The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PD

(501)

Sat. Nov 8, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 501 (5階)

[PD090] 数式表記と数操作の発達 (2)

5, 6歳児における演算記号の理解

山形恭子1, 古池若葉2 (1.京都ノートルダム女子大学, 2.京都女子大学)

Keywords:数式表記, 演算記号, 5~6歳

【目的】インフォーマル算数研究では数式表記に
関する詳細な検討がなされていない。そこで本研
究では5,6歳における数式表記の発達過程と計
算能力ならびに数関連課題との関連性を明らかに
する。数表記は4歳代に一層の進展が見られるが
(山形・古池,2013),その後に計算能力の発達に
ともなって数式表記が可能になると考えられる。
筆者らはすでに数式表記の発達を計算能力・数関
連課題との関連の下に検討しているが(山形・古
池,2014),本稿では新たに作成した数式記号選択
課題を用いて数式における演算記号の理解を検討
し,その発達過程と数式表記ならびに計算能力・
数関連課題の関係を分析する。
【方法】調査参加児:5歳児20名(平均年齢5歳
6ヵ月,男女児各10名)と6歳児20名(6歳6
ヵ月,男女児各10名)の保育園児,合計40名。
課題:演算記号の理解を調べるために数式記号選
択課題を作成した。本課題では加算・減算の数式
がカードに記されているが,その場合に演算記号
の2箇所が空白になっており,どの記号がそこに
入るのかを尋ねた。解答時には選択カード5枚
(+・-・×・÷・=・記号)を示し,その中か
ら該当するものを選択するように求めた。面接者
は「熊さんがどのように書いたらよいのか知らな
いので,教えてあげて下さい」と教示を与え,数
式を口頭で述べて5枚のカードをランダムに示し,
選択するように求めた。数式では解答が10未満
(~9)と10以上(10~)になる各2題を設け,
加算と減算あわせて合計4種類の問題を課した。
この課題以外に数表記課題・数理解課題・計算
課題・数式表記課題も課した。数表記課題では数
字の書字と読字を与えた。書字課題では0~9まで
の数字,10台(10~)の4数字,20台(20~)の
2数字をそれぞれランダムに書くように求めた。
読字課題では書字課題と同じ数字をランダムに与
えて読むように求めた。数理解課題ではK式発達
検査の数選び(基数)(積木をカップに入れる)課
題とK-ABC検査の6歳児用問題から多少判断課
題と順序数課題を選んだ。計算課題は文章題の加
算・減算問題を与えた。その際に解答の数の大小
によって難易度が異なると推定されたために解答
が5以下(~4),5から9(5~9),10以上(10~)
の3種類の問題を各2種類作成し,合計加算・減
算各6問題を課した。数式表記課題では上記の加
算計算問題の第1・第2問において正答した加算
問題1題を課し,調査者がその文章題を答えも含
めて述べて,それを書くように求めた。
手続き:個別面接調査。書字課題ではB4紙とマ
ーカーを用意し,調査者がランダムに述べる数字
を書くように求めた。読字課題ではカードに記し
た数字をランダム示して読字を求めた。次いで数
選び(基数)・多少判断・順序数の課題を,さらに
加算・減算計算問題と数式表記課題を課した。
【結果】1.数式記号選択課題 各数式では2つ
の解答を求めたが,正答に各1点を与えて結果を
分析した。Fig.1に結果を示す。分散分析の結果
では加算と減算の間に有意差が見られ,加算が減
算よりも有意に正答数が多かった(F=11.550,p
< .01)。また,解答の種類別(+,-,=)の正
答数の結果をTable 1に示す。Tableから演算記
号による正答数に差が見られなかった。

2.数式表記課題 数式を書いた人数%は5歳0%,
6歳15%であり,5,6歳児では数式をほとんど
書けなかった。その他に数式の答えのみを書く・
演算記号なしの数字の列記などが見られた。
3.課題間の関連性 年齢を統制した偏相関の結
果は記号選択課題加算と記号選択課題減算の間,
計算問題加算10~の間に (r= .389と.406),ま
た, 記号選択課題減算と計算問題減算10~との
間に有意な相関がえられた(r= .337)。
【考察】5,6歳児は演算記号・数式を理解して
いないことが示された。また,偏相関の結果は10
~の計算問題ができる場合に加算と減算で記号選
択課題との間に有意な関連性が見られた。この結
果は10~の数を扱う計算能力の達成が数式表記
の理解と関連することを示唆している。

Fig.1 数式記号選択課題における正答数
(本研究は科研基盤研究(C)の助成を受けた)