[PD084] 小学生のいじめ場面における罪悪感と共感性の関連
キーワード:いじめ場面, 罪悪感, 共感性
目 的
いじめは,依然憂慮すべき今日的状況のなか,わが国の喫緊の課題となっている。そこで,本調査では,小学生を対象として,いじめ場面の行動を加害,傍観および観衆に分類し,それらの行動から喚起された罪悪感と共感性との関連について検討することを目的とした。
方 法
調査対象者
小学校4年生214名(男子103名,女子111名),小学校6年生247名(男子127名,女子120名)の計461名。
測定内容
(1)罪悪感の測定
いじめ場面の罪悪感を測定するため,小学校現場の先生方と検討を重ね,4つのいじめ場面(殴る,悪口,仲間はずれ,およびメールでの悪口)を設定した。4つのいじめ場面において,いじめ行動をしてしまった際に,あやまりたい気持ちになるかを用いて,罪悪感を測定した。いじめ行動とは,加害,傍観および観衆であり,質問項目例は以下の通りである。
例 いじめ場面「殴る」
ある日,クラスのお友だちAくんたちが,あなたと日ごろ仲良くしているお友だちBくんをなぐっていました。
問.あなたは,Aくんたちがとった行動について,どれくらいあやまりたい気持ちになりますか。
a. あなたは,Aくんたちといっしょに,Bくんをなぐってしまいました。(加害)
b. あなたは,そのとき近くにて,AくんたちがBくんをなぐっているのを見てみぬふりをしてしまいました。(傍観)
C.あなた,そのとき近くにいて,AくんたちがBくんをなぐっているのを,おもしろがってしまいました。(観衆)
なお,評定は「あやまりたい気持ちにならない」(1点)~「あやまりたい気持ちになる」(4点)の4段階で実施した。
(2)共感性の測定
長谷川・堀内・鈴木・佐渡・坂元(2009)が作成し児童用共感性尺度を用いた。質問項目は30項目,下位尺度は視点取得(PT),共感的関心(EC),個人的苦痛(PD)およびファンタジー(FS)であった。評定は「いいえ」(1点)~「はい」(4点)の4段階で実施した。
結 果
いじめ場面の罪悪感と共感性
いじめ場面における罪悪感得点について学年,性別に平均値と標準偏差を算出した。加害,傍観および観衆行動による罪悪感得点について,それぞれ学年,性別を被験者間要因,いじめ場面を被験者内要因とする3要因分散分析を行った。その結果,すべての行動による罪悪感において,学年と性別の主効果が認められ,小学校4年生が6年生よりも,また女子が男子よりも罪悪感を感じやすいことが明らかになった。また,場面の主効果が認められ,多重比較の結果,他の場面に比べ殴る場面において,すべての行動による罪悪感が最も高かった(p <.05)。さらに,加害行動による罪悪感は,殴る場面,メールでの悪口,悪口の場面,仲間はずれの場面の順で高いことが明らかになった(p <.05)。
いじめ場面の罪悪感と共感性の関連
いじめ場面の罪悪感と共感性の関連を検討するため,学年と性別に相関係数を算出した。その結果,加害,傍観および観衆行動による罪悪感は視点取得(PT)と共感的関心(EC)との間に,有意な正の相関が認められた。また6年生男子において,加害,傍観および観衆行動による罪悪感はファンタジー(FS)と有意な正の相関を示した。
考 察
本調査の結果より,いじめ場面で喚起される罪悪感は小学校4年生が6年生よりも高く,女子が男子よりも高いことが明らかになった。また,いじめ場面については,小学生は殴る場面において罪悪感を最も強く感じることが明らかになった。さらに,いじめ場面の行動による罪悪感と共感性が関連していることが示された。これにより,小学生の共感性を育成することは,いじめ場面における罪悪感を高めることができ,いじめ行動の抑制につながると考えられよう。
本調査は,平成25年~27年度科学研究費補助金(若手研究 (B) 課題番号:25870106 研究代表者:石川隆行)の助成を受けて実施されたものである。
