[PF017] 児童のほめられるまでの文脈のとらえ方
課題の好みとほめられる頻度が異なる場合
キーワード:動機づけ, フィードバック
問題と目的
青木(2014)では,ほめられる以前の状況が異なる主人公がテストで100点を取り,教師にほめられるというストーリーを提示し,主人公の動機づけを問う質問紙調査を行った。その結果,B算数が好きで算数でよい点をとるといつもほめられている主人公,D算数は好きだがよい点をとってもいつもはほめられない主人公,A算数は嫌いだがよい点をとるといつもほめられている主人公,C算数は嫌いでよい点をとってもいつもはほめられない主人公の順で動機づけが高いと評定された。
しかし,これらのストーリーを構成する課題の好み(好き・嫌い)とほめられる頻度(ほめられる・ほめられない)を個別に検討した研究(青木,2013)では,嫌いな課題よりも好きな課題,いつもほめられている課題よりもいつもはほめられていない課題をほめられると動機づけが高まると評定される。つまり,複数の要因が存在する場合,要因間でなんらかの相互作用が生じ,動機づけに影響を与えていると考えられる。そこで,本研究では,子どもが複数の要因によって構成されるほめられる以前の状況のとらえ方を明らかにし,要因の組み合わせにより生じる相互作用を検討する。
方法
小学校1~3年生29名を対象とし,一対一のインタビュー調査を行った。青木(2014)で使用したストーリーに,青木(2014)の結果をもとにAには「少しがんばる」,Bは「とてもがんばる」,Cは「ちょっとだけがんばる」,Dは「まあまあがんばる」と主人公が算数に対する動機づけの高さを述べる部分を追加し,ストーリーをスライドで提示した。その後,普段の状況での主人公の感情と最終的に教師にほめられた後の感情をたずねた。
結果と考察
子どもの報告内容は,普段の状況における感情報告と最終的に教師からほめられた後の感情報告に分け,以下の分析を行った。なお,本発表では,普段の状況における感情報告について報告する。
普段の状況における感情報告は,以下の10カテゴリーに分類した(Table1)。カテゴリー名と具体例は,a肯定的な感情:「うれしい」など,b否定的な感情:「がっかり」など,cアンビバレントな感情:「うれしいけれど悲しい」など,d動機づけの向上:「算数をがんばりたい」など,e動機づけの低下:「算数をがんばりたくない」など,f疑問:「どうしてほめられないのかな」など,g承認欲求:「もっとほめられたい」など,h課題への肯定的な態度:「算数が好きになる」など,i課題への否定的な態度:「算数が嫌いになる」など,jその他である。独立した2者による評定の一致率は84.58%で,評定の一致しない部分は,協議の上,決定した。なお,すべての報告内容を分析対象としたため,報告数は対象者数よりも多い。
4(ストーリー)×10(カテゴリー)のカイ二乗検定を行ったところ,有意差がみられた(χ2 = 143.20, p < .01)。青木(2014)においてもっとも動機づけが高く評定されたBでは肯定的感情,もっとも動機づけが低く評定されたCでは否定的感情が半数以上を占めていた。これらのことから,課題に対する態度と周囲からの反応の感情価が一致すると肯定的(否定的)な感情が生じやすいといえる。動機づけが2番目に高いDは,課題に対する態度と周囲の反応の感情価が一致していないが,報告内容の半数以上が否定的感情であった。しかし,Dでは疑問の報告も多かった。このことから,ほめられないこと自体は悲しいが,ほめられないことに疑問を持つことで「もっとがんばればいいのかな?」というように動機づけが高まったり,最終的にほめられることで疑問が解消し,自己評価の高まりや努力することの価値の理解が促され,動機づけが向上するといった現象が生じていると推測される。
*本研究はJPSP科研費24730542の助成を受けたものです
青木(2014)では,ほめられる以前の状況が異なる主人公がテストで100点を取り,教師にほめられるというストーリーを提示し,主人公の動機づけを問う質問紙調査を行った。その結果,B算数が好きで算数でよい点をとるといつもほめられている主人公,D算数は好きだがよい点をとってもいつもはほめられない主人公,A算数は嫌いだがよい点をとるといつもほめられている主人公,C算数は嫌いでよい点をとってもいつもはほめられない主人公の順で動機づけが高いと評定された。
しかし,これらのストーリーを構成する課題の好み(好き・嫌い)とほめられる頻度(ほめられる・ほめられない)を個別に検討した研究(青木,2013)では,嫌いな課題よりも好きな課題,いつもほめられている課題よりもいつもはほめられていない課題をほめられると動機づけが高まると評定される。つまり,複数の要因が存在する場合,要因間でなんらかの相互作用が生じ,動機づけに影響を与えていると考えられる。そこで,本研究では,子どもが複数の要因によって構成されるほめられる以前の状況のとらえ方を明らかにし,要因の組み合わせにより生じる相互作用を検討する。
方法
小学校1~3年生29名を対象とし,一対一のインタビュー調査を行った。青木(2014)で使用したストーリーに,青木(2014)の結果をもとにAには「少しがんばる」,Bは「とてもがんばる」,Cは「ちょっとだけがんばる」,Dは「まあまあがんばる」と主人公が算数に対する動機づけの高さを述べる部分を追加し,ストーリーをスライドで提示した。その後,普段の状況での主人公の感情と最終的に教師にほめられた後の感情をたずねた。
結果と考察
子どもの報告内容は,普段の状況における感情報告と最終的に教師からほめられた後の感情報告に分け,以下の分析を行った。なお,本発表では,普段の状況における感情報告について報告する。
普段の状況における感情報告は,以下の10カテゴリーに分類した(Table1)。カテゴリー名と具体例は,a肯定的な感情:「うれしい」など,b否定的な感情:「がっかり」など,cアンビバレントな感情:「うれしいけれど悲しい」など,d動機づけの向上:「算数をがんばりたい」など,e動機づけの低下:「算数をがんばりたくない」など,f疑問:「どうしてほめられないのかな」など,g承認欲求:「もっとほめられたい」など,h課題への肯定的な態度:「算数が好きになる」など,i課題への否定的な態度:「算数が嫌いになる」など,jその他である。独立した2者による評定の一致率は84.58%で,評定の一致しない部分は,協議の上,決定した。なお,すべての報告内容を分析対象としたため,報告数は対象者数よりも多い。
4(ストーリー)×10(カテゴリー)のカイ二乗検定を行ったところ,有意差がみられた(χ2 = 143.20, p < .01)。青木(2014)においてもっとも動機づけが高く評定されたBでは肯定的感情,もっとも動機づけが低く評定されたCでは否定的感情が半数以上を占めていた。これらのことから,課題に対する態度と周囲からの反応の感情価が一致すると肯定的(否定的)な感情が生じやすいといえる。動機づけが2番目に高いDは,課題に対する態度と周囲の反応の感情価が一致していないが,報告内容の半数以上が否定的感情であった。しかし,Dでは疑問の報告も多かった。このことから,ほめられないこと自体は悲しいが,ほめられないことに疑問を持つことで「もっとがんばればいいのかな?」というように動機づけが高まったり,最終的にほめられることで疑問が解消し,自己評価の高まりや努力することの価値の理解が促され,動機づけが向上するといった現象が生じていると推測される。
*本研究はJPSP科研費24730542の助成を受けたものです