[PE039] 算数文章題における二量の関係への意識が立式の誤りへの気づきに及ぼす影響
小4児童へのインタビューから
キーワード:算数文章題, 小学生, メタ認知的介入
1.はじめに
算数文章題解決における「統合過程(スキーマ知識をもとに量と量を関係づける過程)」の重要さが知られている。筆者は,「比較」型の加減算文章題において基準量が未知のタイプの文章題が全くできなかった児童を対象に,「○○の方が多い」という二量の関係の命題に気づかせることで解決へと導くことに成功した。そこで本研究では,基準量が未知のタイプの乗除算の文章題においても,二量の関係を意識させるだけで,機械的に計算したとみられる児童が自ら誤りに気づけるかを個別インタビュー調査で調べることを目的とした。
2.方法
(1) 対象・時期・場所
筆者が兼務する小学校4年生2クラス分58名に対し,コンピュータ室における授業の中で,コンピュータ教材を作るための予備調査として平成25年6月にペーパーテストを実施した。そのうち9名に対し,7月と9月に個別インタビューを行った。いずれも1人あたり10分間以内であった。
(2)手続き・分析方法
ペーパーテストは,次の通り問題文のみを印刷して示した。終えたら見直しをするよう教示した。
あめが42個あります。
あめの数はチョコレートの 3倍です。
チョコレートは何個ありますか。
このテストにおいて,「42×3=126」と書いて誤答であった児童を抽出し,個別インタビューした。授業時間等の関係から一方のクラスでの該当者A~Iの9名のみ参加となった。児童の答案を見せながら以下の手続きで行った。やりとりはIC録音機で録音し,最初の質問後,児童からR1~R9の反応が出るまでの時間を5秒単位で測定した。
・児童に問題を音読するよう促す。
・「あめとチョコレートはどちらが多いですか」 と質問し,児童が「あめ」と答える(R1)。誤答(R2)の場合は関係文(「あめの数はチョコレートの3倍です」)を再度音読する(R3)よう促す。
・R2の児童はあめの方が多いと気づいた(R4)後,R1の児童はR1の後すぐ,問題文の下に,「あめの方が多い」という命題を書く(R5)よう促す。
・「あなたの答ではどちらが多くなっていますか」と,R5の命題に照らして自分の書いた答が矛盾していないかの自己モニタリングを促す。
・対象児が自分の答の矛盾に気づいた(R6)後に,「ではどういう式にすればよかったですか」とプランの自己修正を促す。
・児童が正しい立式をし(R7),正しい答を出した(R8)後,「今度の答はこの通りになっていますか」(児童が「はい」と答える(R9))と,R5の命題に照らして最終の答が矛盾していないかの自己モニタリングを促す。
他の児童も含めてペーパーテスト参加者全員に,インタビュー実施後に,問題の解説を行った。
3.結果及び考察
ペーパーテスト参加者58名中,(a)式・答とも正答であった児童は22名(38%),(b)「42×3=126」として誤った児童が26名(45%)おり,他の10名(17%)は(c)無答であった。このうち,「倍」の用語から乗除算を用いる問題と判断できたが誤答した(b)の児童は,自己モニタリングを利用して修正が可能と考え,インタビューを行ったところ,9名全員が,途中経過の時間は異なるものの,300秒以内にR1~R9の過程をこなすことができた(図1)。この児童達は,スキーマ訓練をするまでもないが,「見直しをしなさい」という教示だけでは正答できない段階である。従って,作成中のコンピュータ教材では,このような誤りの児童には,スキーマ訓練ではなく,「○と△ではどちらが多いですか」という質問を投げかけるだけで有効な支援ルートになるのではないかと考えられた。
算数文章題解決における「統合過程(スキーマ知識をもとに量と量を関係づける過程)」の重要さが知られている。筆者は,「比較」型の加減算文章題において基準量が未知のタイプの文章題が全くできなかった児童を対象に,「○○の方が多い」という二量の関係の命題に気づかせることで解決へと導くことに成功した。そこで本研究では,基準量が未知のタイプの乗除算の文章題においても,二量の関係を意識させるだけで,機械的に計算したとみられる児童が自ら誤りに気づけるかを個別インタビュー調査で調べることを目的とした。
2.方法
(1) 対象・時期・場所
筆者が兼務する小学校4年生2クラス分58名に対し,コンピュータ室における授業の中で,コンピュータ教材を作るための予備調査として平成25年6月にペーパーテストを実施した。そのうち9名に対し,7月と9月に個別インタビューを行った。いずれも1人あたり10分間以内であった。
(2)手続き・分析方法
ペーパーテストは,次の通り問題文のみを印刷して示した。終えたら見直しをするよう教示した。
あめが42個あります。
あめの数はチョコレートの 3倍です。
チョコレートは何個ありますか。
このテストにおいて,「42×3=126」と書いて誤答であった児童を抽出し,個別インタビューした。授業時間等の関係から一方のクラスでの該当者A~Iの9名のみ参加となった。児童の答案を見せながら以下の手続きで行った。やりとりはIC録音機で録音し,最初の質問後,児童からR1~R9の反応が出るまでの時間を5秒単位で測定した。
・児童に問題を音読するよう促す。
・「あめとチョコレートはどちらが多いですか」 と質問し,児童が「あめ」と答える(R1)。誤答(R2)の場合は関係文(「あめの数はチョコレートの3倍です」)を再度音読する(R3)よう促す。
・R2の児童はあめの方が多いと気づいた(R4)後,R1の児童はR1の後すぐ,問題文の下に,「あめの方が多い」という命題を書く(R5)よう促す。
・「あなたの答ではどちらが多くなっていますか」と,R5の命題に照らして自分の書いた答が矛盾していないかの自己モニタリングを促す。
・対象児が自分の答の矛盾に気づいた(R6)後に,「ではどういう式にすればよかったですか」とプランの自己修正を促す。
・児童が正しい立式をし(R7),正しい答を出した(R8)後,「今度の答はこの通りになっていますか」(児童が「はい」と答える(R9))と,R5の命題に照らして最終の答が矛盾していないかの自己モニタリングを促す。
他の児童も含めてペーパーテスト参加者全員に,インタビュー実施後に,問題の解説を行った。
3.結果及び考察
ペーパーテスト参加者58名中,(a)式・答とも正答であった児童は22名(38%),(b)「42×3=126」として誤った児童が26名(45%)おり,他の10名(17%)は(c)無答であった。このうち,「倍」の用語から乗除算を用いる問題と判断できたが誤答した(b)の児童は,自己モニタリングを利用して修正が可能と考え,インタビューを行ったところ,9名全員が,途中経過の時間は異なるものの,300秒以内にR1~R9の過程をこなすことができた(図1)。この児童達は,スキーマ訓練をするまでもないが,「見直しをしなさい」という教示だけでは正答できない段階である。従って,作成中のコンピュータ教材では,このような誤りの児童には,スキーマ訓練ではなく,「○と△ではどちらが多いですか」という質問を投げかけるだけで有効な支援ルートになるのではないかと考えられた。