[PF010] リーディング・リテラシーと読書態度との関係
キーワード:リーディング・リテラシー, 読書, 読書態度
近年,活字による情報収集および発信の機会の増加に伴い,教育場面に限らないテキストの理解し活用する力であるリーディング・リテラシーが重視されている。しかし,テキストの読みに関して日本では,国語教育で扱われる読解と教科外で行われる読書を区別する見方が踏襲されているという(柴山・佐藤・熊谷・足立・中野,2012)。そこで,本研究ではリーディング・リテラシーと読書の嗜好性を測る読書態度との関係性に加え,リーディング・リテラシーで特に育成が求められているといえる記述問題への無答者の読書態度の特徴について探索的に検討することを目的とする。
方 法
協力者 私立大生83名中欠測のない71名が分析対象。
材料 ①読書態度:深谷(2012)の「1読書回避」「2読書熱中」「3意外性受容」「4共感重視」「5思索専念」から因子負荷の高い各5項目を使用(6件法)。 ②リーディング・リテラシー問題(以下,RL問題):柴山他(2012)の多枝選択式問題12問(K05:3問,K06:3問,K07:3問,K04:3問)および記述式問題1問(K06:1問)使用。
手続き 心理学の講義時間内に一斉に実施した。
結 果
得点化 ①読書態度:各下位尺度のα係数を低める項目(「2読書熱中」以外の4尺度の各1項目)を除外し,尺度得点を算出(TABLE1)。 ②RL成績:柴山他(2012)の基準に従い正誤を判定。RL問題の多枝選択式問題12問について,正答数(0-13)およびIRTモデルにより,柴山他(2012)の項目パラメータを使用して協力者パラメータ(尺度値θ)を算出(推定方法はMLE)。
1.読書態度とRL成績の関係
読書態度とRL成績との関係を検討した。
その結果,「2読書熱中」と正答数および尺度値θと有意な正の相関が認められた(TABLE1)。
2.無答率と読書態度の関係
RL問題(記述式)1問の回答パターン間での読書態度およびRL成績を比較した。読書態度の「4共感重視(F(2,68)=3.264, p<.05)」でのみ有意差があり,多重比較の結果,誤答-無答間および誤答―正答間の差が5%水準で有意であった。
考 察
結果より,「読書熱中傾向」という教科外での読書を嗜好する態度がリーディング・リテラシーと関連することが明らかになった。これはリーディング・リテラシーが分立的に捉えやすい読書と読解とを包括する概念であることを示唆する結果といえよう。
記述問題の回答パターンによるRL成績の有意差は認められなかった。今回は読みに特化した多枝選択 式問題を用いてRL成績を算出しているため,活字での表現に焦点化した記述式問題の回答とは質的に異なっていたと考えられる。一方,回答パターン間の「共感重視」の読書態度の差は有意であった。この結果は,昨今問題視されつつある無答率の高さの背景にある要因の一つとして,教科外でのテキストに触れる機会と位置付けられる読書への態度や経験の違いがある可能性を示唆するものであり,更なる検討が求められる。
リーディング・リテラシーの実態把握および育成への示唆を得るためには,従来区別されることの多かった読書と読解の関連性という観点も含めて精査することが必要といえる。
方 法
協力者 私立大生83名中欠測のない71名が分析対象。
材料 ①読書態度:深谷(2012)の「1読書回避」「2読書熱中」「3意外性受容」「4共感重視」「5思索専念」から因子負荷の高い各5項目を使用(6件法)。 ②リーディング・リテラシー問題(以下,RL問題):柴山他(2012)の多枝選択式問題12問(K05:3問,K06:3問,K07:3問,K04:3問)および記述式問題1問(K06:1問)使用。
手続き 心理学の講義時間内に一斉に実施した。
結 果
得点化 ①読書態度:各下位尺度のα係数を低める項目(「2読書熱中」以外の4尺度の各1項目)を除外し,尺度得点を算出(TABLE1)。 ②RL成績:柴山他(2012)の基準に従い正誤を判定。RL問題の多枝選択式問題12問について,正答数(0-13)およびIRTモデルにより,柴山他(2012)の項目パラメータを使用して協力者パラメータ(尺度値θ)を算出(推定方法はMLE)。
1.読書態度とRL成績の関係
読書態度とRL成績との関係を検討した。
その結果,「2読書熱中」と正答数および尺度値θと有意な正の相関が認められた(TABLE1)。
2.無答率と読書態度の関係
RL問題(記述式)1問の回答パターン間での読書態度およびRL成績を比較した。読書態度の「4共感重視(F(2,68)=3.264, p<.05)」でのみ有意差があり,多重比較の結果,誤答-無答間および誤答―正答間の差が5%水準で有意であった。
考 察
結果より,「読書熱中傾向」という教科外での読書を嗜好する態度がリーディング・リテラシーと関連することが明らかになった。これはリーディング・リテラシーが分立的に捉えやすい読書と読解とを包括する概念であることを示唆する結果といえよう。
記述問題の回答パターンによるRL成績の有意差は認められなかった。今回は読みに特化した多枝選択 式問題を用いてRL成績を算出しているため,活字での表現に焦点化した記述式問題の回答とは質的に異なっていたと考えられる。一方,回答パターン間の「共感重視」の読書態度の差は有意であった。この結果は,昨今問題視されつつある無答率の高さの背景にある要因の一つとして,教科外でのテキストに触れる機会と位置付けられる読書への態度や経験の違いがある可能性を示唆するものであり,更なる検討が求められる。
リーディング・リテラシーの実態把握および育成への示唆を得るためには,従来区別されることの多かった読書と読解の関連性という観点も含めて精査することが必要といえる。