The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PD

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PD032] 若年不就労者の就労意欲を抑制する要因

自由記述データからの予備的検討

佐柳信男1, 宮崎汐莉1, 中山辰則1, 世古須美日1, 清水明子1 (山梨英和大学)

Keywords:若年不就労者, 就労意欲

問題と目的
近年問題となっている若年層の不就労については,ニートの問題と関連して若者の就労意欲の低下が指摘されている。しかし,若年層の就労意欲に関する体系的な実態調査は行われておらず,このような言説は普遍性のあるデータというよりは主に逸話的な報告によって形成されていると指摘できる。ニート等で不就労を選択する者もいるかも知れないが,一方で,長引く不況の影響で意欲があるにも関わらず就労の機会を得られずにそうなってしまった者もいるであろう。特に日本においては,なんらかの事情で「履歴書に穴が空いた期間」を長く経験している者は就労しようとしても数多くのハードルが存在し,そのような状況では,仮に就労意欲があったとしても折れてしまいやすいと考えることもできる。いずれにしても,不就労者の就労意欲を抑制する要因に関する研究は見あたらない。本研究は若年不就労者が求職活動にあたってどのような困難を感じているのかを明らかにし,それらの困難が就労意欲にどのような影響を与えているのかを検討することを目的とする。
方 法
東北地方A県の県庁所在地にある就業支援NPOに依頼し,質問紙調査票を利用者に配布した。質問内容は①性別と年齢,②最終学歴,③最後に職に就いていた(もしくは就学していた)年月,そして④求職活動に気持ちが向かなくなる理由や状況についての説明を自由記述で求める質問であった。
回答者は32名であった(男性22名,女性10名;平均年齢28.63才,レンジ18-39才,最終学歴 高卒13名,高専卒8名,大卒11名;不就業月数平均31.62ヶ月,レンジ0-187ヶ月)。
求職活動に気持ちが向かなくなる理由や状況に関する回答は,1つの理由もしくは状況の説明が1つの切片になるように抽出し,心理学を専門とする大学専任教員1名と修士課程の大学院生4名でKJ法による分析を行った。

結果と考察
求職活動に気持ちが向かなくなる状況として抽出された切片は,記述のない回答者の分を含めて59個であった。内容が類似した切片をグループにまとめ,KJ法A型に基づきグループ間の相関や因果関係を図解化した(Figure 1)。Figure 1において因果関係が推定されるグループ間は実践の単方向矢印,相関が推定されるグループ間は点線の双方向矢印で表した。
「求職活動に気持ちが向かなくなる状況はあるか」との問いに対し,2名の回答者は「向かないことはない」と答え,2名は記述がなかった。この4名については求職活動への意欲が衰えることがないと判断し,Figure 1の右下のグループにまとめた。右上に記されている「求職活動に気持ちが向かない」は,回答者の記述に基づくグループではないが,「向かないことはない」のグループに分類された回答以外はすべて「向かない状況」について記述しているので,推定される因果関係をより明確にするために追記した。
切片に記述された回数では,「不安」が14回,「自信のなさ」が6回と最も多かった。不安にも様々な理由があり,「自分の能力・資質不足の懸念」「就職活動での評価懸念」「就職後の失敗不安」といったグループにまとまった。これらの不安はすべて「自信のなさ」につながっていると推測された。不安の中でも「能力・資質不足の懸念」に関する記述が最も多く,その中でも「経験のなさ」コミュニケーション・対人関係の不安」「(ブランクの長さによる)自信喪失」「(ブランクの長さによる)面接での気まずさ」という4つのサブグループに切片がまとまった。これらの結果は,特に長期不就労者が求職活動をする際,経験のなさが経歴面だけでなく,心理面にも不利な影響をおよぼしていることを示唆する。
本研究は限られたサンプルでの調査であったが,今後は普遍性を確認した上で,就労意欲の低下を防ぐ取り組みや,不安や自信のなさを補うサポートに関する研究が必要だろう。