日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PF

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 16:00 〜 18:00 5階ラウンジ (5階)

[PF013] 教員養成課程における大学学習法履修者の教師イメージ

小堀彩子1, 一柳智紀1, 杉澤武俊1 (新潟大学)

キーワード:教員養成, 教師イメージ, 初年次教育

問題と目的
大学での初年次教育は,その後の学生生活における早期の適応の観点から重要である。本研究では,特に教員養成課程における学習面での適応促進に焦点を当てる。教員養成課程では,その特質上,教職に関する意識や構えを早期に獲得することは重要な課題である。したがって,こうした視点の獲得を目指した初年次教育の実践が望まれる。
秋田(1996)や三島(2008)によれば,教師や教員養成課程の学生は,熟達化したり,実習を重ねたりすることで,教師イメージの変容が見られるという。職業経験や実習経験ではなく,大学の授業においてイメージの変容を促すような効果的な働きかけは可能なのだろうか。可能だとすれば,どのような取り組みが有効なのだろうか。
以上を踏まえ,教職に関する意識や構えの獲得を促すプログラムの開発に資する基礎研究として本研究を位置づけ,教員養成課程に入学した大学1年生が,入学初期の段階において教師に関して,どのようなイメージを抱いているのかを明らかにすることとした。
方 法
2014年5月,新潟大学において,学習面での適応促進を目的として初年次に開講されている大学学習法を履修し,教員養成課程に所属する大学1年生21名(男性3名,女性18名)を対象に,質問紙調査を行った。質問紙の内容は,フェイスシートに加え,教師に対する比喩の生成と,説明課題であった。
結 果
教師に対するイメージは,「一方向的な関わり(20名)」,「業務の特質(7名)」という2つの大カテゴリにまとめられた。さらに「一方向的な関わり」は,規範を示す,与える,困った時に助ける,守るという4つの中カテゴリにまとめられた。「業務の特質」は,教師の集団性,教師の専門性 ,業務の多忙さ,発見の多さという4つの中カテゴリにまとめられた 。中カテゴリのうち,発見の多さのみ教師の目線から業務を捉え,それ以外は教師以外の目線からでも捉えることが可能な業務の特徴に関する記述であった。
また,比喩の生成数は1つが最も多く(13名),ついで2つ(3名),3つ(1名)であった。4名は比喩生成ができなかった。
考 察
教員養成課程の新入生は,教師イメージを思い浮かべる際は,教師目線,あるいは中立的な目線というよりも,児童生徒の目線に立ち,その内容については,双方向的で多様な業務内容というよりは,一方向的で限定的な業務内容を,より多くイメージする傾向にあることが明らかになった。授業に対し,学生は筋書き通りの伝達の場として捉え,教師は自由度の高い共同生成の場として捉える(秋田,1996)ことを踏まえるならば,初年次教育では,双方向的で柔軟な教職イメージに変容するような働きかけを実施することが望ましいと思われる。また,比喩生成ができなかった者が複数いたことから,入学時点で明確な教師像を持っていない者の存在が示唆された。イメージの変容とあわせてイメージの明確化に対する取り組みの必要性が明らかになった。
今後は,本研究の結果を活用した大学学習法の講義内容を計画,実施し,その効果を評価することが望まれる。