[PD097] 青年期における過去の親子関係と恋愛依存との関連性
共分散構造分析から
キーワード:青年期, 愛着, 恋愛依存
[目 的]
大学生以降の青年の恋愛は,交際する中で親密な関係が築かれ,それが自分自身の活力や心の支えとなる(伊福・徳田,2008)。しかし恋愛は,異性に過度に依存し,相手に自分の自我が取り込まれるような関係を作る場合もある。Danne Kily(1983;1984)は,このような依存的な恋愛関係を,「ピーター・パン・シンドローム」や「ウェンディ・ジレンマ」という概念を使って説明し,そのような依存関係に陥る要因として,「過去のネガティブな親子関係」「不安定な成人愛着スタイル」「自己愛傾向」を指摘している。また,過去の親子関係は,現在の「成人の愛着スタイル」や「自己愛傾向」に影響を与えている研究が多く見られる(宮下・村山,1996;中村,2004)。本研究では,青年期のアイデンティティ獲得に関連すると考えられる「友人関係」についても,恋愛依存との関連性を仮定し,「過去の親子関係」を出発点として,「愛着スタイル」・「自己愛傾向」・「友人関係」が青年期の恋愛依存にどう関連しているかを検討した。
[方 法]
調査参加者と調査期間 東京都内の大学に通う大学生234名(男性104名,女性130名)であり,有効回答数は227名(男性99名,女性128名)であった。平均年齢は20.4歳(SD=1.6)であった。2011年6月中旬から7月下旬にかけて実施した。
質問項目 以下の尺度について,5件法による回答を求めた。(1)恋愛依存傾向尺度(伊福・徳田,2006),(2)親子関係尺度(東・柏木他,2002)より「被拒絶感」「心理的侵入」の下位尺度(父母別に回答を求めた),(3)愛着スタイル尺度(戸田,1988),(4)自己愛傾向尺度(上地・宮下,2009)より「自己顕示抑制」「自己緩和不全」「潜在的特権意識」「承認・賞賛過敏性」の下位尺度,(5)友人関係尺度(岡田,1995)より「気遣い」「ふれあい回避」「群れ」の下位尺度。
[結果と考察]
因子分析の結果,恋愛依存尺度については「心理的支え」因子,「恋人優先」因子,「独占欲求」因子,愛着スタイル尺度については 「安定」因子,「アンビバレント」因子,「回避」因子,過去の母親との関係尺度については 「拒絶」因子,「介入」因子,過去の父親との関係尺度については 「拒絶」因子,「介入」因子,自己愛傾向尺度については 「自己顕示抑制」因子,「他者依存」因子,「特権意識」因子,「承認過敏性」因子,友人関係尺度については,「群れ」因子,「気遣い」因子の因子が抽出された。また,因子分析で抽出された各因子について,共分散構造分析を行った結果,「過去のネガティブな親子関係」より「不安定な愛着スタイル」または「自己愛傾向」が形成され,「恋愛依存」に至るという2つのモデルを描くことができた(図1参照)。
以上の結果から,過去のネガティブな親子関係から不安定な愛着スタイルが形成され,恋愛依存に至ることや,過去のネガティブな親子関係から過度な自己愛が形成され,恋愛依存に至ることが検証された。親子関係は幼いころから長期間続くものであり,変化を遂げる面もある。また,青年期の恋愛は,現在の人間関係状況に則した要因と考えられるので,現在の恋愛依存傾向には直接は強い影響を与えず,現在の不安定な愛着スタイルや自己愛傾向といった対人関係パターンを経由して影響を受けるのではないかと考えられた。一方,「過去のネガティブな親子関係」が「友人関係」と関連し恋愛依存に至るモデルは描くことができなかった。重回帰分析をしてみると,友人関係尺度のうち「気遣い」因子が,恋愛依存の複数の因子と関連していた。この青年の友人との関係の取り方は,友人との出会いや出会った相手がどんな人かといった偶然の外的要因(環境)によっても左右されることがあるためとも解釈された。
