日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PD

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PD068] 視覚障害等に関連する認知機能の障害に応じた行動支援の在り方

プラニング,同時処理,継時処理の観点での発達障害等を持つ児童生徒の支援

刀禰豊 (岡山東支援学校)

キーワード:特別支援教育, 発達障害, 視覚障害

(はじめに)
視覚障害を持つ児童生徒にとっても,作業学習などの実践は必要であり,事実、多様な指導がなされている。ただ、個々の児童生徒の自立に向けた真の支援がなされているかと言えば、それは個々の事例のよって大きな差があり,多様性を加味した適切な指導になっているとは言い難い現状にある。視覚障害を持つ児童生徒への支援,取り組みも,視覚障害に関する支援学校・支援学級とそれ以外の支援学校・学級で大きな差があることも事実である。しかし、同等に知的領域の支援学校での支援,取り組みが準用されることで起こる弊害は大きい。就労へ向けての態度、あいさつなど,知的領域等での実践を移行させたような指導は時に、不十分な結果や児童生徒の適切な態度、能力を育成するに至らず、指導の困難性を誘発してしまうこともある。従来からの指導の状況を勘案しつつ,進路の向けての多様性のない取り組みに対して,より基本的な社会的自立への方向性をプラニング、同時処理、継時処理といった側面から見直すとともに,視覚的な処理に障害のある児童生徒の補完的な処理の能力も高めることで,有効な視覚的援助に基づいた行動支援の方向性を考えたい。
(考察・検証)
近年のキャリア教育の提唱の中で,知的領域からの実践によって,確実な就労を企図した出口を意識した実践が盛んである。高等部のみの就労に特化した特別支援学校や、教育課程の中での突出した作業学習、一部での長期にわたる校外実習の実施は卒業後の確実な進路への必要な指導であり,それなしに社会的な自立がないかのような方向性を,指導の前面に押し出す傾向がある。しかし,これでは形式的な「習熟」が個の力を高めているといっているだけであり,多様な障害の状況に即応した指導とは言い難い。例えば,視覚に障害を持つ児童生徒に同じルーティーンの繰り返しを意図してパン作りやクッキーづくり等の製菓に関する作業を行わせ、販売まで行わせるとしても、個々の児童生徒が視覚の障害を補完するためにどのような方法を使い,どのように用具等を使わせるか個々に詳細な検討のもとに行われるのであればそれは,ある意味価値のあることかもしれないが,現実は知的領域の実践を応用した形式的な作業への習熟,すなわち「製菓のクッキーづくり,粉を混ぜることができる」などといった評価しかなされていない。これらは,発達障害等も併せ持つ児童生徒に対して,個々の作業に取り組む際の発見,気づき,意欲などを外圧的に与えて身に付くという考えであり,まさに「指導する必要があるから」という観点での活動でしかない。
近年、DN-CAS等の検査では,プラニング,同時処理,継時処理などといった観点で個々の行動を評価、支援する方向性も見えてきている。多様な作業への取り組みは,時間的な長さに比例して強化されるのではなく,基本的なプラニング,同時処理,継時処理などの生活上の対応能力の向上からも育成されるのであり,その意味で多様な活動が保障され実践されるべきである。視覚的な援助は見せればいいのではなく,視覚によって適切に把握し、認識されるところまでを保障して初めて完結する。言葉の代わりの視覚的な刺激ではなく,認知のきっかけとして視覚が機能していると考えるほうが現実的である。
視覚障害児童生徒は多様な視覚的な情報の欠如,欠損の状況にあり,それを補完するのが「触れ」「感じ」「聞く」等のデバイスでの理解が行われている。これらは、理解の度合いにかかわらず「見えている」からといって,視覚的援助が多用される発達障害等の児童生徒へも有効な手立てとして応用されていくべきである。
(おわりに)
多様な行動における処理を,適切に指導,援助していくうえで個々の実態を明確に把握するなど考慮すべき面は多いが、少なくともどのように見えているか把握が困難な発達障害児童・生徒含めても明確で合理的な視覚面での支援について検討することは個に応じて考慮される必要があると考えられる。