[PE006] クラス会議が学級のルールとリレーションの確立に与える影響について
キーワード:クラス会議, Q-U
Ⅰ.問題と目的
学級が教育力のある集団になるためには,ルールの確立とリレーションの確立が必要条件である(河村・藤村・粕谷・武蔵,2004)。
お互いを大切にする雰囲気や問題があったら自分たちで解決しようという気持ち等を育てる実践として「クラス会議」の実践が提唱されている(赤坂,2008;諸富,森重,2010)。
クラス会議の効果に関する研究では,クラス会議が問題解決的な思考を促すことが指摘されている(山崎・栗原,2010)。しかし,クラス会議が学級のルールやリレーションの確立に及ぼす影響についてはまだ研究されていない。
そこで,本研究では,クラス会議を実践することで,学級のルールやリレーションが確立されるのかを実践的に確かめることとした。
Ⅱ.方法
対象学級:岡山県の公立小学校の3年生27名。
調査方法
(1)学級生活満足度の測定について
学級のルールやリレーションがどのように変化するかを調べるため,6月,12月に学級生活満足度(Q-U)を実施した。Q-Uは「やる気のあるクラスにするためのアンケート」として,学級の雰囲気の認知,学級内の級友関係の認知,学習意欲の3つの質問内容,「いごこちのよいクラスにするためのアンケート」として,侵害行為の認知,友達からの承認の2つの質問内容から構成されている(河村,2004)。
(2)クラス会議について
「クラス会議」とは,毎日短時間(10~30分),クラス全員での話し合いをすること(諸富・森重,2010)。本実践では,9月上旬から12月中旬まで,1週間に一回程度の割合で,主に学級活動の時間を使って実践した。クラス会議にはいくつかの方法があるが,週1回の実践ということで,赤坂(2008)のクラス会議の手順を参考に,子どもが自主的に投稿した議題について,時間内に全員が意見を述べ,その意見の中から議題提案者が納得した解決方法を選ぶという展開で行われた。
Ⅲ.結果
6月と12月の平均値を比較すると,侵害行為認知得点で12月が有意に低くなり,学級雰囲気では12月が高くなる有意傾向が見られた(Table 1)。
Table 1 Q-Uの下位項目の6月・12月の比較
Ⅳ.考察
以上の結果より,クラス会議を実践することで,友達から傷つけられる等の侵害行為を受けたと認知しにくくなり,学級が協力的であるという雰囲気を認知する傾向が高まるということが分かった。このことから,クラス会議には,人間関係上のルールと友達とのリレーションを確立するという効果があるものと考えられる。
本研究の課題として,一群事前事後テストデザインで行われており,内的妥当性が低い研究デザインで行われている点が挙げられる。今後,より内的妥当性の高い研究を行う必要がある。
Ⅴ.引用文献
赤坂真二(2008) “荒れ”への「予防」と「治療」のコツ -学級づくりの基礎・基本- 日本標準 p68-82
河村茂雄・藤村一夫・粕谷貴志・武蔵由佳(2004) Q-Uによる学級経営スーパーバイズ・ガイド 図書文化 p42-44
諸富祥彦・森重裕二(2010) クラス会議で学級は変わる! 明治図書 p11-22
山崎茜・栗原慎二(2010) クラス会議が問題解決能力に及ぼす効果-HKISでの実践を例として- 学校教育実践学研究,16,37-44
学級が教育力のある集団になるためには,ルールの確立とリレーションの確立が必要条件である(河村・藤村・粕谷・武蔵,2004)。
お互いを大切にする雰囲気や問題があったら自分たちで解決しようという気持ち等を育てる実践として「クラス会議」の実践が提唱されている(赤坂,2008;諸富,森重,2010)。
クラス会議の効果に関する研究では,クラス会議が問題解決的な思考を促すことが指摘されている(山崎・栗原,2010)。しかし,クラス会議が学級のルールやリレーションの確立に及ぼす影響についてはまだ研究されていない。
そこで,本研究では,クラス会議を実践することで,学級のルールやリレーションが確立されるのかを実践的に確かめることとした。
Ⅱ.方法
対象学級:岡山県の公立小学校の3年生27名。
調査方法
(1)学級生活満足度の測定について
学級のルールやリレーションがどのように変化するかを調べるため,6月,12月に学級生活満足度(Q-U)を実施した。Q-Uは「やる気のあるクラスにするためのアンケート」として,学級の雰囲気の認知,学級内の級友関係の認知,学習意欲の3つの質問内容,「いごこちのよいクラスにするためのアンケート」として,侵害行為の認知,友達からの承認の2つの質問内容から構成されている(河村,2004)。
(2)クラス会議について
「クラス会議」とは,毎日短時間(10~30分),クラス全員での話し合いをすること(諸富・森重,2010)。本実践では,9月上旬から12月中旬まで,1週間に一回程度の割合で,主に学級活動の時間を使って実践した。クラス会議にはいくつかの方法があるが,週1回の実践ということで,赤坂(2008)のクラス会議の手順を参考に,子どもが自主的に投稿した議題について,時間内に全員が意見を述べ,その意見の中から議題提案者が納得した解決方法を選ぶという展開で行われた。
Ⅲ.結果
6月と12月の平均値を比較すると,侵害行為認知得点で12月が有意に低くなり,学級雰囲気では12月が高くなる有意傾向が見られた(Table 1)。
Table 1 Q-Uの下位項目の6月・12月の比較
Ⅳ.考察
以上の結果より,クラス会議を実践することで,友達から傷つけられる等の侵害行為を受けたと認知しにくくなり,学級が協力的であるという雰囲気を認知する傾向が高まるということが分かった。このことから,クラス会議には,人間関係上のルールと友達とのリレーションを確立するという効果があるものと考えられる。
本研究の課題として,一群事前事後テストデザインで行われており,内的妥当性が低い研究デザインで行われている点が挙げられる。今後,より内的妥当性の高い研究を行う必要がある。
Ⅴ.引用文献
赤坂真二(2008) “荒れ”への「予防」と「治療」のコツ -学級づくりの基礎・基本- 日本標準 p68-82
河村茂雄・藤村一夫・粕谷貴志・武蔵由佳(2004) Q-Uによる学級経営スーパーバイズ・ガイド 図書文化 p42-44
諸富祥彦・森重裕二(2010) クラス会議で学級は変わる! 明治図書 p11-22
山崎茜・栗原慎二(2010) クラス会議が問題解決能力に及ぼす効果-HKISでの実践を例として- 学校教育実践学研究,16,37-44