[PE086] 気遣いと対人ストレッサーおよび友人関係満足感との関連
友人関係の親密度に注目して
キーワード:友人関係, 気遣い, 対人ストレッサー
目 的
本研究では,気遣いの概念について,「相手を思いやって助けようとする行動,あるいは自己防衛や周囲との調和のため,本心を隠す抑制的な行動」と気遣いを定義し,親密度の違いを考慮に入れて,対人ストレッサーと気遣い,友人関係満足感の関連を検討した。
方 法
調査協力者 都内の女子大学生205名(親友条件106名, 友人条件99名)。2014年1月に集団実施後,回収した。
調査内容 (1)フェイスシート(学年,学科,性別)。 (2)友人に対する気遣い尺度(満野・今城,2013):25項目7件法。 (3)対人ストレッサー尺度(橋本,2005):18項目6件法。(4)友人満足感尺度(加藤,2001):6項目6件法。本研究では親友満足感とした。(5)友人関係の中間距離満足感尺度:予備調査で抽出した9項目7件法。
結 果
1.気遣い尺度の確認的因子分析
適合度指標はχ2(49)=95.14(p<.001), GFI=.93, AGFI=.89, CFI=.91, RMSEA=.07であり,向社会的気遣い(α=.90)と抑制的気遣い(α=.88)の2因子が確認された(Table 1)。
2.友人関係の中間距離満足感尺度の主成分分析
1因子解(α=.76)であることを確認した(Table 2)。
3.親密度の違いの検討
本研究で使用した変数を,親友条件,友人条件でt検定を行った結果,対人摩耗と抑制的気遣いは友人条件の方が有意に高く,対人過失は有意差はなかった。
4.対人ストレッサーと気遣い,友人関係満足感の関連
大学生の対人ストレッサーが,友人に対する気遣い,友人関係満足感に影響するというモデルについて多母集団同時分析を行った。適合度指標は,χ2(12)=18.10 (n.s.), GFI=.97, AGFI=.90, CFI=.98, RMSEA=.05であり,十分な適合度が得られた。統計的に有意なパスのみ示した。親友条件では,対人摩耗から抑制的気遣いには正の影響,中間距離満足感には負の影響が見られた(パス係数はそれぞれ.42, -.24)。向社会的気遣いは親友満足感,中間距離満足感に正の影響を与えていた(.48, .31)。抑制的気遣いは中間距離満足感に正の影響を与えていた(.29)。友人条件では,対人過失から向社会的気遣いに正の影響が見られた(.27)。対人摩耗から抑制的気遣いには正の影響,中間距離満足感には負の影響が見られた(.35, -.25)。向社会的気遣いは親友満足感,中間距離満足感に正の影響を与えていた(.52, .30)。抑制的気遣いは中間距離満足感に正の影響を与えていた(.25)。対人過失から向社会的気遣いのパスで,条件間で有意な差があった(z=3.24)。
Figure 1. 多母集団同時分析の結果
考 察
向社会的気遣いは,親友満足感・中間距離満足感のどちらも促進するが,抑制的気遣いは,中間距離満足感を増大させることが示された。対人過失に対しては,向社会的気遣いが有用だが,対人摩耗には抑制的気遣いが有用であることが示唆された。
引 用 文 献
橋本剛 (2005). 対人ストレッサー尺度の開発 人文論集, 56, A45-A71.
加藤司 (2001). 対人ストレス過程の検証 教育心理学研究, 49, 295-304.
満野史子・今城周造 (2013). 大学生の友人に対する気遣い尺度の作成と規定因の検討 昭和女子大学大学院生活機構研究科紀要, 22, 31-46.
本研究では,気遣いの概念について,「相手を思いやって助けようとする行動,あるいは自己防衛や周囲との調和のため,本心を隠す抑制的な行動」と気遣いを定義し,親密度の違いを考慮に入れて,対人ストレッサーと気遣い,友人関係満足感の関連を検討した。
方 法
調査協力者 都内の女子大学生205名(親友条件106名, 友人条件99名)。2014年1月に集団実施後,回収した。
調査内容 (1)フェイスシート(学年,学科,性別)。 (2)友人に対する気遣い尺度(満野・今城,2013):25項目7件法。 (3)対人ストレッサー尺度(橋本,2005):18項目6件法。(4)友人満足感尺度(加藤,2001):6項目6件法。本研究では親友満足感とした。(5)友人関係の中間距離満足感尺度:予備調査で抽出した9項目7件法。
結 果
1.気遣い尺度の確認的因子分析
適合度指標はχ2(49)=95.14(p<.001), GFI=.93, AGFI=.89, CFI=.91, RMSEA=.07であり,向社会的気遣い(α=.90)と抑制的気遣い(α=.88)の2因子が確認された(Table 1)。
2.友人関係の中間距離満足感尺度の主成分分析
1因子解(α=.76)であることを確認した(Table 2)。
3.親密度の違いの検討
本研究で使用した変数を,親友条件,友人条件でt検定を行った結果,対人摩耗と抑制的気遣いは友人条件の方が有意に高く,対人過失は有意差はなかった。
4.対人ストレッサーと気遣い,友人関係満足感の関連
大学生の対人ストレッサーが,友人に対する気遣い,友人関係満足感に影響するというモデルについて多母集団同時分析を行った。適合度指標は,χ2(12)=18.10 (n.s.), GFI=.97, AGFI=.90, CFI=.98, RMSEA=.05であり,十分な適合度が得られた。統計的に有意なパスのみ示した。親友条件では,対人摩耗から抑制的気遣いには正の影響,中間距離満足感には負の影響が見られた(パス係数はそれぞれ.42, -.24)。向社会的気遣いは親友満足感,中間距離満足感に正の影響を与えていた(.48, .31)。抑制的気遣いは中間距離満足感に正の影響を与えていた(.29)。友人条件では,対人過失から向社会的気遣いに正の影響が見られた(.27)。対人摩耗から抑制的気遣いには正の影響,中間距離満足感には負の影響が見られた(.35, -.25)。向社会的気遣いは親友満足感,中間距離満足感に正の影響を与えていた(.52, .30)。抑制的気遣いは中間距離満足感に正の影響を与えていた(.25)。対人過失から向社会的気遣いのパスで,条件間で有意な差があった(z=3.24)。
Figure 1. 多母集団同時分析の結果
考 察
向社会的気遣いは,親友満足感・中間距離満足感のどちらも促進するが,抑制的気遣いは,中間距離満足感を増大させることが示された。対人過失に対しては,向社会的気遣いが有用だが,対人摩耗には抑制的気遣いが有用であることが示唆された。
引 用 文 献
橋本剛 (2005). 対人ストレッサー尺度の開発 人文論集, 56, A45-A71.
加藤司 (2001). 対人ストレス過程の検証 教育心理学研究, 49, 295-304.
満野史子・今城周造 (2013). 大学生の友人に対する気遣い尺度の作成と規定因の検討 昭和女子大学大学院生活機構研究科紀要, 22, 31-46.