大学生以降の青年の恋愛は,交際する中で親密な関係が築かれ,それが自分自身の活力や心の支えとなる(伊福・徳田,2008)。しかし恋愛は,異性に過度に依存し,相手に自分の自我が取り込まれるような関係を作る場合もある。Danne Kily(1983;1984)は,このような依存的な恋愛関係を,「ピーター・パン・シンドローム」や「ウェンディ・ジレンマ」という概念を使って説明し,そのような依存関係に陥る要因として,「過去のネガティブな親子関係」「不安定な成人愛着スタイル」「自己愛傾向」を指摘している。また,過去の親子関係は,現在の「成人の愛着スタイル」や「自己愛傾向」に影響を与えている研究が多く見られる(宮下・村山,1996;中村,2004)。本研究では,青年期のアイデンティティ獲得に関連すると考えられる「友人関係」についても,恋愛依存との関連性を仮定し,「過去の親子関係」を出発点として,「愛着スタイル」・「自己愛傾向」・「友人関係」が青年期の恋愛依存にどう関連しているかを検討した。
[方 法]
調査参加者と調査期間 東京都内の大学に通う大学生234名(男性104名,女性130名)であり,有効回答数は227名(男性99名,女性128名)であった。平均年齢は20.4歳(SD=1.6)であった。2011年6月中旬から7月下旬にかけて実施した。
質問項目 以下の尺度について,5件法による回答を求めた。(1)恋愛依存傾向尺度(伊福・徳田,2006),(2)親子関係尺度(東・柏木他,2002)より「被拒絶感」「心理的侵入」の下位尺度(父母別に回答を求めた),(3)愛着スタイル尺度(戸田,1988),(4)自己愛傾向尺度(上地・宮下,2009)より「自己顕示抑制」「自己緩和不全」「潜在的特権意識」「承認・賞賛過敏性」の下位尺度,(5)友人関係尺度(岡田,1995)より「気遣い」「ふれあい回避」「群れ」の下位尺度。
[結果と考察]
因子分析の結果,恋愛依存尺度については「心理的支え」因子,「恋人優先」因子,「独占欲求」因子,愛着スタイル尺度については 「安定」因子,「アンビバレント」因子,「回避」因子,過去の母親との関係尺度については 「拒絶」因子,「介入」因子,過去の父親との関係尺度については 「拒絶」因子,「介入」因子,自己愛傾向尺度については 「自己顕示抑制」因子,「他者依存」因子,「特権意識」因子,「承認過敏性」因子,友人関係尺度については,「群れ」因子,「気遣い」因子の因子が抽出された。また,因子分析で抽出された各因子について,共分散構造分析を行った結果,「過去のネガティブな親子関係」より「不安定な愛着スタイル」または「自己愛傾向」が形成され,「恋愛依存」に至るという2つのモデルを描くことができた(図1参照)。
以上の結果から,過去のネガティブな親子関係から不安定な愛着スタイルが形成され,恋愛依存に至ることや,過去のネガティブな親子関係から過度な自己愛が形成され,恋愛依存に至ることが検証された。親子関係は幼いころから長期間続くものであり,変化を遂げる面もある。また,青年期の恋愛は,現在の人間関係状況に則した要因と考えられるので,現在の恋愛依存傾向には直接は強い影響を与えず,現在の不安定な愛着スタイルや自己愛傾向といった対人関係パターンを経由して影響を受けるのではないかと考えられた。一方,「過去のネガティブな親子関係」が「友人関係」と関連し恋愛依存に至るモデルは描くことができなかった。重回帰分析をしてみると,友人関係尺度のうち「気遣い」因子が,恋愛依存の複数の因子と関連していた。この青年の友人との関係の取り方は,友人との出会いや出会った相手がどんな人かといった偶然の外的要因(環境)によっても左右されることがあるためとも解釈された。