The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PD

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PD025] 看護学生のコミュニケーション能力における自己評価と他者評価

松本淳子 (長野県看護大学)

Keywords:看護学生, コミュニケーション, 自己評価

看護学生のコミュニケーション能力に関しては,アルバイトやクラブ・サークル活動等の経験が多い学生は,社会的スキルが高いということが明らかになっており(藤野他,2005),生活体験や集団活動体験とコミュニケーション能力との関連も示唆されている(長家,2003)。また,入学後の時間経過とともにコミュニケーション能力が高まることも示されている(有田他,2006; 高見他,2003; 淘江他,2002)。
しかし,これまでの研究ではコミュニケーション能力は自己評価により示されていたが,必ずしも他者評価と一致しないことも予測される。本研究では,グループワークの場面におけるコミュニケーション能力の自己評価と他者評価を測定し,両者が一致しているかどうかを明らかにし,加えて学年による違いについても検討する。
方法
対象者:看護系大学の女子大学生15名(1,2,4年生,各5名)。平均年齢は, 1年生18.60歳(SD=.55),2年生19.80歳(SD=.45),4年生21.40歳(SD=.55)であった。
質問紙:コミュニケーション能力を測るため,井上(1994),榧野(1988),菊池他(1988),長家(2003),淘江他(2002)を参考に,「話し合いのときに,自分の意見を発表できる」等の20項目を用意した。各項目について,「ほとんどあてはまらない」(1点)~「だいたいあてはまる」(5点)の5段階評定を用いて回答を求めた。
手続き:各学年でグループワークを行った。「10年後の世の中に期待することランキング」について,話し合ってもらい,グループワーク終了後,今回のグループワークにおける自分のコミュニケーションについて,評価してもらった。所要時間は,50-60分であった。
また,グループワークの様子は2台のビデオカメラで録画され,異なる大学生3名(女性)が各対象者を評価した。さらに,グループワークから1週間後,普段の話し合いにおける自分のコミュニケーションについて,再び評価してもらった。
結果と考察
コミュニケーション能力の平均値を算出し(Figure1),2(自己・他者評価)×3(学年)の2要因分散分析を行った。その結果,有意な交互作用 [F(2,12)=.26, n.s.],主効果は認められなかった[評価: F(1, 12)=2.37, n.s., 学年: F(2, 12)=1.00, n.s.]。また,グループワーク時と普段の自己評価について同様に分析を行った場合も,有意な交互作用 [F(2,12)=1.71, n.s.],主効果は認められなかった[評価: F(1, 12)=2.98, n.s., 学年: F(2, 12)=.74, n.s.]。
以上より,全体的な評価はあまり高くはなく,自己評価と他者評価も大きく異ならないことが示された。また,設定した場面と普段の話し合いの場面とでも,あまり差異はないと考えられた。したがって,集団の中での話し合いの場合,場面が変わってもコミュニケーションの取り方は大きくは変わらず,他者から見ても同じように評価できるものであることが示唆された。学年に関しては,顔見知りの者同士による簡単な話し合いの場面であることから,特に高いコミュニケーション能力が要求されたわけではないことが関係している可能性が推測された。今後は,相互により高いコミュニケーション能力が求められる場面を設定し,再検討することが必要と考えられる。
本稿は,長野県看護大学卒の山崎由貴子氏の卒業研究の一部を本人の了解のもと,再検討したものである。