[PE083] ひきこもり支援プログラムの開発とその効果
プログラムに対する大学生の自由記述からの分析
キーワード:ひきこもり, 大学生, 将来設定
問題・目的
ひきこもりに対する支援とは,ひきこもりからの回復と予防策を実践する事であると考える。花嶋(2011)は,ひきこもり経験者との半構造化面接のデータをグラウンデッド・セオリー・アプローチにて分析し,「このままでいいや」「やりたいことがない」といった将来についての展望が持てない,主体性をもって行動できないという概念を導き出した。青戸,田上(2004)は,不登校児童・生徒への援助方法として,「夢を語り,目標を立てる」自己プランニング・プログラム を開発し,将来のポジティブな面に焦点をあてながら,未来から現在という逆の方向性に重点を置き,「こうなりたい,そのために何をしたいか?」といった本人の自発的な意志を引き出した。本研究は,ひきこもりからの回復と予防の為に,将来を設定するプログラムを開発し,その効果を明らかにする。大学生を調査対象にした理由は,内閣府(2010)が明らかにした「ひきこもり親和群(家や自室に閉じこもりたいと思う事がある等)」の存在にある。年齢は25歳以下が約半数,現在在学としている者が多いという事である。
方法
【調査時期】2013年10月。【調査対象】A県B大学130名の大学生,有効回答率100%。(男性47名,女性83名,平均年齢19.34歳)。【調査方法】表題『タイムマシーンに乗って』:ドラえもんのタイムマシーンに乗って10年後の自分に会いに行くと設定したワークシートに自由記述の回答を求めた。【調査項目】①フェイスシート:所属学部,性別,年齢の記入を求めた。②10年後の仕事,家族についての自由記述を実施した。【プログラムの手続き】①ドラえもん(ファシリテーターが扮装)が「10年後を見てきて下さい」と教示。②ワークシート記入後,6名程のグループの中で一人ずつ自分が見てきた10年後を発表し合う。③アンジェラ・アキの目標を設定する生き方を説明。④実施後,プログラムに対する自由記述の回答を求めた。【分析方法】プログラムに対する自由記述から,全350記述のラベルを作成,KJ法におけるグループ編成(川喜田,1967)の手法を用いて意味内容の近いもの同士をまとめ,「小・中・大群」をつくり,全ての群に表題をつけた。
結果
プログラムに対する自由記述(全350記述)は,31の〈小群〉,8つの《中群》,3つの【大群】に分類された。【未来について(132記述)】《未来志向(111記述)》=〈具体的なイメージができてやる気が出た〉〈夢の確認,夢を叶えたい〉〈未来の自分に会えた〉〈将来,幸せになりたい〉〈自分の将来と向き合おう〉。《家族(13記述)》=〈家族をつくって幸せになりたい〉〈結婚への思い〉〈家族を大切にしたい〉〈自分の子どもへの思い〉。《将来不安(8記述)》=〈将来不安〉〈未来に対するおそれ〉。【現在について(140記述)】《現在志向(98記述)》=〈今頑張ろう〉〈今を見つめ直そう〉〈今の課題・アドバイス・励まし〉〈今の自分次第〉〈新たな気づき〉。《生き方(28記述)》=〈自分らしく生きたい〉〈悔いなく生きたい〉〈仲間や友達を大切にしたい〉〈経験を積もう〉〈強くなりたい〉〈諦めずに挑戦〉〈刺激のある人生〉。《目標(14記述)》=〈目標を立てる〉〈やりたい事をみつける〉。【プログラムについて(78記述)】《プログラムを補助する手続き(55記述)》=〈グループ内での発表〉〈ドラえもん〉〈アンジェラ・アキ〉〈タイムマシーン〉。《プログラムに対する評価(23記述)》=〈色々考えた〉〈10年後の想像は難しい〉。
考察
本研究の目的は,開発した将来を設定するプログラムの効果を明らかにする事であった。「将来について具体的にイメージができてやる気が出た,夢を叶えたい」といった前向きな記述が9割を占め,それらは「その為に今・・しなければ」という記述と結びついていた。バンデューラ(重久,1985)によると,より良い未来を考える事によって,人間は自分自身を動機づけ,将来のあるべき姿を明確に予測し自らの行動を導いていくという。この予測は効力予期に当り,「今,その事が自分にできるかどうか」といった具体的な一つ一つの行為の遂行可能の予測に関するものであり,行動に直結した概念である(福島,1985)。具体的な将来を前向きに見据える事が,今を大切に生きようとする事に繋がったと考えられる。グループ内の発表では「人の話に刺激を受けた,人に話して自信のなかった未来像に色が付いてはっきりした,夢を語り合う事の清々しさを感じた」といったように,自他理解が進んだ。
