[PE099] 中学校への進学時不適応の予防に必要な能力(3)
尺度項目の検討
キーワード:進学時不適応, 能力, 尺度項目
【目的】
中学校への進学時不適応の予防に必要な能力について,一連研究1および2で検討をおこなった。今後,さらに予防の実効性を高めるべく,後続の調査研究が進められる予定である。
今回検討したデータ収集において,進学時不適応を予防する能力としては,Bandura(1977)の立場に依拠して開発された工藤・小林(2010)の尺度をひとつの軸としつつ,尺度の妥当性を高めるため,さらに小中学生から得られた記述データから項目を起こし、それらを加味したものを用いた。
しかしこれらはあくまで子どもたち自身の認識から捉えられた,「進学時に必要な能力」である。
今後,より発展的な調査を行い予防の実を挙げるためには,子どもたちとかかわる専門職業人(教師,養護教諭,スクールカウンセラー等)からの視点も必要であると考えられた。
そこで,当初に得られた小中学生による記述データと,専門職業人からのデータとを照合し,今後の調査に用いる項目を検討することとした。
【方法】
調査1:H県の小学校2校の6年生138名を対象に,「中学校に行ったら,『こういうことが心配だ』と思うようなこと(以下「進学不安」とする)」について最大5つまで記述を求め,カテゴリー化した。記述の順序が先頭であるカテゴリー事項1件ごとに5点を与え,以下順序が下がるごとに1点ずつ減少する得点を与える得点化を行い,合計得点順にカテゴリーを序列化した。同様に,中学校4校の1年生328名を対象に,「中学校に入学するまでに『こういうことができるようになっておけばよかった』ということ(以下「必要能力」とする)」について最大5つまで記述を求め,カテゴリー化した。小学生の回答と同様の得点化を行い,合計得点順にカテゴリーを序列化した。それらの一覧と,具体的記述内容とをもとに,工藤・小林(2010)等に加味する項目を構成した。
調査2:調査1の結果をもとに一連研究1および2で用いるべく作成された「進学時不適応を予防する能力尺度」の項目について,H県の教育関係の専門職業人29名(管理職,教諭,養護教諭,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカー,教育委員会指導主事等)によるグループ討議で検討を加え,専門職業人の目からみて新たに加えるべきと思われた項目の提案を求め,それらをカテゴリー化した。
【結果と考察】
調査1で小学生が挙げた「進学不安」事項は,「勉強」「友達関係」「いじめ」「部活」「先輩関係」「時間」「教師との関係」の順であった。一方中学生が挙げた「必要能力」は,「勉強」「運動」「時間管理」「対人関係・態度・性格」「挨拶・礼儀」「友達関係」「生活態度・習慣」「給食」「部活」「遊び」「先輩関係」「教師との関係」の順であった。
調査2で専門職業人が追加した事項をカテゴリー化したところ,Table1のとおりであった。
調査1の結果等をもとに一連研究1および2で用いるべく作成された「進学時不適応を予防する能力尺度」は,「きまりを守ることができる力」,「信頼関係をつくることができる力」,「気持ちを交しあうことができる力」,「困ったときに相談できる力」の4因子構成のものであった。
これを,専門職業人が追加した事項をカテゴリー化したTable1と照合すると,「他者を尊重し助けとなる力」と「レジリエンス」が,先の4因子に重複しないものであることが明らかとなった。
後続研究においては,この2カテゴリーを測定する項目を構成して,既成のものに加える必要があると考えられた。
中学校への進学時不適応の予防に必要な能力について,一連研究1および2で検討をおこなった。今後,さらに予防の実効性を高めるべく,後続の調査研究が進められる予定である。
今回検討したデータ収集において,進学時不適応を予防する能力としては,Bandura(1977)の立場に依拠して開発された工藤・小林(2010)の尺度をひとつの軸としつつ,尺度の妥当性を高めるため,さらに小中学生から得られた記述データから項目を起こし、それらを加味したものを用いた。
しかしこれらはあくまで子どもたち自身の認識から捉えられた,「進学時に必要な能力」である。
今後,より発展的な調査を行い予防の実を挙げるためには,子どもたちとかかわる専門職業人(教師,養護教諭,スクールカウンセラー等)からの視点も必要であると考えられた。
そこで,当初に得られた小中学生による記述データと,専門職業人からのデータとを照合し,今後の調査に用いる項目を検討することとした。
【方法】
調査1:H県の小学校2校の6年生138名を対象に,「中学校に行ったら,『こういうことが心配だ』と思うようなこと(以下「進学不安」とする)」について最大5つまで記述を求め,カテゴリー化した。記述の順序が先頭であるカテゴリー事項1件ごとに5点を与え,以下順序が下がるごとに1点ずつ減少する得点を与える得点化を行い,合計得点順にカテゴリーを序列化した。同様に,中学校4校の1年生328名を対象に,「中学校に入学するまでに『こういうことができるようになっておけばよかった』ということ(以下「必要能力」とする)」について最大5つまで記述を求め,カテゴリー化した。小学生の回答と同様の得点化を行い,合計得点順にカテゴリーを序列化した。それらの一覧と,具体的記述内容とをもとに,工藤・小林(2010)等に加味する項目を構成した。
調査2:調査1の結果をもとに一連研究1および2で用いるべく作成された「進学時不適応を予防する能力尺度」の項目について,H県の教育関係の専門職業人29名(管理職,教諭,養護教諭,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカー,教育委員会指導主事等)によるグループ討議で検討を加え,専門職業人の目からみて新たに加えるべきと思われた項目の提案を求め,それらをカテゴリー化した。
【結果と考察】
調査1で小学生が挙げた「進学不安」事項は,「勉強」「友達関係」「いじめ」「部活」「先輩関係」「時間」「教師との関係」の順であった。一方中学生が挙げた「必要能力」は,「勉強」「運動」「時間管理」「対人関係・態度・性格」「挨拶・礼儀」「友達関係」「生活態度・習慣」「給食」「部活」「遊び」「先輩関係」「教師との関係」の順であった。
調査2で専門職業人が追加した事項をカテゴリー化したところ,Table1のとおりであった。
調査1の結果等をもとに一連研究1および2で用いるべく作成された「進学時不適応を予防する能力尺度」は,「きまりを守ることができる力」,「信頼関係をつくることができる力」,「気持ちを交しあうことができる力」,「困ったときに相談できる力」の4因子構成のものであった。
これを,専門職業人が追加した事項をカテゴリー化したTable1と照合すると,「他者を尊重し助けとなる力」と「レジリエンス」が,先の4因子に重複しないものであることが明らかとなった。
後続研究においては,この2カテゴリーを測定する項目を構成して,既成のものに加える必要があると考えられた。