日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PF

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 16:00 〜 18:00 5階ラウンジ (5階)

[PF024] 自己決定理論に基づく学習動機づけと学業成績との関連(2)

潜在曲線モデルによる検討

西村多久磨1, 鈴木雅之2, 孫媛2 (1.東京大学大学院・日本学術振興会, 2.国立情報学研究所)

キーワード:学習動機づけ, 縦断調査, 潜在曲線モデル

問題と目的
子どもの自ら学ぶ意欲の低下という教育問題が指摘される中,心理学研究でも,これらの現象が実証的に検討されてきている(cf. 大家・藤江, 2007)。たとえばOtis et al. (2005) では,自己決定理論(Deci & Ryan, 2002)が提唱する4つの動機づけ(内的調整: おもしろいから勉強する,同一化的調整: 自分のためになるから勉強する,取り入れ的調整: 勉強ができないとはずかしいから勉強する,外的調整: 親に言われて勉強する)のいずれもが低下することが示されている。しかし,西村・櫻井(2013)では,我が国で低下が見られるのは,内的調整と同一化的調整などの自律的動機づけだけであることが指摘されている。
このように研究知見が一貫していないことに加えて,学習動機づけの変化が学業成績の変化と関連しているかは十分に検討されていない。そこで本研究では,学習動機づけの変化のパターンと,学習動機づけの変化と学業成績の変化の関係について検討することを目的とする。

方 法
本研究は,鈴木・西村・孫(2014)と同じデータを用いたものである。
調査協力者・手続き 首都圏にある公立中学校5校に所属する中学1―3年生2734名(男性1353名,女性1380名,不明1名)を対象に,2013年6月,9月,11月,2014年2月に実施された定期テストの1週間後に調査を行った。なお,教科として数学を想定させて質問項目への回答を求めた。
調査内容
1. 学習動機づけ 西村他(2011)が作成した自律的学習動機尺度から,4つの学習動機づけを測定する項目をそれぞれ3項目用いた(4件法)。
2. 数学成績 「あなたの学校の中で,あなたはどのくらいの成績をとっていますか」という項目に対して,5件法で回答を求めた。

結果と考察
欠測値の処理 多重代入法(Enders, 2010)によって,欠測値の処理を行った。
潜在曲線モデルによる分析 多変量潜在曲線モデルにより推定された最初の時点の測定値の真値(切片因子得点)と,時点間の変化量の真値(傾き因子得点)を表1に示す。結果から,中学1年生は1年間で内的調整が平均0.08点低下することが示された。また,1年生の同一化的調整の変化が有意でなかったことを除いて,いずれの学年でも,手段的な学習動機づけが向上する傾向にあることが示された。次に,学習動機づけと成績の関連について,切片因子と傾き因子の相関係数を表2に示す。切片因子間の相関から,最初の測定時点で成績が高い生徒ほど,その時点での内的調整,同一化的調整,取り入れ的調整が高く,外的調整は低いことが示された。一方で傾き因子間の相関について,学業成績の変化と有意な関連を示したのは,内的調整と外的調整の変化のみであった。つまり,1年を通して学校内での相対的な成績が向上していく生徒ほど,内的調整が向上し,外的調整が低下する傾向にあることが示された。