ひきこもりに対する支援とは,ひきこもりからの回復と予防策を実践する事であると考える。花嶋(2011)は,ひきこもり経験者との半構造化面接のデータをグラウンデッド・セオリー・アプローチにて分析し,「このままでいいや」「やりたいことがない」といった将来についての展望が持てない,主体性をもって行動できないという概念を導き出した。青戸,田上(2004)は,不登校児童・生徒への援助方法として,「夢を語り,目標を立てる」自己プランニング・プログラム を開発し,将来のポジティブな面に焦点をあてながら,未来から現在という逆の方向性に重点を置き,「こうなりたい,そのために何をしたいか?」といった本人の自発的な意志を引き出した。本研究は,ひきこもりからの回復と予防の為に,将来を設定するプログラムを開発し,その効果を明らかにする。大学生を調査対象にした理由は,内閣府(2010)が明らかにした「ひきこもり親和群(家や自室に閉じこもりたいと思う事がある等)」の存在にある。年齢は25歳以下が約半数,現在在学としている者が多いという事である。
方法
【調査時期】2013年10月。【調査対象】A県B大学130名の大学生,有効回答率100%。(男性47名,女性83名,平均年齢19.34歳)。【調査方法】表題『タイムマシーンに乗って』:ドラえもんのタイムマシーンに乗って10年後の自分に会いに行くと設定したワークシートに自由記述の回答を求めた。【調査項目】①フェイスシート:所属学部,性別,年齢の記入を求めた。②10年後の仕事,家族についての自由記述を実施した。【プログラムの手続き】①ドラえもん(ファシリテーターが扮装)が「10年後を見てきて下さい」と教示。②ワークシート記入後,6名程のグループの中で一人ずつ自分が見てきた10年後を発表し合う。③アンジェラ・アキの目標を設定する生き方を説明。④実施後,プログラムに対する自由記述の回答を求めた。【分析方法】プログラムに対する自由記述から,全350記述のラベルを作成,KJ法におけるグループ編成(川喜田,1967)の手法を用いて意味内容の近いもの同士をまとめ,「小・中・大群」をつくり,全ての群に表題をつけた。
結果
プログラムに対する自由記述(全350記述)は,31の〈小群〉,8つの《中群》,3つの【大群】に分類された。【未来について(132記述)】《未来志向(111記述)》=〈具体的なイメージができてやる気が出た〉〈夢の確認,夢を叶えたい〉〈未来の自分に会えた〉〈将来,幸せになりたい〉〈自分の将来と向き合おう〉。《家族(13記述)》=〈家族をつくって幸せになりたい〉〈結婚への思い〉〈家族を大切にしたい〉〈自分の子どもへの思い〉。《将来不安(8記述)》=〈将来不安〉〈未来に対するおそれ〉。【現在について(140記述)】《現在志向(98記述)》=〈今頑張ろう〉〈今を見つめ直そう〉〈今の課題・アドバイス・励まし〉〈今の自分次第〉〈新たな気づき〉。《生き方(28記述)》=〈自分らしく生きたい〉〈悔いなく生きたい〉〈仲間や友達を大切にしたい〉〈経験を積もう〉〈強くなりたい〉〈諦めずに挑戦〉〈刺激のある人生〉。《目標(14記述)》=〈目標を立てる〉〈やりたい事をみつける〉。【プログラムについて(78記述)】《プログラムを補助する手続き(55記述)》=〈グループ内での発表〉〈ドラえもん〉〈アンジェラ・アキ〉〈タイムマシーン〉。《プログラムに対する評価(23記述)》=〈色々考えた〉〈10年後の想像は難しい〉。
考察
本研究の目的は,開発した将来を設定するプログラムの効果を明らかにする事であった。「将来について具体的にイメージができてやる気が出た,夢を叶えたい」といった前向きな記述が9割を占め,それらは「その為に今・・しなければ」という記述と結びついていた。バンデューラ(重久,1985)によると,より良い未来を考える事によって,人間は自分自身を動機づけ,将来のあるべき姿を明確に予測し自らの行動を導いていくという。この予測は効力予期に当り,「今,その事が自分にできるかどうか」といった具体的な一つ一つの行為の遂行可能の予測に関するものであり,行動に直結した概念である(福島,1985)。具体的な将来を前向きに見据える事が,今を大切に生きようとする事に繋がったと考えられる。グループ内の発表では「人の話に刺激を受けた,人に話して自信のなかった未来像に色が付いてはっきりした,夢を語り合う事の清々しさを感じた」といったように,自他理解が進んだ。