[PD028] 大学生が過去に出会った教師の好悪に関する研究
特性形容詞尺度と自尊感情尺度の結果から
Keywords:対人認知, 特性形容詞尺度, 自尊感情
目的 本研究の目的は,特性形容詞尺度(林,1978)と自尊感情尺度(山本・松井・山成,1982)の結果から,大学生が過去に出会った教師の好悪をどのような観点で決定しているか,またそれらに対する自尊感情の影響について検討することにある。
方法 2014年6月に,A県B市にある私立大学の学生85名(男性50名,女性35名)に,過去に出会った「好きな教師」と「嫌いな教師」を思い浮かべてもらい,それぞれに対して20の形容詞対からなる特性形容詞尺度(7件法)と10項目からなる自尊感情尺度(5件法)を実施した。本研究では,「好きな教師」と「嫌いな教師」の学生の観点は異なるものと仮定し,両者を分けて分析することにした。欠損値のあるものを除いた結果,「好きな教師」78名(男性45名,女性33名),「嫌いな教師」73名(男性42名,女性33名)を分析対象とした。
結果と考察 「好きな教師」と「嫌いな教師」の評定については,因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った。因子数は,スクリープロットや因子の解釈可能性を考慮し,それぞれ3因子とした。
「好きな教師」の第1因子は,「沈んだ―うきうきした」「無気力な―意欲的な」などの負荷量が高く「活動的」とした。第2因子は,「生意気でない―生意気な」「気長な―短気な」などの負荷量が高く「寛容」とした。第3因子は,「恥知らずな―恥ずかしがりや」「重厚な―軽薄な」などの負荷量が高く「先生らしくない」とした。
「嫌いな教師」の第1因子は「感じの悪い―感じの良い」「不親切な―親切な」などの負荷量が高く「親近感のない」とした。第2因子は「無気力な―意欲的な」「堂々とした―卑屈な」などの負荷量が高く,「教師としてのやる気がない」とした。第3因子は「重厚な―軽薄な」「沈んだ―うきうきした」などの負荷量が高く「冷静さ」とした。
自尊感情尺度の平均得点は,男性30.09(SD=7.88),女性27.33(SD=7.59)で,全体では28.92(SD=7.87)あった。10項目に対し5件法で回答を求めたので,「どちらともいえない」の3に回答した値に近似している。女性はやや低い。
各因子得点と自尊感情得点との相関係数を求めたものが,表1である。「好きな教師」の第3因子のみ弱い相関が認められた。
そこで,自尊感情尺度得点から36点以上を高自尊感情群,24点以下を低自尊感情群とし,各因子得点の平均値を両群で比較したところ,表2のようになった。それらについてt検定を行ったが,「好きな教師」の第3因子のみ有意差があった(t=2.291, df=31, p<.05)。このことからは,低自尊感情群の学生は「先生らしくない」教師を比較的好み,逆に高自尊感情群の学生は,先生らしい威厳のある教師を好む傾向がみられる。つまり,自尊感情の高い学生は自尊感情が低い学生よりも,ぐいぐい引っ張る少し高圧的な教師に好意を持つと言えるのではないだろうか。
また,因子得点の男性平均と女性平均を求めたところ,「嫌いな教師」の第3因子のみ有意差があった(t=2.413, df=73, p<.05)。このことは,女性は男性よりも「冷静」な教師を嫌う傾向があると言えるのではないだろうか。
方法 2014年6月に,A県B市にある私立大学の学生85名(男性50名,女性35名)に,過去に出会った「好きな教師」と「嫌いな教師」を思い浮かべてもらい,それぞれに対して20の形容詞対からなる特性形容詞尺度(7件法)と10項目からなる自尊感情尺度(5件法)を実施した。本研究では,「好きな教師」と「嫌いな教師」の学生の観点は異なるものと仮定し,両者を分けて分析することにした。欠損値のあるものを除いた結果,「好きな教師」78名(男性45名,女性33名),「嫌いな教師」73名(男性42名,女性33名)を分析対象とした。
結果と考察 「好きな教師」と「嫌いな教師」の評定については,因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った。因子数は,スクリープロットや因子の解釈可能性を考慮し,それぞれ3因子とした。
「好きな教師」の第1因子は,「沈んだ―うきうきした」「無気力な―意欲的な」などの負荷量が高く「活動的」とした。第2因子は,「生意気でない―生意気な」「気長な―短気な」などの負荷量が高く「寛容」とした。第3因子は,「恥知らずな―恥ずかしがりや」「重厚な―軽薄な」などの負荷量が高く「先生らしくない」とした。
「嫌いな教師」の第1因子は「感じの悪い―感じの良い」「不親切な―親切な」などの負荷量が高く「親近感のない」とした。第2因子は「無気力な―意欲的な」「堂々とした―卑屈な」などの負荷量が高く,「教師としてのやる気がない」とした。第3因子は「重厚な―軽薄な」「沈んだ―うきうきした」などの負荷量が高く「冷静さ」とした。
自尊感情尺度の平均得点は,男性30.09(SD=7.88),女性27.33(SD=7.59)で,全体では28.92(SD=7.87)あった。10項目に対し5件法で回答を求めたので,「どちらともいえない」の3に回答した値に近似している。女性はやや低い。
各因子得点と自尊感情得点との相関係数を求めたものが,表1である。「好きな教師」の第3因子のみ弱い相関が認められた。
そこで,自尊感情尺度得点から36点以上を高自尊感情群,24点以下を低自尊感情群とし,各因子得点の平均値を両群で比較したところ,表2のようになった。それらについてt検定を行ったが,「好きな教師」の第3因子のみ有意差があった(t=2.291, df=31, p<.05)。このことからは,低自尊感情群の学生は「先生らしくない」教師を比較的好み,逆に高自尊感情群の学生は,先生らしい威厳のある教師を好む傾向がみられる。つまり,自尊感情の高い学生は自尊感情が低い学生よりも,ぐいぐい引っ張る少し高圧的な教師に好意を持つと言えるのではないだろうか。
また,因子得点の男性平均と女性平均を求めたところ,「嫌いな教師」の第3因子のみ有意差があった(t=2.413, df=73, p<.05)。このことは,女性は男性よりも「冷静」な教師を嫌う傾向があると言えるのではないだろうか。