[PF025] 実践的批判的思考態度尺度作成の試み
キーワード:実践的教育, 高等教育, 批判的思考態度
批判的思考(critical thinking)とは,自分の推論過程を吟味する反省的な思考であり,何を信じ,主張し,行動するのかの意思決定に焦点を当てた思考とされる(Ennis, 1987)。批判的思考はよりよく生きるための思考,よりよく考えるための思考として育成することの重要性が注目されている。さらに,高等教育という観点から捉えるときに重要なのは,批判的思考や批判的思考態度は,高等教育を終えた学生が実践や実践現場で学ぶのに必要となると考えられる点である。実践から学ぶために必要となる批判的思考あるいは批判的思考態度は,必ずしも実践現場のみで身につけられるのではなく,教育機関での訓練によって獲得することが可能であるとされる(山内, 2010)。また,実践現場では,果たすべき実践の目的が存在するため,その目的を果たしながら,学ぶための態度を意識的に獲得することは卒業したばかりの学生にとって難しい。これらの理由から,高等教育,特に大学教育において実践で学ぶための批判的思考態度を育成し,高めることは重要であると考えられる。本研究では,実践現場での学びに役立てるための批判的思考態度を育成することを問題意識として,批判的思考態度を測定する尺度を開発することを目指した。
方法
調査対象者 関西の大学で心理学を受講する大学生,計202名を対象とし,そのうち記入の仕方や,重複回答,回答漏れなどの欠損値に該当と判断した45名を除いた157名 (男性57名,女性100名)を分析対象とした。
刺激材料 本研究では,実践において学ぶための批判的思考態度の構造を明らかにするため,経験を分析的に振り返るための態度を反映した尺度項目と,他者との関係性から学ぶための相互作用場面における態度を反映したと考えられる尺度を収集した。批判的思考態度尺度(平山・楠見,2004)の「論理性」に関する尺度13項目(A1),「探求心」に関する項10項目(A2),「客観性」に関する尺度7項目(A3),「証拠の重視」に関する尺度3項目(A4),計33項目を採用した。ソーシャルスキル自己評定尺度(相川・藤田,2004)の「解読スキル」(B1),「関係維持側面」(B2)の各項目の因子負荷量の0.5以上のもの計7項目を用いた。メタ認知尺度(石井,2007)の批判的思考態度との関連性があると考えられる4項目を用いた。(C) アサーション行動尺度(金子ら,2010)の「自己主張」(D1)及び「他者尊重」(D2)との関連性が高いと見て,この2因子の質問項目の計6項目を用いた。
手続き 本研究では上記の批判的思考態度尺度50項目,及び外的基準尺度(認知欲求尺度)の15目の全65項目からなる尺度を作成し講義の最後の20分間に質問紙を配布し,集団で実施した。学生は各項目について「1. あてはまる」から「5. あてはまらない」までの5段階で評定した。
結果と考察
すべての項目50項目について,主因子法プロマックス回転を行い因子分析を行った。因子数は,スクリープロットにおける固有値の減衰状態と解釈可能性から判断し6因子とした。すなわち,「学ぶ意欲」「心情の理解」「相手の尊重」「考えの整理」「証拠の吟味」「集中力・粘り強さ」であった。
これらの因子の信頼性を検討するために,因子ごとにα係数を算出した。その結果,第一因子からα = .78,.80,.78,.78, .66, .64であった。
本研究では外的基準として認知欲求尺度を使用した。本研究の6因子との相関をとった結果,「心情の理解」を除くすべての因子において有意な相関が認められた。
方法
調査対象者 関西の大学で心理学を受講する大学生,計202名を対象とし,そのうち記入の仕方や,重複回答,回答漏れなどの欠損値に該当と判断した45名を除いた157名 (男性57名,女性100名)を分析対象とした。
刺激材料 本研究では,実践において学ぶための批判的思考態度の構造を明らかにするため,経験を分析的に振り返るための態度を反映した尺度項目と,他者との関係性から学ぶための相互作用場面における態度を反映したと考えられる尺度を収集した。批判的思考態度尺度(平山・楠見,2004)の「論理性」に関する尺度13項目(A1),「探求心」に関する項10項目(A2),「客観性」に関する尺度7項目(A3),「証拠の重視」に関する尺度3項目(A4),計33項目を採用した。ソーシャルスキル自己評定尺度(相川・藤田,2004)の「解読スキル」(B1),「関係維持側面」(B2)の各項目の因子負荷量の0.5以上のもの計7項目を用いた。メタ認知尺度(石井,2007)の批判的思考態度との関連性があると考えられる4項目を用いた。(C) アサーション行動尺度(金子ら,2010)の「自己主張」(D1)及び「他者尊重」(D2)との関連性が高いと見て,この2因子の質問項目の計6項目を用いた。
手続き 本研究では上記の批判的思考態度尺度50項目,及び外的基準尺度(認知欲求尺度)の15目の全65項目からなる尺度を作成し講義の最後の20分間に質問紙を配布し,集団で実施した。学生は各項目について「1. あてはまる」から「5. あてはまらない」までの5段階で評定した。
結果と考察
すべての項目50項目について,主因子法プロマックス回転を行い因子分析を行った。因子数は,スクリープロットにおける固有値の減衰状態と解釈可能性から判断し6因子とした。すなわち,「学ぶ意欲」「心情の理解」「相手の尊重」「考えの整理」「証拠の吟味」「集中力・粘り強さ」であった。
これらの因子の信頼性を検討するために,因子ごとにα係数を算出した。その結果,第一因子からα = .78,.80,.78,.78, .66, .64であった。
本研究では外的基準として認知欲求尺度を使用した。本研究の6因子との相関をとった結果,「心情の理解」を除くすべての因子において有意な相関が認められた。