[PD085] 新設四年制大学における学生生活とキャリア発達およびメンタルヘルスとの関連(3)
Keywords:キャリア発達, メンタルヘルス, 新設大学
【問題と目的】
高澤・播磨(2013)では新設大学における創設1期生である大学2年生を対象として,上級生というモデルがいない状況における大学生の学業や大学生活への意識およびメンタルヘルスの問題と,キャリアに関する意識や行動の発達との関連について検討した。その結果,新設大学であることが大学の充実度にマイナスと考える学生が1年時より増加し,キャリア発達やアイデンティティ発達においてネガティブにとらえる傾向がみられた。
本研究では新設大学の1期生における3年目の調査から,学生生活への充実とメンタルヘルスの問題と,キャリアに関する意識や行動の発達との関連を検討することを目的とする。
【方法】
調査協力者: 中国地方の新設四年制大学に所属する1期生にあたる3年生149名であった(男48名,女101名)。平均年齢は20.8歳,標準偏差は0.56であった。
調査法: 質問紙調査で2013年11月から12月に実施した。
質問紙: 調査用紙は性別,年齢,居住形態,出身地域とともに大学選択理由,新設大学であることの大学選択への影響,新設大学であることの現在の学生生活への影響,新設大学であることの今後の進路への影響を尋ねる項目,加えてキャリア探索尺度(安達, 2008)(5件法),多次元自我同一性尺度(谷, 2001)(7件法),青年用適応感尺度(大久保, 2005)(5件法)他から構成された。
【結果と考察】
新設大学であることが大学生活の充実度に影響しているかについて「プラス」と答えた者が27名(18.1%),「影響なし」が67名(45.0%),「マイナス」が55名(36.9%)であり,プラスにもマイナスにも影響していることが示されており,2年生のときよりも「影響なし」と回答した学生の割合が多くなった。
次に大学生活の充実度への影響を独立変数として,キャリア探索やアイデンティティ,適応感の各尺度との関連を一元配置分散分析で検討した。
キャリア探索尺度との関連では,環境探索因子,自己探索因子いずれにおいても有意差がみられなかった。また,適応感においても有意差がみられなかった。
アイデンティティとの関連では,対自的同一性において,プラスと考える者や影響なしと考える者がマイナスと考える者よりも有意に高く(F(2,146)=4.81, p<.05),心理社会的同一性ではプラスと考える者がマイナスと考える者よりも有意に高かった(F(2,146)=3.68, p<.05)(表1)。
また,日常生活スキルとの関連では,親和性において影響なしと考える者がマイナスと考える者よりも有意に高く(F(2,146)=3.41, p<.05),リーダーシップ(F(2,146)=4.73, p<.01)と情報要約力(F(2,146)=8.30, p<.001)においてはプラスと考える者が影響なしと考えるもの及びマイナスと考える者よりも有意に高かった。そして,計画性(F(2,146)=4.08, p<.05)と自尊心(F(2,146)=7.69, p<.01)においてはプラスと考える者がマイナスと考える者よりも有意に高かった(表2)。
以上の結果から,3年時においても新設大学であることが全体としては否定的にとらえられてはいないといえるが,充実感にマイナスの影響があると考える学生を中心に,キャリア支援や学内における居場所づくりの重要性が示された。
高澤・播磨(2013)では新設大学における創設1期生である大学2年生を対象として,上級生というモデルがいない状況における大学生の学業や大学生活への意識およびメンタルヘルスの問題と,キャリアに関する意識や行動の発達との関連について検討した。その結果,新設大学であることが大学の充実度にマイナスと考える学生が1年時より増加し,キャリア発達やアイデンティティ発達においてネガティブにとらえる傾向がみられた。
本研究では新設大学の1期生における3年目の調査から,学生生活への充実とメンタルヘルスの問題と,キャリアに関する意識や行動の発達との関連を検討することを目的とする。
【方法】
調査協力者: 中国地方の新設四年制大学に所属する1期生にあたる3年生149名であった(男48名,女101名)。平均年齢は20.8歳,標準偏差は0.56であった。
調査法: 質問紙調査で2013年11月から12月に実施した。
質問紙: 調査用紙は性別,年齢,居住形態,出身地域とともに大学選択理由,新設大学であることの大学選択への影響,新設大学であることの現在の学生生活への影響,新設大学であることの今後の進路への影響を尋ねる項目,加えてキャリア探索尺度(安達, 2008)(5件法),多次元自我同一性尺度(谷, 2001)(7件法),青年用適応感尺度(大久保, 2005)(5件法)他から構成された。
【結果と考察】
新設大学であることが大学生活の充実度に影響しているかについて「プラス」と答えた者が27名(18.1%),「影響なし」が67名(45.0%),「マイナス」が55名(36.9%)であり,プラスにもマイナスにも影響していることが示されており,2年生のときよりも「影響なし」と回答した学生の割合が多くなった。
次に大学生活の充実度への影響を独立変数として,キャリア探索やアイデンティティ,適応感の各尺度との関連を一元配置分散分析で検討した。
キャリア探索尺度との関連では,環境探索因子,自己探索因子いずれにおいても有意差がみられなかった。また,適応感においても有意差がみられなかった。
アイデンティティとの関連では,対自的同一性において,プラスと考える者や影響なしと考える者がマイナスと考える者よりも有意に高く(F(2,146)=4.81, p<.05),心理社会的同一性ではプラスと考える者がマイナスと考える者よりも有意に高かった(F(2,146)=3.68, p<.05)(表1)。
また,日常生活スキルとの関連では,親和性において影響なしと考える者がマイナスと考える者よりも有意に高く(F(2,146)=3.41, p<.05),リーダーシップ(F(2,146)=4.73, p<.01)と情報要約力(F(2,146)=8.30, p<.001)においてはプラスと考える者が影響なしと考えるもの及びマイナスと考える者よりも有意に高かった。そして,計画性(F(2,146)=4.08, p<.05)と自尊心(F(2,146)=7.69, p<.01)においてはプラスと考える者がマイナスと考える者よりも有意に高かった(表2)。
以上の結果から,3年時においても新設大学であることが全体としては否定的にとらえられてはいないといえるが,充実感にマイナスの影響があると考える学生を中心に,キャリア支援や学内における居場所づくりの重要性が示された。