[PD038] 大学生の性格傾向や他者意識とバウムテストとの関連
キーワード:バウムテスト, 内的他者意識, 自己効力感
【目的】
バウムテストでは被験者の心のあり方や人格が表現される。幹からは被験者の自我強度や内的衝動の流れ,幹の長さからは衝動性,太さからは主張性が象徴され,根からは現実との接し方,樹冠からは適切な自己評価や人間関係が表われると言われる。 我々の調査結果(斉藤,2013)では,バウムテスト指標とYG性格検査において,「樹冠の高さ」,「木の高さ」と支配性,「成長指標(樹冠の高さ/木の高さ)」とのんきさ,「幹の幅/樹冠の幅」と活動性,思考的外向とに有意な相関があり,「実・根の有無」はYGの活動性,「地平線の有無」は社会性,主観性,神経質と関わりがあることを報告した。精神身体的健康度(GHQ)では「幹の傷」と「一般疾患傾向」,エゴグラムでは「根の有無」とACと関連が示唆された。本調査ではバウムテストとBig Fiveでの性格傾向,自己効力感,他者意識などとの関連について検討を加えた。
【方法】
対象は都内大学生1年~3年の84名,方法は検査・質問紙法を用いた。①バウムテスト(樹冠の高さ,木の高さ,成長指標[樹冠の高さ/木の高さ],幹の幅,樹冠の幅,幹の幅/樹冠の幅,主枝の本数,幹の傷・実・根・地平の有無,バウムのサイズ,線描写の13指標,B5紙を使用),②Big Five性格検査(外向性,神経症傾向,開放性,調和性のなさ,誠実性のなさ),③自己効力感尺度(人格的有能感,自己と人生の受容)④他者意識尺度(内的・外的他者意識),⑤共有経験尺度を用い,統計処理はSPSSを使用して相関分析,クラスタ分析,分散分析を行った。
【結果と考察】
相関分析の結果,バウム指標とBig Five性格検査で有意な相関(p<0.05)が認められたのは,「樹冠の高さ」「主枝の本数」と「開放性」(r=.224,.224),「樹冠の幅」と「外向性」(r=.250),「成長指標(樹冠の高さ/木の高さ)」「幹の幅/樹冠の幅」と「調和性のなさ」(r=.281,.346),であった。バウム指標と自己効力感尺度での有意な相関(p<0.05)は,「樹冠の高さ」,「木の高さ」,「樹冠の幅」と「人格的有能感」で認められた(r=.338,.262,.239)。
つぎに,バウム指標A「樹冠の高さ」,B「木の高さ」,C「幹の幅」,D「樹冠の幅」によるクラスタ分析を行った。高さと幅がともに高い高群,ともに低い低群に分類され(表1),2群間で各尺度得点を比較した。
自己効力感尺度(人格的有能感)と他者意識尺度(内的他者意識),共有体験尺度で有意差(p<0.05)があり,バウム指標の高群>低群であった(図1~図3)。
幹の傷・実・根・地平の有無群,サイズ群,線描写群での各尺度得点比較では有意差はなかった。
大学生の自立性とリジリエンスに関する研究においても,リジリエンス高群ではバウムのサイズは大きく,エネルギーがあり,幹も太く,自我の強さがあることが示唆されている(橋本,2009)。本調査結果では,相関分析において,「樹冠の高さ」が高く,「主枝の本数」の多いことは「開放性」に,「樹冠の幅」の広さは「外向性」に関連し,「幹の幅」が「樹冠の幅」に比較して広く,「成長指標」の高い(樹冠の高さが木の高さに比較して高い)ことは,「調和性のなさ」と関連していた。「樹冠の高さと幅」は開放性や外向性などの性格的ポジィティブ因子と関わり,「幹の幅/樹冠の幅,樹冠の高さ/木の高さ」の比率の大きさは「調和性のなさ」,性格的ネガティブ因子を予測する指標であると考えられた。クラスタ2群間比較の結果から,「樹冠と木の高さ,幹と樹冠の幅」は,自己効力感と対人関係での情緒的感受性と関連があることが示唆された。(SAITO Kazue)
