日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PD

(501)

2014年11月8日(土) 10:00 〜 12:00 501 (5階)

[PD089] 震災映像の視聴時間と母親の養育行動が児童のストレスに及ぼす影響

福田佳織 (東洋学園大学)

キーワード:映像, 養育行動, ストレス

【問題と目的】 子どもは大人に比べてテレビの映像から影響を受け易いといわれる(近江, 2010)。2011年3月11日に発生した東日本大震災においては,発生から1週間,連日ほぼ全テレビ番組で非常に衝撃的な被災の様子が報道された。果たして,こうした被災映像は直接的に被災していない(家屋の倒壊や身近な人の喪失を体験していないという意味で)子どもたちにどのような影響をもたらすのであろうか。また,身近な安全基地となる母親の養育行動がこれらの映像による子どものストレスにどう関与しているのだろうか。本研究では,この2点について検討する。
【方法】 調査対象は南関東圏内に在住の児童62名とその母親44名(小学校在学のきょうだいが複数いるケースがあるため,児童と母親の数が一致しないが,母子のペアは全て揃っている)。アンケート用紙は,母親用:①対象児の属性;年齢・性別・出生順位,②被災時の状況;直接的な被災の有無等,③対象児の震災映像視聴時間;震災から1週間における1日平均の対象児の震災映像視聴時間。③母親の養育態度;PPI(桂田,2005)に菅原ら(2002)の過保護的養育行動を追加した18項目,児童用:対象児のストレス;小学生用ストレス反応尺度(SRS-C) (嶋田ら, 1994) 20項目。
【結果】
1.各変数の概要
①年齢;平均値8.34歳(SD;1.38,range6~12)。②性別;男児36名,女児26名。③出生順位;第1子34名,第2子24名,第3子3名,第4子1名。④震災~1週間の1日平均の被災映像視聴時間;全く見ていない1名(1.6%),30分未満8名(12.9%),1時間未満16名(25.8%),2時間未満20名(32.3%),3時間未満2名(3.2%),4時間未満3名(4.8%),5時間未満7名(11.3%),6時間未満0名(0%),6時間以上5名(8.1%)。⑤母親の養育行動;主因子法(バリマックス回転)で抽出された3因子(Ⅰ過干渉,Ⅱ厳格,Ⅲ親和)を使用(α=.634~.790)。⑥児童のストレス;嶋田ら(1994)で抽出されている4因子(Ⅰ身体的反応,Ⅱ抑うつ・不安,Ⅲ不機嫌・怒り,Ⅳ無気力)を使用(α=.738~.857)。
2.震災映像時間と母親の養育行動が児童のストレスに及ぼす影響
震災映像視聴2時間未満を短群,2時間以上を長群,母親の養育行動の各因子の平均値未満を低群,以上を高群とした。そして,視聴時間と母親の養育行動を独立変数,児童のストレスを従属変数とする一元配置の分散分析を行った。結果,児童の「抑うつ・不安」および「無気力」において,視聴時間と母親の「親和」的養育行動との交互作用が見られた(それぞれ,F=10.37, p<.01;F=4.36, p<.05)。単純主効果の分析から,両ストレスとも,視聴時間が短い群では母親の養育行動の効果は見られないものの,視聴が長い群では,母親の親和的養育が高いほどストレスが低くなった。