日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PF

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 16:00 〜 18:00 5階ラウンジ (5階)

[PF001] 「やる気」はどのような行動から評価されるのか

少年サッカーを題材にした他者評定の比較検討

名取洋典 (いわき明星大学)

キーワード:動機づけ, 他者評定, 少年サッカー

目 的
本研究では少年サッカーを題材に,活動に従事しているどのような様子から「やる気」が評価されるのかを探索的に検討することを目的とした。
その際,中学生,高校生,大学生とサッカー審判員指導者の比較を行うことにより,評価の仕方に違いがあるのかを確認する。

方 法
評定者 東北地方の私立中学校1校に在籍する中学生19名,私立高校2校と公立高校2校に在籍する高校生63名,関東地方の大学1校に在籍する大学生156名,および,サッカー審判員指導者21名から回答を得た。
評定対象映像 指導者ライセンス保持者と教育心理学専攻の大学院生との比較(名取,2007a),および心理学専攻の大学生・院生を対象とした調査(名取,2007b)で用いたのと同じ映像であった。
少年サッカーチームのパス練習をデジタルビデオカメラで撮影した。課題開始時のシーン1(3分22秒間)と,シーン1から3分34秒後に指導者が課題を変更するまでのシーン2(2分16秒間)に映像を分けた。シーン1の冒頭1分間は指導者による課題の説明を評定対象者が聞いている映像であった。それ以外は順番待ちをしている様子が中心であった。同時に収まる時間が他の競技者たちと比較すると長かった4名の少年サッカー競技者(以下A,B,C,D)を評定対象者とした。
調査内容および調査手続き シーン1,2それぞれにおける,4名の評定対象者の「やる気」の評定(「やる気」評定値)を10点満点で求めた。加えて,評定の理由について自由記述での回答を得た。調査は会場ごとに4回に分けて実施した。
「やる気」の評定と理由の自由記述を求めたことは共通するが,講演や授業の中の課題として実施したために,4回ごとに回答状況は異なっている。所要時間は30分程度であった。

結果と考察
「やる気」評定値を従属変数とし,「年代」(中学生・高校生・大学生・審判指導員),「シーン」(シーン1・シーン2),「評定対象者」(A,B,C,D)を要因とする4×2×4の3要因分散分析を行った。評定平均値と標準誤差をFigure 1に示す。
その結果,3つの要因の有意な主効果(年代: F(3, 243)=3.19, p<.05; シーン: F(1, 243)=112.30, p<.001; 評定対象者: F(3, 729)=64.36, p<.001)がみられた。Ryan法による多重比較(有意水準5%)の結果,中高生は大学生に比べて,対象者の「やる気」を高く評定していたことが示された。また,「シーン」と「評定者」の交互作用が有意であった(F(3, 729)=11.95, p<.001)。そこで,単純主効果の検定を行ったところ,4者すべてにおいて,シーン1よりシーン2の「やる気」が低く評定されていたことが示された(F(1, 972)=119.04, 65.19, 38.01, 17.03, ps<.001)。また,「評定対象者」の単純主効果は,シーン1,2の両者において0.1%水準で有意であった(F(3, 1459)=70.88, 23.02)が,多重比較の結果,シーン1ではA,B,C,Dの順で評定され,評定対象者への評定値間に有意差がみられた一方,シーン2ではDの「やる気」のみが他の3者と比較して低く評定されていたことが示された。
評定理由の記述内容と合わせると,これまでの調査(名取,2007a; 名取,2007b)と同様に,真面目さが「やる気」と評価されることが示唆されたと考えられる。指導者よりもむしろ大学生の真面目さの基準が厳しく,結果として評定値が中高生に比べて低くなった可能性が考えられる。

引用文献
名取洋典(2007a).行動から評価される「やる気」―少年サッカーを題材に― 日本教育心理学会第49回発表論文集,256.
名取洋典(2007b).少年サッカー競技者の「やる気」の評定―映像についての他者評定 日本心理学会第71回大会発表論文集,1174.