いじめは,依然憂慮すべき今日的状況のなか,わが国の喫緊の課題となっている。そこで,本調査では,小学生を対象として,いじめ場面の行動を加害,傍観および観衆に分類し,それらの行動から喚起された罪悪感と共感性との関連について検討することを目的とした。
方 法
調査対象者
小学校4年生214名(男子103名,女子111名),小学校6年生247名(男子127名,女子120名)の計461名。
測定内容
(1)罪悪感の測定
いじめ場面の罪悪感を測定するため,小学校現場の先生方と検討を重ね,4つのいじめ場面(殴る,悪口,仲間はずれ,およびメールでの悪口)を設定した。4つのいじめ場面において,いじめ行動をしてしまった際に,あやまりたい気持ちになるかを用いて,罪悪感を測定した。いじめ行動とは,加害,傍観および観衆であり,質問項目例は以下の通りである。
例 いじめ場面「殴る」
ある日,クラスのお友だちAくんたちが,あなたと日ごろ仲良くしているお友だちBくんをなぐっていました。
問.あなたは,Aくんたちがとった行動について,どれくらいあやまりたい気持ちになりますか。
a. あなたは,Aくんたちといっしょに,Bくんをなぐってしまいました。(加害)
b. あなたは,そのとき近くにて,AくんたちがBくんをなぐっているのを見てみぬふりをしてしまいました。(傍観)
C.あなた,そのとき近くにいて,AくんたちがBくんをなぐっているのを,おもしろがってしまいました。(観衆)
なお,評定は「あやまりたい気持ちにならない」(1点)~「あやまりたい気持ちになる」(4点)の4段階で実施した。
(2)共感性の測定
長谷川・堀内・鈴木・佐渡・坂元(2009)が作成し児童用共感性尺度を用いた。質問項目は30項目,下位尺度は視点取得(PT),共感的関心(EC),個人的苦痛(PD)およびファンタジー(FS)であった。評定は「いいえ」(1点)~「はい」(4点)の4段階で実施した。
結 果
いじめ場面の罪悪感と共感性
いじめ場面における罪悪感得点について学年,性別に平均値と標準偏差を算出した。加害,傍観および観衆行動による罪悪感得点について,それぞれ学年,性別を被験者間要因,いじめ場面を被験者内要因とする3要因分散分析を行った。その結果,すべての行動による罪悪感において,学年と性別の主効果が認められ,小学校4年生が6年生よりも,また女子が男子よりも罪悪感を感じやすいことが明らかになった。また,場面の主効果が認められ,多重比較の結果,他の場面に比べ殴る場面において,すべての行動による罪悪感が最も高かった(p <.05)。さらに,加害行動による罪悪感は,殴る場面,メールでの悪口,悪口の場面,仲間はずれの場面の順で高いことが明らかになった(p <.05)。
いじめ場面の罪悪感と共感性の関連
いじめ場面の罪悪感と共感性の関連を検討するため,学年と性別に相関係数を算出した。その結果,加害,傍観および観衆行動による罪悪感は視点取得(PT)と共感的関心(EC)との間に,有意な正の相関が認められた。また6年生男子において,加害,傍観および観衆行動による罪悪感はファンタジー(FS)と有意な正の相関を示した。
考 察
本調査の結果より,いじめ場面で喚起される罪悪感は小学校4年生が6年生よりも高く,女子が男子よりも高いことが明らかになった。また,いじめ場面については,小学生は殴る場面において罪悪感を最も強く感じることが明らかになった。さらに,いじめ場面の行動による罪悪感と共感性が関連していることが示された。これにより,小学生の共感性を育成することは,いじめ場面における罪悪感を高めることができ,いじめ行動の抑制につながると考えられよう。
本調査は,平成25年~27年度科学研究費補助金(若手研究 (B) 課題番号:25870106 研究代表者:石川隆行)の助成を受けて実施されたものである。