The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PD

(501)

Sat. Nov 8, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 501 (5階)

[PD074] 思春期の思考の発達が自己の発達パターンに与える影響

批判的思考態度と自尊心の関係を中心に

加藤弘通1, 太田正義2, 松下真実子3, 三井由里4 (1.北海道大学, 2.常葉大学, 3.静岡大学附属島田中学校, 4.静岡大学附属浜松中学校)

Keywords:批判的思考態度, 自尊心, 縦断研究

問題
思春期における自尊心の低下は,日本に限らず多くの国で指摘されていることである。これには思考の発達が関係していると多くの研究が指摘している。しかし,加藤他(2013)が中学生に行った横断的な研究では,思考の発達と自尊心の間にはむしろ正の相関が見られ,従来の理論的予想から導かれる仮説とは逆の関係が見られた。そこで本研究では,縦断研究を行うことで,思考の発達が中長期的に自尊心の発達パターンに影響するのか,またどのように影響するのかということについて検討することとした。
方法
(1)調査協力者:国立中学校2校の生徒1年生~3年生699名のうち1年間全3回分の調査データが揃っている者663名を分析の対象とした。協力者の内訳は,1年生213名(男子99名,女子114名),2年生227名(男子109名,女子118名),3年生223名(男子105名,女子118名)であった。
(2)調査内容:①自尊心:Rosenberg(1965)を参考に, 5項目を使用し,「あてはまらない(1点)」から「あてはまる(5点)」までの5件法で回答を求めた。②批判的思考態度:平山・楠見(2004)の批判的思考態度尺度を参考に, 12項目を抽出した。「あてはまらない(1点)」から「あてはまる(5点)」までの5件法で回答を求めた。
(3)調査時期:201X年4月~201X+1年2月。各学期(5月,10月,2月)に計3回調査を実施した。
結果と考察
(1)批判的思考態度の構造:批判的思考態度尺度12項目に対し,因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行った結果,客観的態度と論理的思考への自覚(以下論理的思考)の2因子が抽出された。
(2)批判的思考態度と自尊心の発達パターン:批判的思考態度が,自尊心の発達パターンの推移にどのように関連しているのかを検討するために,潜在曲線モデルによる分析を行った。分析は1年生~3年生の学年ごとに,説明変数に,批判的思考態度の「客観的態度」因子,「論理的思考への自覚」因子を投入し行った(Table 1)。
1年生に関しては,論理的思考が自尊心の傾きに対して有意なパスを示していた。つまり,論理的思考の発達の程度が高い者ほど,自尊心が低下する傾向にあることが分かる。また2年生に関しては,客観的態度が,自尊心の傾きに対して有意なパスを示していた。つまり,客観的態度の発達の程度が高い者ほど,自尊心が低下する傾向にあることが分かる。最後に3年生に関しては,モデルが棄却された。
以上から,1年間というタイムスパンで見たとき,1・2年生では批判的思考の発達が,自尊心を低下させる方向に作用するということが分かった