[PF018] 児童の絵に対する言葉掛けの研究I
教員養成系大学の学生に対する質問紙調査の分析を基にして
キーワード:教員養成, 児童絵画, 言葉掛け
問 題
本研究は,次代の教員となりうる教員養成系大学の学生が,小学生児童の描いた絵についてどのような感想を持ち,また教員となった立場を仮定した場合どのような言葉を児童に掛けるのかについて調査したものである。
将来小学校教員として勤務する可能性のある上記学生であるが,美術を専攻した学生と他専攻(本研究では教育心理カウンセリング専修を取り上げる)の学生とでは,児童への言葉掛けに違いがあるのか。また,評価者(学生)自身が受けた感想と児童への言葉掛けとの間には違いがあるのか。これらの観点について,大学生への質問紙調査(「子どもの描画を評価する観点に関する予備的研究」)を統計的に分析し,得られた結果から児童の絵に対する言葉掛けのあり方をどのように考えてゆくかの考察に繋げることが本研究の目的である。
方 法
対象:埼玉大学教育学部(学校教育教員養成課程)学生90名
対象者内訳:教科教育コース 美術専修35名(学部2年;15名,学部3年;16名,学部4年;4名), 教科総合コース 教育心理カウンセリング専修55名(学部2年;27名,学部4年;26名,修士1年;2名)
実施日:2013年11月21日~12月12日
手続き:評価者1名につき4枚の児童の絵を提示し,4枚それぞれの絵について3つの質問項目(Table 1)と回答欄を設定した。回答方法は全て自由記述とした。
使用した絵の構成:2012年度,さいたま市立大久保小学校と川口市立在家小学校,両校朝の15分間の描画活動の時間に描かれた全校児童の絵の中から,「運動会の思い出」「友だちの顔」「大きな木」の3テーマの絵について取り上げ,各テーマ毎に5名(枚)の絵を選定した。
選定にあたっては絵画を専門とする大学教授監修の下,構図・色・描画方法等の発想が特徴的と思われる絵を選定した。評価者に提示した4枚の絵は上記3テーマの絵から最低各1枚が入るよう考慮した。
分析方法:自由記述内容を電子テキスト化し,「誤字・脱字・誤記の修正」,「表記の揺れの統一」,「内容上一単語として扱うことが適切と判断される語の辞書登録」等の処理を行ったのち,テキストマイニングを行った。
結 果
まず,事物(本調査では児童の絵)の性質や状態を表す品詞である形容詞・形容動詞に着目して使用頻度を調べたところ,「(評価者)個人としての絵の感想」では全体で143種類もの形容詞・形容動詞が使用されていた。それに対し,「児童への言葉掛け」ではその種類が約半分の82種類まで減少し,且つ,限られた僅かな形容詞・形容動詞のみを複数回使用する傾向が認められた(Figure 2)。この複数回使用される語句を調べたところ,「丁寧」「元気」「大きい」「よい」等のごく当たり障りのない語句に集約されていることが明らかになった(Figure 3)。なお,美術専修の学生と心理専修の学生とでは,心理専修の学生にその傾向がより強く見られた。
考 察
評価者自身が児童の絵から受けた感想は,どんな受け止め方であれ感想としては事実である。仮にネガティブに感じるものや,児童に言いにくいと感じる感想であった場合に,教師自身が感じたことを完全に隠し,当たり障りのない言葉のみで語っていては終始ステレオタイプ的な言葉掛けに終わってしまうのではないだろうか。今回の結果を基に,今後児童の心により深く届けられる言葉掛けのあり方を考え直す必要性がある。実際の学校現場では,本調査のように絵(作品)のみを見ての言葉掛けだけではなく,児童一人ひとりの成長と向き合いながらその児童により合致した言葉掛けが求められるだろう。
本研究は,次代の教員となりうる教員養成系大学の学生が,小学生児童の描いた絵についてどのような感想を持ち,また教員となった立場を仮定した場合どのような言葉を児童に掛けるのかについて調査したものである。
将来小学校教員として勤務する可能性のある上記学生であるが,美術を専攻した学生と他専攻(本研究では教育心理カウンセリング専修を取り上げる)の学生とでは,児童への言葉掛けに違いがあるのか。また,評価者(学生)自身が受けた感想と児童への言葉掛けとの間には違いがあるのか。これらの観点について,大学生への質問紙調査(「子どもの描画を評価する観点に関する予備的研究」)を統計的に分析し,得られた結果から児童の絵に対する言葉掛けのあり方をどのように考えてゆくかの考察に繋げることが本研究の目的である。
方 法
対象:埼玉大学教育学部(学校教育教員養成課程)学生90名
対象者内訳:教科教育コース 美術専修35名(学部2年;15名,学部3年;16名,学部4年;4名), 教科総合コース 教育心理カウンセリング専修55名(学部2年;27名,学部4年;26名,修士1年;2名)
実施日:2013年11月21日~12月12日
手続き:評価者1名につき4枚の児童の絵を提示し,4枚それぞれの絵について3つの質問項目(Table 1)と回答欄を設定した。回答方法は全て自由記述とした。
使用した絵の構成:2012年度,さいたま市立大久保小学校と川口市立在家小学校,両校朝の15分間の描画活動の時間に描かれた全校児童の絵の中から,「運動会の思い出」「友だちの顔」「大きな木」の3テーマの絵について取り上げ,各テーマ毎に5名(枚)の絵を選定した。
選定にあたっては絵画を専門とする大学教授監修の下,構図・色・描画方法等の発想が特徴的と思われる絵を選定した。評価者に提示した4枚の絵は上記3テーマの絵から最低各1枚が入るよう考慮した。
分析方法:自由記述内容を電子テキスト化し,「誤字・脱字・誤記の修正」,「表記の揺れの統一」,「内容上一単語として扱うことが適切と判断される語の辞書登録」等の処理を行ったのち,テキストマイニングを行った。
結 果
まず,事物(本調査では児童の絵)の性質や状態を表す品詞である形容詞・形容動詞に着目して使用頻度を調べたところ,「(評価者)個人としての絵の感想」では全体で143種類もの形容詞・形容動詞が使用されていた。それに対し,「児童への言葉掛け」ではその種類が約半分の82種類まで減少し,且つ,限られた僅かな形容詞・形容動詞のみを複数回使用する傾向が認められた(Figure 2)。この複数回使用される語句を調べたところ,「丁寧」「元気」「大きい」「よい」等のごく当たり障りのない語句に集約されていることが明らかになった(Figure 3)。なお,美術専修の学生と心理専修の学生とでは,心理専修の学生にその傾向がより強く見られた。
考 察
評価者自身が児童の絵から受けた感想は,どんな受け止め方であれ感想としては事実である。仮にネガティブに感じるものや,児童に言いにくいと感じる感想であった場合に,教師自身が感じたことを完全に隠し,当たり障りのない言葉のみで語っていては終始ステレオタイプ的な言葉掛けに終わってしまうのではないだろうか。今回の結果を基に,今後児童の心により深く届けられる言葉掛けのあり方を考え直す必要性がある。実際の学校現場では,本調査のように絵(作品)のみを見ての言葉掛けだけではなく,児童一人ひとりの成長と向き合いながらその児童により合致した言葉掛けが求められるだろう。