日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PD

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PD017] 友人からの言葉かけが自己効力感に及ぼす効果

友人の親密度に着目して

吉岡真梨子1, 森敏昭2 (1.広島大学大学院, 2.広島大学)

キーワード:親密度, 友人, 言葉かけ

問題と目的
言葉かけに関する研究において,ほめ言葉や叱り言葉は受け手の動機づけや自己効力感に影響を及ぼすことが知られている(青木 2004,竹内 1995 など)。また,言葉の送り手は教師や親から児童・生徒など,立場が違うものが多い(杉森 1999, 石橋 2003 など)。この点について,(青木,2005)は,言葉の送り手を教師に限定せずに実態を捉えることが必要だと述べている。そこで本研究では,言葉の送り手として友人に着目し,自己効力感との関係を検討する。
ところで,友人との関係は教師や親より多様性が高い。従って,親密度を変数として取り入れた。また,絶対的な上下関係がある教師や親に比べて,友人の場合は,言葉かけの内容や場面で自己効力感に及ぼす効果に差がでる可能性がある。
以上より,先行研究で明らかになっている言葉かけの自己効力感への効果が,友人からの言葉かけにおいてもみられるのか,親密度を変数にいれながら検討することを目的とする。
方法
参加者 大学生56名(男性28名,女性28名)。
場面設定 対象者はほめ言葉群28名と叱り言葉群28名に分かれて研究に参加した。各群は,場面(掃除・授業)×親密度(高・低)の4つの場面で,友人から声をかけられる物語を提示した。各物語には,言葉の送り手(親密度の高いAさん or 低いCさん)と受け手(Bさん)が登場する。参加者は,Bさんの気持ちになって,以下に示す質問項目に4回,回答した。
質問項目 自己効力感は,次の尺度で構成した。つまり,成田ら(1995)による特性的自己効力感尺度(5件法),桜井ら(1991)による児童用領域別効力感尺度(5件法),伊藤ら(2003)による自己効力感尺度(5件法)と認知的側面の自己調整学習方略尺度(5件法)である。いずれの場面においてもα係数は.76以上の値を示した。一人あたり4場面を合計すると30項目に回答した。
結果
自己効力感との関係 言葉かけ(ほめ・叱り)×場面(掃除・授業)×親密度(高・低)の3要因分散分析を行なった。その結果,言葉かけの主効果(F =29.219, p<.001)および3次の交互作用(F =7.140, p<.01)が有意であった。親密度が高い友人からの叱り言葉において,場面に有意差がみられ,授業場面では掃除場面に比べ自己効力感得点を下げていた。また,授業場面での叱り言葉において,親密度に有意差がみられ,親密度が高い友人からの叱り言葉は低い友人に比べ自己効力感得点を下げていた。
考察
本研究では,親密度を変数として取り入れ,友人からの言葉かけが及ぼす効果について新たな視点からアプローチをおこなった。
結果から,ほめ言葉においては親密度や場面による,自己効力感への効果には差がないといえる。叱り言葉においては,親密度が高い友人の言葉は低い友人の言葉に比べ,授業場面で自己効力感を下げており,親密度による差がみられる。しかし,掃除場面では親密度による差がない。よって,言葉の受け手にとって,授業場面における親密度の高い友人からの叱り言葉は低い友人からの叱り言葉よりも重要な意味を持っていると考えられるのではないだろうか。
本研究より,自己効力感に友人からの言葉かけの効果がみられることが示された。今後は友人について心理的距離感や友人のタイプなどの詳しい検討も必要であろう。