学研究者ともにカテゴリー分類を行い,内容の重複や概念の曖昧な項目を除いた30項目を設定した。
調査1 2012年12月に関東,北陸,中国地方在住の大学生・大学院生および既卒者641名を対象に,属性と6尺度(就職活動非機能的認知,情報活用力,意欲的活動性,就職活動思考制御困難性,積極的困難受容,ストレス反応)について授業時間に一斉法での質問紙調査を行った。
調査2 調査1で得られた就職活動非機能的認知21項目を使用し,2013年7月に就活中の大学生(大学4年生および大学院2年生100名)と,既卒生(30歳以下)を対象に属性と6尺度(就職活動非機能的認知,情報活用力,意欲的活動性,就職活動思考制御困難性,積極的困難受容,ストレス反応)で構成されたWeb調査を行い,18日後に就職活動非機能的認知尺度のみ再調査した。
結 果
探索的因子分析 調査1の因子分析(主因子法,プロマックス回転)の結果,3因子21項目が抽出された。第1因子「他者への過剰期待」は9項目でα=.85, 第2因子「就活へのとらわれ」は8項目でα=.74,第3因子「根拠のない成功期待」は4項目でα=.75となった。因子間相関は,弱い相関が見られた(Table1参照)。
信頼性の検討 調査2の結果,1回目のWeb調査の信頼性係数は,α=.91~.81,2回目の再調査の信頼性係数は,α=.93~.86であり,十分な信頼性が得られた。
考 察
大学生の就活に対する非機能的認知の内容は,a)厳しい就活に向かう自分自身に対して,家族や友人など身近な周囲の援助者はもっと共感し,協力,配慮してくれるべきであるという,周囲に対する過剰な期待感,b)就活においては,内定を勝ち取るためには,企業や採用担当者の気に入るようなパフォーマンスを実現することが重要であり,そのためには就活に対して常に前向きでいなければならないという,就活に対するとらわれ感情,c)必ず自分を気に入ってくれる企業が存在し,内定を勝ち取ったあとも自分に合った仕事に就けるはずであるという就活の結果に対する根拠のない強い期待感情(幻想)の3つで構成されていた。尺度の信頼性は確認できたが,さらに妥当性の検討も必要である。また,今後,就職活動非機能的認知の増大する条件,増大する者の特性との関連,ストレス反応への影響過程など,さらに検討する必要がある。