日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PE

(501)

2014年11月8日(土) 13:30 〜 15:30 501 (5階)

[PE084] 学生のポジティブな自己評価が授業理解度に与える影響

高等教育におけるWOWWプログラムの効果

石丸雅貴 (金沢工業大学)

キーワード:WOWWプログラム, ポジティブな自己評価, 高等教育

問題と目的
WOWWプログラムとはWorking on What Worksの略称であり,「うまくいっていることに取り組む」と訳される。このプログラムは,心理療法のSolution-Focused Brief Therapyを教育場面に適用させたものである。WOWWは学習者の授業中の態度でポジティブな側面に焦点を当て,それをフィードバックすることで良い影響を与えようとする。
これまで筆者は,WOWWを大学教育に取り入れ,大学教育の質向上を目指してきた (e.g., 石丸・相模, 2011) 。そこで,本研究では,大学生に授業中の肯定的な態度を自己評価させ,そのことが学生の主観的な授業理解度にどのような影響を与えるのか検討する。
研究1
1.目的
準実験デザインを用いて,ポジティブな自己評価が主観的な授業理解度に与える影響を検討する。
2.方法
参加者 心理学の授業を受講する大学生42名。
手続き ベースライン時期とWOWW実施時期,及び実施止め時期を設定した。ベースライン時期と実施止め時期では学生に授業の感想を書かせた。WOWW実施時期では自分の授業態度をポジティブに自己評価させた。その後,授業理解度 (授業のわかりやすさ) を10件法で回答させた。
3.結果と考察
授業理解度の変化を図1に示した。参加者内一要因分散分析を行った結果,WOWW実施時期の授業理解度が有意に高かった (F(3,123)=7.42, p<.01)。この結果は,ポジティブな自己評価によって主観的な授業理解度が高まることを示唆している。しかし,研究1では剰余変数が統制できていないという問題点が残った。
研究2
1.目的
剰余変数を統制するため,同クラス内で介入群
図1 授業理解度の変化

と統制群を設定し,ポジティブな自己評価が主観的な授業理解度に与える影響を検討する。
2.方法
参加者 心理学の授業を受講する大学生34名。
手続き 学生を介入群と統制群に配置した。WOWW群は自分の授業態度をポジティブに自己評価させた。感想群は授業の感想を書かせた。6回実施し,介入前・実施3回目・6回目でそれぞれ主観的な授業理解度を7件法で回答させた。
3.結果と考察
介入群と統制群の授業理解度を図2に示した。参加者二要因分散分析を行った結果,実施6回目の時点で,介入群の授業理解度が有意に高かった (交互作用: F(2,62)=3.78, p<.05)。研究1同様に,ポジティブな自己評価が主観的な授業理解度を高めることを示した。


図2 介入群と統制群の授業理解度

総合考察
授業がわかったという感覚は,授業への興味・関心を高めるものである。その結果,学生の授業への取り組み方が変化し,大学教育の質向上の一助になると考えられる。