[PF020] 自閉症スペクトラム傾向と傷つきやすさ及びレジリエンスの関係
キーワード:自閉症スペクトラム, 傷つきやすさ, レジリエンス
【問題と目的】
近年高機能広汎性発達障害(以下HFPDD)に起因すると考えられている不登校や重大事件が取り上げられている(青木,飯野,上馬場他,2009)。HFPDDの特徴の一つとして,認知の偏りが挙げられる(山崎,1999)。認知の偏りのある人は,傷つきやすいといわれており(平野,2011),その傷つきやすさが学校不適応や重大事件を引き起こしている可能性があるのではないだろうか。しかし,HFPDDを含む発達障害を抱えた人が全員社会的不適応に陥ったり,重大事件を起こしている訳ではない。どこにその違いが存在するのかを,精神的回復力であるレジリエンスとの関係から明らかにしていくことを目的とする。
研究Ⅰ
【方法】 研究協力者:首都圏大学生103名(男性50名,女性53名),平均年齢は男性20.13歳,女性20.17歳,年齢範囲は18歳~23歳であった。
調査時期:平成24年10月初旬
調査材料:①自閉症スペクトラム指数日本版短縮版AQ-J-16(栗田・長田・小山・金井・宮本・志水,2004)(以下AQ)②Highly Sensitive Person Scale(Aron&Aron,1997)のうち,Aron(1997 富田訳2000)日本語版23項目(平野,2013)(以下HSP)③The Resilience Quotient日本語版(長内・古川,2005)(以下RQ)④ 本来感尺度(伊藤・小玉,2005)⑤ ソーシャルサポート尺度(菊島,1999)⑥Acceptance and Action Questionnaire-Ⅱ(Bond et al.2009)日本語版(木下・山本・嶋田,2008)(以下心理的柔軟性)
手続き:調査協力者の授業終了後質問紙を配布した。フェースシートへ倫理的配慮項目の明記の上,口頭で伝えた。15分程度で無記名,自記式にて実施,その場で回収した。)
【結果】 AQ,HSP(ネガティブな心理的敏感さ), ソーシャルサポート,心理的柔軟性,本来感がRQ(レジリエンス)へ及ぼす影響:AQ(高群:低群)×ネガティブな心理的敏感さ(低群:高群)分散分析における交互作用が見られた(p<.05)。
ネガティブな心理的敏感さ高群における単純主効果(F(1,65)=16.10,p<.001)AQ低群>AQ高群
AQ,HSP(ネガティブな心理的敏感さ), ソーシャルサポート,心理的柔軟性,RQ(レジリエンス)が本来感へ及ぼす影響:AQ(低群・高群)×ソーシャルサポート(低群・高群)分散分析における交互作用がみられた(p<.05)。ソーシャルサポート低群の単純主効果(F(1,65)=12.03,p<.01)AQ低群<AQ高群, AQ高群単純主効果(F(1,65)=16.39,p<.001)ソーシャルサポート低群<ソーシャルサポート高群
研究Ⅱ
【方法】第Ⅰ研究で使用したデータを基に強制投入による階層的重回帰分析を行う。
【結果】 階層的重回帰分析による全概念の因果関係の検討
① AQとHSP, 本来感, 心理的柔軟性, ソーシャルサポート, RQ尺度下位尺度「状況分析力」,「くじけない心」,「問題解決力」との因果関係(Figure 参照)
【総合考察】
レジリエンスそのものに傷つきを予防する効果や緩衝する働きを見出すことは出来なかったが,ソーシャルサポートが,本来感と心理的柔軟性を高め,レジリエンスを高めることがわかった。したがってレジリエンスは,個人的要因と環境要因の相互作用によって個人の成長とともに高められる総合的な力であるといえる(小田,2006)。ゆえに個人要因と環境要因の相互作用によりレジリエンス力が高まり,その結果として精神的な回復をはかることが出来ると考えられる。
近年高機能広汎性発達障害(以下HFPDD)に起因すると考えられている不登校や重大事件が取り上げられている(青木,飯野,上馬場他,2009)。HFPDDの特徴の一つとして,認知の偏りが挙げられる(山崎,1999)。認知の偏りのある人は,傷つきやすいといわれており(平野,2011),その傷つきやすさが学校不適応や重大事件を引き起こしている可能性があるのではないだろうか。しかし,HFPDDを含む発達障害を抱えた人が全員社会的不適応に陥ったり,重大事件を起こしている訳ではない。どこにその違いが存在するのかを,精神的回復力であるレジリエンスとの関係から明らかにしていくことを目的とする。
研究Ⅰ
【方法】 研究協力者:首都圏大学生103名(男性50名,女性53名),平均年齢は男性20.13歳,女性20.17歳,年齢範囲は18歳~23歳であった。
調査時期:平成24年10月初旬
調査材料:①自閉症スペクトラム指数日本版短縮版AQ-J-16(栗田・長田・小山・金井・宮本・志水,2004)(以下AQ)②Highly Sensitive Person Scale(Aron&Aron,1997)のうち,Aron(1997 富田訳2000)日本語版23項目(平野,2013)(以下HSP)③The Resilience Quotient日本語版(長内・古川,2005)(以下RQ)④ 本来感尺度(伊藤・小玉,2005)⑤ ソーシャルサポート尺度(菊島,1999)⑥Acceptance and Action Questionnaire-Ⅱ(Bond et al.2009)日本語版(木下・山本・嶋田,2008)(以下心理的柔軟性)
手続き:調査協力者の授業終了後質問紙を配布した。フェースシートへ倫理的配慮項目の明記の上,口頭で伝えた。15分程度で無記名,自記式にて実施,その場で回収した。)
【結果】 AQ,HSP(ネガティブな心理的敏感さ), ソーシャルサポート,心理的柔軟性,本来感がRQ(レジリエンス)へ及ぼす影響:AQ(高群:低群)×ネガティブな心理的敏感さ(低群:高群)分散分析における交互作用が見られた(p<.05)。
ネガティブな心理的敏感さ高群における単純主効果(F(1,65)=16.10,p<.001)AQ低群>AQ高群
AQ,HSP(ネガティブな心理的敏感さ), ソーシャルサポート,心理的柔軟性,RQ(レジリエンス)が本来感へ及ぼす影響:AQ(低群・高群)×ソーシャルサポート(低群・高群)分散分析における交互作用がみられた(p<.05)。ソーシャルサポート低群の単純主効果(F(1,65)=12.03,p<.01)AQ低群<AQ高群, AQ高群単純主効果(F(1,65)=16.39,p<.001)ソーシャルサポート低群<ソーシャルサポート高群
研究Ⅱ
【方法】第Ⅰ研究で使用したデータを基に強制投入による階層的重回帰分析を行う。
【結果】 階層的重回帰分析による全概念の因果関係の検討
① AQとHSP, 本来感, 心理的柔軟性, ソーシャルサポート, RQ尺度下位尺度「状況分析力」,「くじけない心」,「問題解決力」との因果関係(Figure 参照)
【総合考察】
レジリエンスそのものに傷つきを予防する効果や緩衝する働きを見出すことは出来なかったが,ソーシャルサポートが,本来感と心理的柔軟性を高め,レジリエンスを高めることがわかった。したがってレジリエンスは,個人的要因と環境要因の相互作用によって個人の成長とともに高められる総合的な力であるといえる(小田,2006)。ゆえに個人要因と環境要因の相互作用によりレジリエンス力が高まり,その結果として精神的な回復をはかることが出来ると考えられる。