[PD086] 新任・若手小学校教師を支える学校のあり方とは
新任・若手教師と周囲のズレに着目して
キーワード:教師発達, 小学校, サポート
問題と目的
ベテラン教師の大量退職に伴い,学校現場では経験年数の浅い教師が増加している。その中で,新任・若手教師をいかに育成していくかは非常に重要なテーマであり,教員養成課程における取り組みや社会人経験のある教員の登用,研修の充実,ベテラン教師や定年退職した教師を指導教員とする指導体制の充実,学校内における若手研修会等,様々な取り組みが行われている。
その一方で,教員採用試験に合格したにも関わらず2年目で正式採用とならなかった人数は年々増加しており,平成24年度には355名となっている(文部科学省,2013)。もっとも割合が高いのは依願退職(348名)であり,その内実は「その他(自己都合)」(206名),次いで「病気」(122名,うち精神疾患106名),最後が「不採用→依願退職」(20名)である。これらの中には1年間教員(条件附採用)として働いたもののやはり性に合わず離職を選んだ人々もいるだろうが,1/3弱は精神疾患が理由であることも考えると,夢をかなえて教員になったにも関わらず何らかの理由で辞めざるを得なかった人々,多大なストレスにさらされた人々も相当数いることが想像される。
そこで,本研究では新任・若手小学校教師が生き生きと仕事をして発達していくために何が必要なのか,検討することを目的とする。新任・若手教師の発達やサポートを検討するにあたっては,教員養成システムや研修についても考える必要があるが,ここでは新任・若手教師が一番長い時間を過ごす学校(所属校)のあり方に焦点を当てることとする。本研究のリサーチクエスチョン(以下RQ)は以下の通りである。
RQ1:新任・若手小学校教師を支える学校のあり方とはどのようなものか。
RQ2:新任・若手教師と周囲の間にはなぜズレが生じるのか。
なお,RQ2は研究を進める上で出てきた問いである。本研究ではRQ2を検討した後,それを埋める可能性としてRQ1について検討を行う。
方法
筆者が今まで行ってきた調査(新任教師9名のインタビューデータ,病休・離職を経験した若手教師2名のインタビューデータ,ベテラン教師2名のインタビューデータ,小学校SC計11名のインタビューデータ)の中から,次のエピソードを抜き出した。1)新任・若手教師が(を)サポートされた(した)エピソード,2)サポートがほしかったが得られなかった(したかったができなかった)エピソード,3)あまり良くは機能しなかったサポートのエピソード,4)病休,休職,離職の際のエピソード(周囲に経験した人がいた場合含む)。エピソードを新任・若手教師側の経験と周囲の経験に分けて配置し,ズレが生じている部分,いない部分について検討を行った。
結果と考察
新任・若手教師側と周囲との間には,大きく分けて「共通理解が持てていないことに起因するズレ」「コミュニケーションにおけるズレ」「行動の解釈におけるズレ」があることが明らかになった。「共通理解が持てていないことに起因するズレ」とは,所属校におけるルールや教師としての職務,校務分掌などいわゆる日常で「当たり前」に共有されていると思われる基準がうまく共有されていないことを意味する。クラスの情報をどこまで伝えるか,休み時間どう過ごすか等かなり細かな事柄も多く,特に新任にとってはそれらの基準が全く分からないまま新学期がスタートし,あれこれ注意されながら少しずつ所属校のルールを覚えていくことが多い。このズレがあまり解消されずに行くと,「コミュニケーションにおけるズレ」(どちらか一方,あるいは互いにコミュニケーションが取れていないと感じたり,取る必要を感じない)「行動の解釈におけるズレ」(互いの行動理由を悪意の方へ解釈してしまう)へと発展していく。その頃には新任・若手教師が孤立無援となったり,「あの人はどう言っても無駄だ」と周囲が諦める状況となり,結果として新任・若手教師の休職・離職や大きなトラブルへとつながりかねないことが明らかになった。
これらを解消するためには,新任・若手側には「全体を見る」姿勢,周囲には「新任・若手の声を尊重する」ことと,学校における基準を明確にして細やかにコミュニケーションをとっていく姿勢,各クラスに任せるだけでなく集団全体としての問題意識と責任感を持つことが必要だと考えられた。
