日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PE

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 13:30 〜 15:30 5階ラウンジ (5階)

[PE037] 算数グループ学習における相互教授法の介入効果(4)

学習場面における援助提供行動の促進効果

町岳1, 中谷素之2 (1.大田区立東調布第一小学校, 2.名古屋大学大学院)

キーワード:グループ学習, 相互教授法, 援助提供行動

Ⅰ.問題と目的
グループ学習では,成員の学習への参加態度が重要な意味をもつ。例えば成員の侮辱的,支配的な負の社会情緒的行動の頻度は,成績に負の影響を与える(Webb, Nemer, & Zuniga, 2002)反面,学習が分からない友達に,説明や詳細な援助をすることは,両者の成績獲得に関係する(Webb, 1991)可能性が指摘されている。本研究では,協同学習場面における援助提供行動(help-giving behavior)に注目し,相互教授法 (Palincsar & Brown,1984) による介入効果を,援助提供行動の促進という点から検討する。
Ⅱ.研究方法
1.調査対象と時期
都内公立小学校5年生 132名(男子86名,女子46名)を対象に,2013年6月中旬に実施した。
2.効果の測定
(1)学業達成度 グループ学習の振り返りの場面で,学習課題の類題を毎時間1問出題した。
(2)グループ学習に対する肯定的認知 町・中谷(2012)をもとに13項目5件法の尺度を作成し,単元開始前および第1回目のグループ学習後に調査を実施した。
(3)援助提供行動 グループ学習における援助提供行動を測定する4項目で尺度を作成し,3回のグループ学習毎に調査を実施した。また援助提供行動の般化可能性を検討するために,その実行に対する自己効力感を測定する4項目で尺度を作成し,単元前後に調査を実施した。
3.手続き
「小数のわり算」の3時間の授業で,「問題解決の仕方が分からないただしさんに,解き方と理由を説明する」という,協同での課題解決場面(15分)を設定。介入群では,「説明役・質問役(各2人組)を交互に交替し協力して」,対照群では,「自由に」話し合うこととした。介入群ではペアで役割を分担することで,説明や質問の仕方が分からない場合に,援助提供行動が生成されると考えられる。
Ⅲ.結果と考察
1.学業達成度
RT介入によって学習課題テストの結果(正解・不正解)に差があるかを検討するために,各回で2×2のフィッシャーの直接確率計算を行った。その結果,第1回テストでは有意差は認められなかった(p=.1904)ものの,第2・3回(p=.0062; .0003)テストでは,介入群が有意に高かった。
2.グループ学習に対する肯定的認知
因子分析(最尤法・プロマックス回転)の結果,「発話による理解・思考促進因子」(α=.86),「グループ学習への関与・理解因子」(α=.81),各6項目が抽出された。各因子の項目の合計得点を投入し,群×測定時期の2要因分散分析を行ったところ,両因子で交互作用が有意だったので(F(1,125)=7.89, 4.97; それぞれp<.01, p<.05),単純主効果の検定を行った。その結果,両因子とも介入群において授業後の得点が有意に上昇した(F(1,125)=8.14, 4.82; それぞれp<.01,p<.05)。
3.援助提供行動への効果
援助提供行動尺度4項目の合計得点について,群×測定時期の2要因分散分析を行った結果,交互作用(F(2,244)=2.61, n.s.)および回数の主効果(F(2,244)=1.10, n.s.)は有意ではなく,群の主効果は有意(F(1,122)=7.20, p<.01)で,全ての回で介入群の方が高かった。また援助提供行動実行に対する自己効力感尺度4項目の合計得点について,群×測定時期の2要因分散分析を行った結果(Table 1),交互作用が有意(F(1,124)=5.31, p<.05)だったので単純主効果の検定を行ったところ,介入群の得点上昇が示された(F(1,124)=9.39, p<.01)。
以上のことから,ペアで役割分担をする相互教授法により,児童の援助提供行動が促進され,「グループ学習へ関与でき理解が深まった」という受動的な認知だけでなく,「自分の発話によって,友達の理解を深めることができた」という能動的な認知が向上するとともに,援助提供行動が他の学習場面にも般化する可能性が示された。