バウムテストでは被験者の心のあり方や人格が表現される。幹からは被験者の自我強度や内的衝動の流れ,幹の長さからは衝動性,太さからは主張性が象徴され,根からは現実との接し方,樹冠からは適切な自己評価や人間関係が表われると言われる。 我々の調査結果(斉藤,2013)では,バウムテスト指標とYG性格検査において,「樹冠の高さ」,「木の高さ」と支配性,「成長指標(樹冠の高さ/木の高さ)」とのんきさ,「幹の幅/樹冠の幅」と活動性,思考的外向とに有意な相関があり,「実・根の有無」はYGの活動性,「地平線の有無」は社会性,主観性,神経質と関わりがあることを報告した。精神身体的健康度(GHQ)では「幹の傷」と「一般疾患傾向」,エゴグラムでは「根の有無」とACと関連が示唆された。本調査ではバウムテストとBig Fiveでの性格傾向,自己効力感,他者意識などとの関連について検討を加えた。
【方法】
対象は都内大学生1年~3年の84名,方法は検査・質問紙法を用いた。①バウムテスト(樹冠の高さ,木の高さ,成長指標[樹冠の高さ/木の高さ],幹の幅,樹冠の幅,幹の幅/樹冠の幅,主枝の本数,幹の傷・実・根・地平の有無,バウムのサイズ,線描写の13指標,B5紙を使用),②Big Five性格検査(外向性,神経症傾向,開放性,調和性のなさ,誠実性のなさ),③自己効力感尺度(人格的有能感,自己と人生の受容)④他者意識尺度(内的・外的他者意識),⑤共有経験尺度を用い,統計処理はSPSSを使用して相関分析,クラスタ分析,分散分析を行った。
【結果と考察】
相関分析の結果,バウム指標とBig Five性格検査で有意な相関(p<0.05)が認められたのは,「樹冠の高さ」「主枝の本数」と「開放性」(r=.224,.224),「樹冠の幅」と「外向性」(r=.250),「成長指標(樹冠の高さ/木の高さ)」「幹の幅/樹冠の幅」と「調和性のなさ」(r=.281,.346),であった。バウム指標と自己効力感尺度での有意な相関(p<0.05)は,「樹冠の高さ」,「木の高さ」,「樹冠の幅」と「人格的有能感」で認められた(r=.338,.262,.239)。
つぎに,バウム指標A「樹冠の高さ」,B「木の高さ」,C「幹の幅」,D「樹冠の幅」によるクラスタ分析を行った。高さと幅がともに高い高群,ともに低い低群に分類され(表1),2群間で各尺度得点を比較した。
自己効力感尺度(人格的有能感)と他者意識尺度(内的他者意識),共有体験尺度で有意差(p<0.05)があり,バウム指標の高群>低群であった(図1~図3)。
幹の傷・実・根・地平の有無群,サイズ群,線描写群での各尺度得点比較では有意差はなかった。
大学生の自立性とリジリエンスに関する研究においても,リジリエンス高群ではバウムのサイズは大きく,エネルギーがあり,幹も太く,自我の強さがあることが示唆されている(橋本,2009)。本調査結果では,相関分析において,「樹冠の高さ」が高く,「主枝の本数」の多いことは「開放性」に,「樹冠の幅」の広さは「外向性」に関連し,「幹の幅」が「樹冠の幅」に比較して広く,「成長指標」の高い(樹冠の高さが木の高さに比較して高い)ことは,「調和性のなさ」と関連していた。「樹冠の高さと幅」は開放性や外向性などの性格的ポジィティブ因子と関わり,「幹の幅/樹冠の幅,樹冠の高さ/木の高さ」の比率の大きさは「調和性のなさ」,性格的ネガティブ因子を予測する指標であると考えられた。クラスタ2群間比較の結果から,「樹冠と木の高さ,幹と樹冠の幅」は,自己効力感と対人関係での情緒的感受性と関連があることが示唆された。(SAITO Kazue)