[PD041] いじめ場面での対処行動についての検討
共感喚起を媒介として
キーワード:共感喚起, 自己中心性, 自己制御
共感を「他者の感情体験に対する感情的反応性」ととらえるDavis(1994)は,他者の苦痛に接した際に起こる反応として,相手の苦痛を軽減したいという他者志向的共感である「共感的関心」と,自分の中に生じた苦痛を軽減したいという自己に向けられる「個人指向共感」があるとしている。
そこで,本研究では,いじめの被害場面に立ち合った際の上記共感に何が影響しているか,さらに,最終的にどのように対処するかを検討することを目的とした。
【方法】
調査協力者(学生222名:男性81名,女性143名:平均19.63歳)に対して,知り合いでない人がいじめられているとの話を聞く(場面A),自身は知らなかったのだが知り合いがいじめられているとの話を聞く(場面B),知り合いがいじめられているのを知っているがかばえば自分がいじめられそうである(場面C),という3場面を想定してもらい,それぞれの場面における自身の反応について回答するよう教示した。
自身の反応として用いた尺度は,Davis(1994)の個人指向共感及び共感的関心に相当するものを測定している登張(2005)の並行的感情反応及び他者指向的反応を参考に今回新たに作成した個人指向共感及び他者指向共感,加えて,共感喚起のモードとしてHoffman(1990)が提示した自動的・無意識的に起こるモードと認知的に高度のモードのそれぞれに対応して生じるであろう衝動的対処及び統制的対処,一方,共感を伴わない回避的対処(いずれ対処の項目も今回新たに作成),の5つであった。このほか,調査協力者の特性として,吉津・関口・雨宮(2013)の感情調整尺度のうち再評価項目,原田・吉澤・吉田(2009)の注意の制御,藤野(2013)を修正した自己中心性も測定した。
【結果・考察】
喚起される共感及び対処に関して,場面(3水準),感情制御(3水準),注意の制御(3水準),自己中心性(3水準)の4要因の分散分析を行った。感情制御,注意の制御,自己中心性については,調査協力者の得点から高,中,低の3群に群わけした。
個人指向共感では,場面A,B,Cの順に得点が高くなり,いずれの場面間にも有意差が認められた。
他者指向共感では,場面Aが場面B,Cに比べて有意にその得点が低かった。また,注意の制御の高群は低群よりも有意にその得点が高く,反対に自己中心性の低群は中群や高群よりも有意にその得点が高かった。
衝動的対処については,場面A,C,Bの順に得点が高くなり,いずれの場面間にも有意差が認められた。また,自己中心性の高群は低群や中群よりも有意にその得点が低かった。
統制的対処については,場面と感情調整との間に交互作用が認められた。場面A,B,Cの順に得点が高くなり,感情調整が高い群ほど得点が高くなっているほか,場面Aは場面B,Cに比べて感情調整の群による得点の差が少なかった。また,自己中心性の低群は中群や高群よりも有意にその得点が高かった。
回避的対処については,場面B,C,Aの順に得点が高くなり,いずれの場面間にも有意差が認められた。また,自己中心性が高い群ほど有意に得点が高く,また,感情調整については,低群よりも中群の得点の方が有意に高かった。
加えて,Table1は喚起される共感及び対処の関連を示したものである。場面によって,相関の強さの程度が異なっていることが示されている。
同一個人であっても,場面によって,喚起される共感や対処の程度が異なるほか,個人特性が共感や対処の程度に影響を及ぼすとまとめられよう。
そこで,本研究では,いじめの被害場面に立ち合った際の上記共感に何が影響しているか,さらに,最終的にどのように対処するかを検討することを目的とした。
【方法】
調査協力者(学生222名:男性81名,女性143名:平均19.63歳)に対して,知り合いでない人がいじめられているとの話を聞く(場面A),自身は知らなかったのだが知り合いがいじめられているとの話を聞く(場面B),知り合いがいじめられているのを知っているがかばえば自分がいじめられそうである(場面C),という3場面を想定してもらい,それぞれの場面における自身の反応について回答するよう教示した。
自身の反応として用いた尺度は,Davis(1994)の個人指向共感及び共感的関心に相当するものを測定している登張(2005)の並行的感情反応及び他者指向的反応を参考に今回新たに作成した個人指向共感及び他者指向共感,加えて,共感喚起のモードとしてHoffman(1990)が提示した自動的・無意識的に起こるモードと認知的に高度のモードのそれぞれに対応して生じるであろう衝動的対処及び統制的対処,一方,共感を伴わない回避的対処(いずれ対処の項目も今回新たに作成),の5つであった。このほか,調査協力者の特性として,吉津・関口・雨宮(2013)の感情調整尺度のうち再評価項目,原田・吉澤・吉田(2009)の注意の制御,藤野(2013)を修正した自己中心性も測定した。
【結果・考察】
喚起される共感及び対処に関して,場面(3水準),感情制御(3水準),注意の制御(3水準),自己中心性(3水準)の4要因の分散分析を行った。感情制御,注意の制御,自己中心性については,調査協力者の得点から高,中,低の3群に群わけした。
個人指向共感では,場面A,B,Cの順に得点が高くなり,いずれの場面間にも有意差が認められた。
他者指向共感では,場面Aが場面B,Cに比べて有意にその得点が低かった。また,注意の制御の高群は低群よりも有意にその得点が高く,反対に自己中心性の低群は中群や高群よりも有意にその得点が高かった。
衝動的対処については,場面A,C,Bの順に得点が高くなり,いずれの場面間にも有意差が認められた。また,自己中心性の高群は低群や中群よりも有意にその得点が低かった。
統制的対処については,場面と感情調整との間に交互作用が認められた。場面A,B,Cの順に得点が高くなり,感情調整が高い群ほど得点が高くなっているほか,場面Aは場面B,Cに比べて感情調整の群による得点の差が少なかった。また,自己中心性の低群は中群や高群よりも有意にその得点が高かった。
回避的対処については,場面B,C,Aの順に得点が高くなり,いずれの場面間にも有意差が認められた。また,自己中心性が高い群ほど有意に得点が高く,また,感情調整については,低群よりも中群の得点の方が有意に高かった。
加えて,Table1は喚起される共感及び対処の関連を示したものである。場面によって,相関の強さの程度が異なっていることが示されている。
同一個人であっても,場面によって,喚起される共感や対処の程度が異なるほか,個人特性が共感や対処の程度に影響を及ぼすとまとめられよう。