[PE033] 高校出前授業による批判的思考イメージの変化
批判的思考態度と探究学習スキルに及ぼす影響
キーワード:批判的思考, 授業, イメージ
批判的思考は,「批判」という言葉から,攻撃的で非協調的なイメージを与えることがある。本研究では,スーパーサイエンスハイスクール(SSH)における探究学習の一環としておこなった批判的思考に関する出前授業によって,高校生の批判的思考に対するイメージがどのように変化したかを検討する。さらに,日常生活およびレポート執筆における批判的思考態度や科学への効力感に及ぼす短期的,長期的効果を検討する。なお,本研究は,楠見(2011,2012,教心大会)の継続調査であり,1年間にわたる学校設定科目「探究」における学習活動による効果の解明が最終目的である。
方 法
参加者 関西のSSH事業実施6年目の県立進学校1年生424名(男247,女177)名。11月の出前授業時に全員を対象とした質問紙調査を実施した。あわせて,事前(1学期の5月)と事後(3学期の3月)にも調査を実施した。
手続き 批判的思考の目的と方法に関して,以下のワークシートに回答させながら,著者が講師として大教室で55分の授業をおこなった。
質問項目 ワークシート(a)批判的思考のイメージは,SD両極尺度(8項目7段階:論理的-非論理的,攻撃的な-非攻撃的な)の評定を授業の冒頭と最後に求めた。(b)生徒用批判的思考態度尺度(12項目,平山・楠見,2004の改訂版)と批判的議論(家族,友人とできているか2項目),(c)レポート作成における批判的思考態度尺度(9項目,Stapleton,2001):明確な主張(4項目)と客観性な主張を行う態度(4項目)の2つに分けた。(b)と(c)は授業の説明にあわせて,途中で解説をしながら実施した。これらは,5件法であった。
事前事後質問紙 (b)と同じ批判的思考態度尺度。あわせて,(d)批判的学習スキル尺度(10項目,楠見,2011)は授業場面における批判的な学習スキルを,(e)探究的学習スキル尺度(11項目)は「探究」の授業において育成を目指す探究的な学習スキル(例:根拠が明確な参考資料を探す)を今どのくらい身につけているかを5件法(1:身につけていない-5:身につけている)で評定を求めた
結果と考察
批判的思考のイメージ 授業前後の批判的思考についてのSD法平均評定値は,8項目全てで有意な変化が生じていた。授業前の批判的思考における実践的,論理的というイメージは授業後に一層強められた。冷たく,攻撃的で,怖いイメージは弱まり,中点に近づいた。中点よりもわずかに嫌いで,非協調的なイメージは,やや好きで,協調的なイメージに反転した(図1)。
批判的思考のイメージが及ぼす効果 イメージを,論理的イメージ(論理的,実践的,好き)と協調的イメージ(協調的,非攻撃的,優しい,暖かい)に分けて尺度化した。そして,3時点のデータを用いて,共分散構造分析を行った。図2に示すように,授業後の批判的思考の論理的イメージは,批判的思考態度,レポート執筆で明確性や客観性を求める批判的態度,批判的学習スキルに影響を及ぼしていた。一方,協調的イメージは,レポート執筆で明確性を求める批判的態度に弱い影響を及ぼす以外は,影響は小さかった。
方 法
参加者 関西のSSH事業実施6年目の県立進学校1年生424名(男247,女177)名。11月の出前授業時に全員を対象とした質問紙調査を実施した。あわせて,事前(1学期の5月)と事後(3学期の3月)にも調査を実施した。
手続き 批判的思考の目的と方法に関して,以下のワークシートに回答させながら,著者が講師として大教室で55分の授業をおこなった。
質問項目 ワークシート(a)批判的思考のイメージは,SD両極尺度(8項目7段階:論理的-非論理的,攻撃的な-非攻撃的な)の評定を授業の冒頭と最後に求めた。(b)生徒用批判的思考態度尺度(12項目,平山・楠見,2004の改訂版)と批判的議論(家族,友人とできているか2項目),(c)レポート作成における批判的思考態度尺度(9項目,Stapleton,2001):明確な主張(4項目)と客観性な主張を行う態度(4項目)の2つに分けた。(b)と(c)は授業の説明にあわせて,途中で解説をしながら実施した。これらは,5件法であった。
事前事後質問紙 (b)と同じ批判的思考態度尺度。あわせて,(d)批判的学習スキル尺度(10項目,楠見,2011)は授業場面における批判的な学習スキルを,(e)探究的学習スキル尺度(11項目)は「探究」の授業において育成を目指す探究的な学習スキル(例:根拠が明確な参考資料を探す)を今どのくらい身につけているかを5件法(1:身につけていない-5:身につけている)で評定を求めた
結果と考察
批判的思考のイメージ 授業前後の批判的思考についてのSD法平均評定値は,8項目全てで有意な変化が生じていた。授業前の批判的思考における実践的,論理的というイメージは授業後に一層強められた。冷たく,攻撃的で,怖いイメージは弱まり,中点に近づいた。中点よりもわずかに嫌いで,非協調的なイメージは,やや好きで,協調的なイメージに反転した(図1)。
批判的思考のイメージが及ぼす効果 イメージを,論理的イメージ(論理的,実践的,好き)と協調的イメージ(協調的,非攻撃的,優しい,暖かい)に分けて尺度化した。そして,3時点のデータを用いて,共分散構造分析を行った。図2に示すように,授業後の批判的思考の論理的イメージは,批判的思考態度,レポート執筆で明確性や客観性を求める批判的態度,批判的学習スキルに影響を及ぼしていた。一方,協調的イメージは,レポート執筆で明確性を求める批判的態度に弱い影響を及ぼす以外は,影響は小さかった。