ベテラン教師の大量退職に伴い,学校現場では経験年数の浅い教師が増加している。その中で,新任・若手教師をいかに育成していくかは非常に重要なテーマであり,教員養成課程における取り組みや社会人経験のある教員の登用,研修の充実,ベテラン教師や定年退職した教師を指導教員とする指導体制の充実,学校内における若手研修会等,様々な取り組みが行われている。
その一方で,教員採用試験に合格したにも関わらず2年目で正式採用とならなかった人数は年々増加しており,平成24年度には355名となっている(文部科学省,2013)。もっとも割合が高いのは依願退職(348名)であり,その内実は「その他(自己都合)」(206名),次いで「病気」(122名,うち精神疾患106名),最後が「不採用→依願退職」(20名)である。これらの中には1年間教員(条件附採用)として働いたもののやはり性に合わず離職を選んだ人々もいるだろうが,1/3弱は精神疾患が理由であることも考えると,夢をかなえて教員になったにも関わらず何らかの理由で辞めざるを得なかった人々,多大なストレスにさらされた人々も相当数いることが想像される。
そこで,本研究では新任・若手小学校教師が生き生きと仕事をして発達していくために何が必要なのか,検討することを目的とする。新任・若手教師の発達やサポートを検討するにあたっては,教員養成システムや研修についても考える必要があるが,ここでは新任・若手教師が一番長い時間を過ごす学校(所属校)のあり方に焦点を当てることとする。本研究のリサーチクエスチョン(以下RQ)は以下の通りである。
RQ1:新任・若手小学校教師を支える学校のあり方とはどのようなものか。
RQ2:新任・若手教師と周囲の間にはなぜズレが生じるのか。
なお,RQ2は研究を進める上で出てきた問いである。本研究ではRQ2を検討した後,それを埋める可能性としてRQ1について検討を行う。
方法
筆者が今まで行ってきた調査(新任教師9名のインタビューデータ,病休・離職を経験した若手教師2名のインタビューデータ,ベテラン教師2名のインタビューデータ,小学校SC計11名のインタビューデータ)の中から,次のエピソードを抜き出した。1)新任・若手教師が(を)サポートされた(した)エピソード,2)サポートがほしかったが得られなかった(したかったができなかった)エピソード,3)あまり良くは機能しなかったサポートのエピソード,4)病休,休職,離職の際のエピソード(周囲に経験した人がいた場合含む)。エピソードを新任・若手教師側の経験と周囲の経験に分けて配置し,ズレが生じている部分,いない部分について検討を行った。
結果と考察
新任・若手教師側と周囲との間には,大きく分けて「共通理解が持てていないことに起因するズレ」「コミュニケーションにおけるズレ」「行動の解釈におけるズレ」があることが明らかになった。「共通理解が持てていないことに起因するズレ」とは,所属校におけるルールや教師としての職務,校務分掌などいわゆる日常で「当たり前」に共有されていると思われる基準がうまく共有されていないことを意味する。クラスの情報をどこまで伝えるか,休み時間どう過ごすか等かなり細かな事柄も多く,特に新任にとってはそれらの基準が全く分からないまま新学期がスタートし,あれこれ注意されながら少しずつ所属校のルールを覚えていくことが多い。このズレがあまり解消されずに行くと,「コミュニケーションにおけるズレ」(どちらか一方,あるいは互いにコミュニケーションが取れていないと感じたり,取る必要を感じない)「行動の解釈におけるズレ」(互いの行動理由を悪意の方へ解釈してしまう)へと発展していく。その頃には新任・若手教師が孤立無援となったり,「あの人はどう言っても無駄だ」と周囲が諦める状況となり,結果として新任・若手教師の休職・離職や大きなトラブルへとつながりかねないことが明らかになった。
これらを解消するためには,新任・若手側には「全体を見る」姿勢,周囲には「新任・若手の声を尊重する」ことと,学校における基準を明確にして細やかにコミュニケーションをとっていく姿勢,各クラスに任せるだけでなく集団全体としての問題意識と責任感を持つことが必要だと考えられた。