[PE071] 探求力・活用力と授業での経験との関連についての検討
キーワード:探求力, 活用力, 授業
問題と目的
OECD-PISA学力調査等によって,日本の児童・生徒は,複雑化・多様化する世界を生き抜く基礎となる「探究力」や「活用力」に乏しいという問題が示されたことを契機に,近年,「社会を生き抜く力」やそのための「課題探求能力」の育成の機運が高まってきている。平成24年度から実施された学習指導要領では「習得」「活用」「探究」という三つのキーワードによって,「生きる力」の中核をなす思考力・判断力・表現力の育成を図ることが協調されている。
そこで本研究では,学校で受ける知的刺激や授業を通じた経験・体験と探求力・活用との関連を検討する。
方 法
お茶の水女子大学附属中学校・高等学校において,2013年12月~2月に調査を実施した。対象者は中学・高校総計712名。内訳は中学1年111名(男子29名,女子82名),中学2年127名(男子42名,女子84名),中学3年124名(男子37名,女子87名)中学合計362名。 高校1年115名,高校2年115名,高校3年120名(高校は女子のみ)高校合計350名。
調査項目
(1) 情報活用の実践力尺度:高比良ら(2001)24項目。「収集力」「判断力」「表現力」「処理力」「創造力」「発信・伝達力」の6因子からなる。
(2) 批判的思考態度尺度:平山・楠見(2004)から15項目を使用。「論理的思考」「探究心」「客観性」「根拠に基づく判断」の4因子からなる。
(3)学校での知的刺激:「学校の授業がおもしろい」「授業で興味をもったことを自分で調べるのが楽しい」「授業中に友だちの意見を聞いたり,話し合ったりするのは楽しい」「学校では‘自分で考える’ということが大切だと感じる」の4項目を 4件法で尋ねた。α係数は.78。
(4)自由研究型授業への関与:「自分で研究テーマを決めて調べたり実験したり作ったりして結果をまとめ,発表する授業」を受けたか否か,受けている場合,積極的だった,その授業で力がついたと感じる,授業が楽しかったの3項目を5件法で尋ねた。
結果と考察
情報活用力の実践尺度及び批判的思考態度尺度について中学生の性差を検討した。t検定を行った。その結果,情報活用の実践力尺度においては,t(323)=-1.87( n.s.),批判的思考態度では,t(353)=-1.20(n.s.)と性別による有意な得点の差は認められなかった。
発達的な変化を検討するため,学年による1元配置分散分析を行った。情報活用の実践力についてはF(5,646)=1.753(n.s.)であり,中学・高校の6学年で得点に差は認められなかった。批判的思考態度についてはF(5,691)=3.721,p<.01と学年の主効果が認められたため,TukeyのHSD法による多重比較を行ったところ中学2年<中学1年・中学3年・高校1年<高校2年・高校3年生という結果であり,発達的な変化の可能性が示唆された。
学校での知的刺激及び自由研究型授業との関連を,中学,高校別に検討したところ(Table1),自由研究型の授業への関与に関する相関係数が総じて中学生より高校生の方が高いこと示され,特に自由研究型の授業への積極的な関与と学校での知的刺激の関連が強まる可能性が示唆された。
出典・高比良美詠子,坂本章,森津太子,坂本桂,足立にれか,鈴木佳苗,勝谷紀子,小林久美子,木村文香,波多野和彦,坂本昴(2001)情報活用の実践力尺度の作成と信頼性および妥当性の検討. 日本教育工学学会論文誌,24, 247-256
・平山 るみ・楠見孝(2004). 批判的思考が結論導出プロセスに及ぼす影響. 教育心理学研究, 52, 186-198.
OECD-PISA学力調査等によって,日本の児童・生徒は,複雑化・多様化する世界を生き抜く基礎となる「探究力」や「活用力」に乏しいという問題が示されたことを契機に,近年,「社会を生き抜く力」やそのための「課題探求能力」の育成の機運が高まってきている。平成24年度から実施された学習指導要領では「習得」「活用」「探究」という三つのキーワードによって,「生きる力」の中核をなす思考力・判断力・表現力の育成を図ることが協調されている。
そこで本研究では,学校で受ける知的刺激や授業を通じた経験・体験と探求力・活用との関連を検討する。
方 法
お茶の水女子大学附属中学校・高等学校において,2013年12月~2月に調査を実施した。対象者は中学・高校総計712名。内訳は中学1年111名(男子29名,女子82名),中学2年127名(男子42名,女子84名),中学3年124名(男子37名,女子87名)中学合計362名。 高校1年115名,高校2年115名,高校3年120名(高校は女子のみ)高校合計350名。
調査項目
(1) 情報活用の実践力尺度:高比良ら(2001)24項目。「収集力」「判断力」「表現力」「処理力」「創造力」「発信・伝達力」の6因子からなる。
(2) 批判的思考態度尺度:平山・楠見(2004)から15項目を使用。「論理的思考」「探究心」「客観性」「根拠に基づく判断」の4因子からなる。
(3)学校での知的刺激:「学校の授業がおもしろい」「授業で興味をもったことを自分で調べるのが楽しい」「授業中に友だちの意見を聞いたり,話し合ったりするのは楽しい」「学校では‘自分で考える’ということが大切だと感じる」の4項目を 4件法で尋ねた。α係数は.78。
(4)自由研究型授業への関与:「自分で研究テーマを決めて調べたり実験したり作ったりして結果をまとめ,発表する授業」を受けたか否か,受けている場合,積極的だった,その授業で力がついたと感じる,授業が楽しかったの3項目を5件法で尋ねた。
結果と考察
情報活用力の実践尺度及び批判的思考態度尺度について中学生の性差を検討した。t検定を行った。その結果,情報活用の実践力尺度においては,t(323)=-1.87( n.s.),批判的思考態度では,t(353)=-1.20(n.s.)と性別による有意な得点の差は認められなかった。
発達的な変化を検討するため,学年による1元配置分散分析を行った。情報活用の実践力についてはF(5,646)=1.753(n.s.)であり,中学・高校の6学年で得点に差は認められなかった。批判的思考態度についてはF(5,691)=3.721,p<.01と学年の主効果が認められたため,TukeyのHSD法による多重比較を行ったところ中学2年<中学1年・中学3年・高校1年<高校2年・高校3年生という結果であり,発達的な変化の可能性が示唆された。
学校での知的刺激及び自由研究型授業との関連を,中学,高校別に検討したところ(Table1),自由研究型の授業への関与に関する相関係数が総じて中学生より高校生の方が高いこと示され,特に自由研究型の授業への積極的な関与と学校での知的刺激の関連が強まる可能性が示唆された。
出典・高比良美詠子,坂本章,森津太子,坂本桂,足立にれか,鈴木佳苗,勝谷紀子,小林久美子,木村文香,波多野和彦,坂本昴(2001)情報活用の実践力尺度の作成と信頼性および妥当性の検討. 日本教育工学学会論文誌,24, 247-256
・平山 るみ・楠見孝(2004). 批判的思考が結論導出プロセスに及ぼす影響. 教育心理学研究, 52, 186-198.