日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PE

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 13:30 〜 15:30 5階ラウンジ (5階)

[PE007] 医療系大学生における教員からの注意指導に対する感情的・認知的・行動的反応

佐藤純1, 福井龍太1, 中村勇1 (茨城県立医療大学)

キーワード:大学生, 注意指導, 教員

【問題】 教育現場において,教員は生徒や学生に対して「ほめる」・「注意する・叱る」などの指導を繰り返し行っている。これまで,注意指導行為とその効果に関する研究は,主に児童を対象になされてきた。しかしながら,教育期間が長くなり青年期においても教育や指導が重要となってきているにもかかわらず,青年期を対象とした注意指導の研究はほとんどなされていない。また,医療系大学における実習指導等においては,患者を相手にすることもあり,注意指導がより多くなされると考えられる。そこで,本研究では医療系大学の教育場面における注意指導行為の状況を明らかにし,注意指導行為に対する学生の反応を調べることを目的とする。
研究1
【目的】医療系大学の教育現場における教員・指導者から注意指導された場面およびその時の言葉・態度を収集することを目的とする。
【方法】
調査対象 医療系大学3年生25名(男7名,女18名)。
調査内容 大学入学後に教員・指導者から注意指導された経験を1つ想起させた上で,次の4点について自由記述での回答を求めた。①その場面,②その際の言葉,③その際の態度・様子, ④学生自身の反応。
【結果と考察】
(1)注意指導経験の有無
25名中22名(男性8名,女性14名)が,注意指導を受けた経験があったと回答した。
(2)注意指導を受けた場面
合計23の回答(複数回答含)があり,最も多かった場面が「不適切な行動」(13件),次いで「目標未達成」(3件),「提出物の遅れ」(2件),(理由のある遅刻)(2件),その他(3件)であった。
(3)注意指導の際の言葉
合計25の回答(複数回答含)があり,多かった順に「望ましい行為の要求」(12件),「望ましくない理由の説明」(7件),「問いただし」(3件),「権威的脅し」(1件),その他(2件)であった。
研究2
【目的】仮想の注意指導場面を作成し,仮想場面における学生の感情的・認知的・行動的反応について検討することを目的とする。
【方法】
調査対象 医療系大学1・2年生71名(男13名,女58名)。
調査内容 研究1の結果に基づき,ストーリー提示部分と回答部分から成る質問紙を作成した。[ストーリー提示部分]各場面の状況を説明する「説明部分」と,教員の注意指導を表現する「注意指導部分」から構成される。想定される場面は,研究1の結果を参考に「実技実習において初歩的な間違いをした場面」とすることとした。独立変数は注意指導の「言葉」と「態度・口調」。言葉は,「望ましい行為の要求」「問いただし(理由を問う)」「望ましくない理由の説明」「権威的脅し」の4種をシナリオに合わせて考案して用いた。態度・口調は,高脅威を「怒ったような強い口調で言いました」,低脅威を「落ち着いた静かな口調で言いました」とした。
[回答部分]①感情的反応(緊張,抑鬱,怒り,混乱),②認知的反応(自分の非,納得,動機,自信,後悔,感謝),③行動的反応1(謝罪,反抗,無視,理由説明),④行動的反応2(事後変化)(接近行動,接近認知,回避行動,回避認知)。
【結果と考察】
(1)感情的反応について分散分析により平均値の比較をした結果,全変数において,強い口調で注意を受けた際に感情反応がより多く,緊張以外の変数では権威的脅し(脅し)及び問いただしにおいて,望ましい行為の要求(要求)及び望ましくない理由の説明(説明)より感情反応が多かった。
(2)認知的反応については,自分の非及び納得については,要求と説明による注意指導の場合に脅しと問いただしの場合よりも反応が多かった。一方,感謝については,要求と説明による注意指導の方が脅しと問いただしよりも感謝が多く,脅威度の低い態度の場合に感謝が多かった。
(3)注意を受けた場での行動的反応については,脅しによる注意指導は他の言葉よりも謝罪が少なく,反抗と無視が多かった。また,事後変化においても脅しによる注意指導は他の言葉よりもポジティブな行動変化が少ないという結果が示された。