[PE077] IPV加害行為の認識と自尊感情及び共感性との関係
中・高生を対象として
キーワード:IPV加害行為, 自尊感情, 共感性
【背景と目的】 IPVとは,親密な関係の中で発生する暴力の総称である(DVやデートDVを含む)。近年,IPV被害者の支援と並んで,加害の予防という観点で実践や研究が行われるようになってきた。ところで,このような違法性の高い行為(あるいは行為者)に関して調査研究を行う場合,その結果にバイアスが生じやすいので研究方法に特別な配慮が必要となる。田中(2013)は,IPV加害行為の経験を問うなどの直接的ではなく,専門家がDVに該当すると認識している行為をIPV加害行為と認識するかどうかを明らかにするための調査研究を行い,その評定値の因子分析の結果3因子を抽出し,因子得点について性及び年齢の比較を行った。その結果,第3因子(「自己中心的行為」)に関しては,中学生より未高校生で,より該当しないと認識していることがわかった。
しかし,それらの認識と関連する心理的要因との関連性の検討は行われていない。そこで,本報告では,IPV行為についての認識の程度と自尊感情及び共感性との間に関連性があるかどうか検討することを目的とする。
【方法】:1)調査対象者:調査は,中高生2140人に対して行ったが,分析は欠損値のない930人分のデータを用いた。 2)調査項目①DV加害行為(山口,2005)によって挙げられているデートDV行為の内,24の加害行為(「全くあてはまらない」~「あてはまる」の5件法),②自尊感情尺度(山本・松井・山城,1982)(10項目,5件法),③多次元共感性尺度(鈴木・木野,2008)の第1因子「被影響性」,第2因子「他者指向的反応」を用いた。各5項目5件法。④デモグラフィック項目 3)手続き クラス単位で担任教諭によって実施するように依頼した。
【結果と考察】 本研究では,ある行為がIPVに該当するという認識を強く持つ程,当該行為に違法性を強く認識していると仮定した。そのために,自尊感情が強いほど,あるいは共感性が高いほどより強くIPV行為として認識すると予想した
表1に各尺度得点を示す。次に,IPV加害行為に関する認識と自尊感情及び共感性得点の間の相関係数を,表2に示した。表2に示されているとおり,全体的に相関係数の絶対値は低く,意味のある相関係数は求められなかったが,無相関との検定では,暴力的行為と共感性の「他者指向的反応得点」との間に有意な正の相関係数が算出された。すなわち,他者指向的反応傾向が強いほど暴力的行為をIPV加害行為と認識しやすいことがわかった。また,拘束的行為と自己中心的行為は,共感性得点の「被影響性」と有意な負の相関係数が求められた。被影響性が高ほど,拘束的行為及び自己中心的行為をIPVと認識する程度が低いことが明らかになった。上記の結果から,ある行為がIPV行為に該当するかどうかの判断には自尊感情は関連しないことがわかった。しかし,共感性については少しばかりの関係性が認められている。他者指向的反応傾向が高いとIPVの典型性の高い暴力的な行為についての違法性を認識する可能性が高まり,被影響性が高いと,IPVの典型性の比較的低い拘束的行為と自己中心的行為をIPV行為とは認識しにくくなることが明らかになった。今後更に詳細に分析する必要がある。
しかし,それらの認識と関連する心理的要因との関連性の検討は行われていない。そこで,本報告では,IPV行為についての認識の程度と自尊感情及び共感性との間に関連性があるかどうか検討することを目的とする。
【方法】:1)調査対象者:調査は,中高生2140人に対して行ったが,分析は欠損値のない930人分のデータを用いた。 2)調査項目①DV加害行為(山口,2005)によって挙げられているデートDV行為の内,24の加害行為(「全くあてはまらない」~「あてはまる」の5件法),②自尊感情尺度(山本・松井・山城,1982)(10項目,5件法),③多次元共感性尺度(鈴木・木野,2008)の第1因子「被影響性」,第2因子「他者指向的反応」を用いた。各5項目5件法。④デモグラフィック項目 3)手続き クラス単位で担任教諭によって実施するように依頼した。
【結果と考察】 本研究では,ある行為がIPVに該当するという認識を強く持つ程,当該行為に違法性を強く認識していると仮定した。そのために,自尊感情が強いほど,あるいは共感性が高いほどより強くIPV行為として認識すると予想した
表1に各尺度得点を示す。次に,IPV加害行為に関する認識と自尊感情及び共感性得点の間の相関係数を,表2に示した。表2に示されているとおり,全体的に相関係数の絶対値は低く,意味のある相関係数は求められなかったが,無相関との検定では,暴力的行為と共感性の「他者指向的反応得点」との間に有意な正の相関係数が算出された。すなわち,他者指向的反応傾向が強いほど暴力的行為をIPV加害行為と認識しやすいことがわかった。また,拘束的行為と自己中心的行為は,共感性得点の「被影響性」と有意な負の相関係数が求められた。被影響性が高ほど,拘束的行為及び自己中心的行為をIPVと認識する程度が低いことが明らかになった。上記の結果から,ある行為がIPV行為に該当するかどうかの判断には自尊感情は関連しないことがわかった。しかし,共感性については少しばかりの関係性が認められている。他者指向的反応傾向が高いとIPVの典型性の高い暴力的な行為についての違法性を認識する可能性が高まり,被影響性が高いと,IPVの典型性の比較的低い拘束的行為と自己中心的行為をIPV行為とは認識しにくくなることが明らかになった。今後更に詳細に分析する必要がある。